第88話
今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。
「はぁ〜、憂鬱だわ〜」
「最近、天気悪いですからね」
「空も暗い、ニュースも暗い、きっとお先だって真っ暗よ〜」
「どうしたって分かりませんよ。先のことなんて」
「どうしたって分かり合えないわよ。他人のことなんて」
「たまに自分のホントの気持ちだって分からなくなりますものね」
「はぁ〜、とにかく悩んでいるのよ〜。マスター」
「何か1年前も、そのまた1年前も、同じようなこと言ってませんでした?」
「……そうね。いつも同じようなこと言ってるような気がするわ」
――― カランコロン ―――
「どうせなら笑い話にしちゃいましょうよ。せっかく悩んでたんですから」
「う〜ん、でも今思えば1年前はどんなことで悩んでたかしら?」
「でも解決したのはご自分なんでしょ?」
「そうね〜。他の誰かってわけでなし、たぶんそうよね」
「どうせ365日前の悩みは364日前の自分が解決しているんです。だから今日が辛くても、今は悲しくても、きっと明日の自分が何とかしてくれますよ」
「そうね。暗い気持ちは明るい心で照らすことにするわ」
「ちゃんと覚えてて、いつか笑い話にしましょう」




