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第70話(第7章-最終話)
今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。
今日もあの老紳士が来店していた。
「マスター、少しはマシになったようじゃな」
「はい、豆を挽くときゆっくり、最後まで挽き切らないようにしました」
「そうじゃな。えぐみが減って深みが増したわい」
老紳士は鷹揚に首肯いた。
「あと自分はコーヒーを愛しているのかと問いかけながら淹れるようになりました」
「それでその答えは出たのかな?」
「どうすれば愛したことになるのか解らなかったです」
「それでいいんじゃ。ところでこれはなんのブレンドだい?」
「矛盾と葛藤です」
――― カランコロン ―――
「フッ、また飲みにくるわい」
そう言って老紳士は店を後にした。
少し飲み残したコーヒーカップを残して。
だからたまには金払ってけって、親父。
ストックがなくなったのでしばらく休店します。
お読みくださり有難うございました。
またお逢いしましょう。




