第67話
今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。
「わぁ! アスカさん今日は御粧しされてて凄く綺麗ですね!」
「友達とバッハのコンサートに行ってきたの。ありがとね」
「ヘぇ〜、友達って誰ですか? 男の方だったり?」
「きゃっ! ヨーコちゃん、それ聞いちゃう? 聞いちゃう系?」
「おしゃべりはやめて、お静かに」
「あら、失礼ね。いいじゃない? 少しくらい」
「そうですよマスター。あっ! さては気になったんですね〜?」
「失礼しました。バッハといえばコーヒー・カンタータ。その曲のタイトルが『おしゃべりはやめて、お静かに』だったんですよ」
「そんな曲も作ってたの?」
――― カランコロン ―――
「バッハは無類のコーヒー好きで当時はコーヒーを嗜むのが良しとされなかった女性たちのために捧げた曲のようです。歌詞は親娘の口喧嘩風のコミカルなものですけどね」
「へ〜! どんな曲なのか聴いてみたいですね!」
「じゃあBGMでかけようか? コーヒーは『千のキスよりも甘く、マスカットのワインより柔らかい』って歌詞がいいんだ。それと、アスカさんは『今日も綺麗』の間違いだよ?」
「マスターのコーヒーを飲みながらだとそんな味してくるわね〜♪」




