第46話
今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。
「マスター、コーヒーの起源って、どこなんですか?」
「うーん、エチオピアとかイエメンって言われているね」
「えっ!? ブラジルじゃないんですか!?」
「ブラジルのコーヒーの起源はもともと禁じられた恋だって話だよ」
ガタッ!
「そそそ、その話、もう少しくわしく!」
「ん? ……あぁ、昔パルヘッタという容姿端麗な男がギアナに紛争解決の名目で派遣されたんだけどね。彼には当時、貴重品で持ち出しが禁じられていたコーヒーをブラジルに持って帰る裏の使命があったんだよ」
「ふむふむ、それで……?」
「パルヘッタはそこでトルヴィエという総督夫人と激しい恋に落ちてね、総督夫人にそのことを正直に話したら、別れの晩餐会で夫人から渡された花束の中に5本のコーヒーの苗が入っていたという話さ」
「え~~っ! その花束から今のコーヒー大国ブラジルになったんですか!?」
「当時コーヒーを持ち出すのは死刑になるくらいの重罪だったからね。まさに命がけだったと思うんだけど、愛の力は偉大だよね」
カランコロン(誰かが入ってきた音)
「ちなみにそのブラジルのコーヒーで一番美味しいのは何ていう銘柄ですか?」
「うーん、やっぱりサントスNo.2じゃないかな?」
「えっ! No.2なのにナンバーワンなんですか!?」
「あら~、2号のほうが一番愛されることだってよくあるわよ~?」
「ぴゃっ! アスカさん⁉ いいい、いつのまに⁉ い、いらしゃいませ~!」
「ヨーコちゃん、なに赤くなっているの? 2人で何の話していたのかしら?」
「いらっしゃいませ。いや、ブラジルコーヒーの話ですよ?」




