第45話
今日もとある喫茶店の日常が過ぎていく。
「ねぇ、マスター。ひとつだけ願いを叶えてくれるとしたら何をお願いする? あぁ、何度でもお願いを叶えてとかいうのはナシでね」
「相手は神さまですか? 悪魔ですか? それとも高名な魔法使いとかですか?」
「相手によって答えが違うの?」
「もし神さまなら、もっと困ってる人を助けてくださいと言いますし、もし悪魔なら魂を取られるのはご勘弁、って言いますかね」
「もし相手が魔法使いだったら?」
「やっぱりお幾らですか? って聞きますね。タダより高いものはないですから」
「ん〜! もう! マスターは願い事とか何にもないわけ⁉︎」
「いえ、そんなことはないですよ」
「あら? じゃあ言ってみなさいよ。どーせアタシじゃ叶えられっこないけど」
カランコロン
「自分の淹れたコーヒーをお客さまに『美味しい』と飲んでもらうことですよ」
「……まっ! ずいぶん お高くついたお願いだこと!」
「え? 高いですか?」
「高いわよ! だってそれ、願いを叶えるほうが報酬を支払わなくちゃいけないじゃない」
「ウチは良心価格で提供してますよ?」
「そういうこと言ってんじゃないわよ! って上手いこと言うのね!」
「ただカードでのお支払いは扱っておりませんけど」
「現金ね〜」
お店は実際はカードも電子マネーも対応しています。
この時点ではもう女性客も会話がユーモアだと理解しています。




