scene 13
サクラを看取ってから、しばらくして。
ケイ宅に、マウロから決意表明みたいな手紙が送られてきた。
ケイ へ
しんぱい かけたな!!
まだせんせーのとこにいるが、ボクは元気だ。
サクラのこときいたり、せんせーのてつだいも まあまあたのしい。
いじわるだけどな。
すどーも、たじたじだ。そこは ちょっとおもしろい。
まあ、根はやさしいから、せんせーのジョシュになってやってもいいなって。
けど、こっちから言っても、おーけーしてくれなくてな。あいつがもとめるような、えーあーるになるために、毎日しょーじんしてるぞ!
たまには、ふぉーかすにも行くからな!
マウロの様子は診療所に通いだした卯月からちょくちょく聞いていたのだが、助手を目指していたことは初耳だった。
ぴーえす
ケイに言わないといけないことがある。
なにやら改まった追伸は、2枚目に続いた。
ホーズキはもういない。
はくさびょうになった。
えーあーるになるまえから、しってた。
ボクはサクラをさがしてたんだ。
ホーズキのおかーさんが、いっしょのびょーいんだったら、あの子もまだ生きてたのにって。
一時的なものだと思っていたマウロは、脱走を繰り返しては禁止区域に足を運んでいた。
穂瑞の母から、サクラの居場所を聞くために。
しかし、いつ来ても封鎖されたまま。
どこも厳重で中には入れてもらえず。なのに、中からヒトのにおいがする。
そのにおいに心当たりがあった。
管理局にたびたび現れる、篠岡義行。
どうにか近づけないかと声をかけたのが、押しに弱そうな慧だったのだ。
ケイはつよく言わないからな。
コイってやつだ。
りよー、させてもらったぞ。
だから、えんりょはいらないからな。
なにに対してなのかは、3枚目を見ればすぐ分かった。
証人は先生と義行が。
卯月のサインも記入済み。
あとは慧とカアナの署名と拇印だけの、彼女を正式に迎えるための書類だった。
横から見ていたカアナが、ため息まじりにボヤく。
「あの腹ぺこ具合も、故意ってやつだったのかしら」
その声色はいつになく優しくて、自分たちのことを気遣った追伸だと見抜いていた。
「これからもよろしくね、カアナ」
「こちらこそ。末永く愛して、ね」
押された拇印は灰をかぶることなく、赤々と輝いている。
「ぜ、ぜんしょ、します」
「えー。極力ってことー?」
「じょじょ! じょじょにっっ」
照れながらも慌てて弁解する慧に、以前のような無機物感はなかった。
影も憂いも、あの子だけに向けられていたものよりも、ずっと明るい顔した慧がそこにいた。




