【オン68】イベント騒ぎは大騒ぎ
《隠し称号を取得しました》
称号:【アイテムの心得】
ビックリした。
未だに慣れないんだよね、この急に来る音って。
『称号だそうですよ『村人からの好感度が上がりやすくなる』効果があるそうです』
すぐにメニューを開いて確認する。
オレと同じくシュネーとティフォも一緒にメニューを開いていた。
「取得条件は初期装備やアイテムを捨てないって所だろうな」
「でしょうね、良かったじゃない。一回でも捨てたら無理なのかしらね」
称号を貰えなかった二人は情報の整理をして、ある程度の答えを探しているようだ。
「その辺は情報屋にでも売って検証してもらうしかないんだな」
ガウがメモしながら呟き、皆もそれに納得という感じで頷く。
「オメェらなら少しは認めてやる……」
今までの態度から随分と柔らかい表情をするようになった。
「ありがとねオジサン」
「オジサンじゃねぇてんだよ。タムって名前がある。タム・アートだ」
「じゃ~タムっちね」
「妖精ってのはこんなんばっかだな」
舌打ちをしながらも、機嫌が悪くなったという訳ではなさそうだ。
ニコニコとシュネーに話しかけられて、調子を崩されたのか耳を赤くしながら悪態を付く。自身の恥ずかしさを紛らわす様にしながら。
「この初心者用装備を何で表に出さないんですか?」
「決まってんだろ、此処に置いてあんのは渡り人に売る為にゃ置いてねぇんだよ。騎士団や街の連中に売るためだからな」
オレ達の事は許してくれても、やっぱり渡り人たるプレイヤーを敵視はしているみたい。
「それでこんなに安いのね……って、あら? さっきまで値札は無かったわよね」
借りていたナックルを棚に戻すケリアさんが、さっきとの違いに気が付いたようだ。
ケリアさんに言われるまで、オレも全然気が付かなかった。
「そいつは嬢ちゃん達の仲間だからだろよ。儂が認めたヤツにしか売らねぇって決めてるからな、魔法の値札が貼ってあんだよ」
便利だな~その値札。
そう言えば、魔法もこの世界で使ったことないな。
『あの、農具の修理とかってしてもらえます?』
まだ集落には鍛冶屋は無い。
ここで受け持って貰える様になれば色々と助かる。
「勿論だ、そういうのが専門だからな」
気前よくタムさんが言ってくれる。
本当に地域密着って感じの人なんだろう。
「タムっちに聞きたいんだけどさ、街の人って主に何を買っていくの?」
「この店を見りゃあ分かんだろう、生活に使う鍋にフライパン、包丁にナイフだ。ギルドの連中からは素材解体用のナイフやナタとかだな」
「そう言われてみれば……他のお店じゃあ見かけなかったわね。そういう生活必需品って」
「主に拙者らが買うような武器や防具が主に飾ってあったんだな」
意識して見ないと気付かなかったものだ。
確かに始めに入ったお店や、プレイヤーが働いていた店には武器と防具した飾られていなかった。街の人が買うようなモノを見かけた事がない。
「渡り人を雇ってる店はそうだろうよ、そっちの方が断然に儲かるからな。国元も率先して渡り人に媚びる様に支援をしてやがるしな。けどな、街の奴らからすりゃ豊かで安全の代わりに色々と我慢してる事もあんだよ」
カウンターに肘をついてため息交じりに顔を乗せる。
「脅威のモンスターや貴重な素材の提供といった感じだよな」
「分かっちゃいる、いるけどなぁ。全員がお前らに肩入れしちまったらおしめぇよ。儂みたいな奴は全然残っちゃいねぇしな」
何ともやるせないという感じで、頭を掻いて愚痴る。
「弟子を取るなら村人第一って訳ね」
「そういうこった。今までで一人としてそんなヤツは来なかったがな」
ケリアさんの言葉に頷いて答えてくれる。
「勿体無いでござるな~、コレだけの腕が表に出ないのは」
それは確かに思う。
『村人でも使える武器を作れば?』
「はぁ? 作ってんだろうが」
「話しを聞いてたのかスノー? それに村人でも使える武器を作ってるじゃんか」
「でも売れてはないよね~」
シュネーの一言に皆が店をもう一度見回してしまう。
「それも……そうね……」
呟きながら言うケリアさんに、皆で頷いた。
タム大将が「余計なお世話だよ」って突っ込んでいたが気にしない。
『街の人ってここに置いてある武器は買わないでしょう』
買ったとしても街の人の事だから修理に持ってくるのが関の山だろう。
つまりは新しく武器を置いても売れないんだろう。
良い武器を作ろうモノなら、それなりの値段で提供しなきゃ他のお店にも迷惑だしね。
下手に敵を作ったら、この店では太刀打ちが出来ない事は見たらわかってしまう。
「……あぁ、戦う事が仕事って訳じゃねぇからな。そういうのこそ渡り人のオメェ等の性分だろうしなぁ。……あん? ちょっとまて、さっき嬢ちゃんは何て言ってたよ。矛盾してんじゃねぇか。武器を買わねぇのに武器作ってどうすんだよ」
『ん? だから罠を作れば良いじゃないの?』
「……誰か通訳してちょうだい」
「拙者には不可能なんだな」
そんなに変な事は言ってないんだけど。
なんか段々と皆の反応が酷くなってないだろうか。
『簡単な罠から作っていってね、技術をマスター出来たらスプリングとかベアリング作って貰ってさ、馬車とかの向上部品を作って売れば儲かるでしょう?』
「あぁ~、なるほどね」
「それは確かにアリね。大いにアリだと思うわ」
前に乗った荷馬車は御尻が割れそうだったからね。道だって整備された場所がある訳でもないのに、振動が直に伝わってきたらアカンと思う訳です。
オレ達だから良いけど、村人とかだったら絶対にずっと乗ってるなんてしないだろう。
「どういうことでぇ。罠って魔物を仕留める罠だろ? つうかスプリングとかベアリングってのはなんだよ。そっちのが気に何だがよ」
「いま説明しても分からないと思いますよ」
ティフォの言葉の通りなんだけど、まぁ信用出来ないよね。
「んなもん聞いてみなきゃ分かんねぇだろうが⁉」
『伸び縮みする螺旋状の鉄って言ってイメージできます?』
「鉄が伸び縮みするわけねぇだろが、何言ってんだチビッこ。儂を担ごうったって――」
やっぱり案の定な回答が返ってきた。
バネが開発されていない時代って事だよね。
「罠ってなにから作ってもらうんだ?」
『クロスボウからじゃない? 見回ってみたけど、置いてあるのは和弓だけでクロスボウは置いてなかったんだよね。ボウガさんに手伝ってもらって、部品はタムさんにって感じで』
罠にするからある程度の技術が必要になる。その過程で順々に覚えていってもらえれば、最終的には使えるバネ程度は出来るだろう。
「弓の方が使い勝手が良いから仕方ないんだな」
戦闘向きではないからね。罠みたいに嵌め殺しなら強いけど。
『復元力のあるノコギリとかも欲しいしね、きっとボウガさんは喜ぶよ。まぁ、少なくとも焼入れに焼戻しや油なんかの技法は知って貰わないと作れないでしょう』
「案外に知らないわよね~、身近で使っているモノなのに……というかよく勉強をしてるのねスノーちゃんってば。油ってなによ?」
『前にテレビで見ただけですよ』
「だぁ~、勝手に話しを進めんな!」
『知りたくありません? 渡り人の世界の鍛冶師が持つ技術。生活がもっと豊かになりますよ?』
「……んくっ! し、知りてぇ……つっても、オメェが教えられるのかよ」
『オレが出来るのは技術の基礎で知っている事を教えて上げることくらいです。そこから先はタムさんの努力しだいかと』
「言ってくれるじゃねか、良しのったぜ、テメェの話し」
《隠しメイン・クエストが発生しました。クエスト【未来への賭け】》
※このクエストはパーティー全員での受注になります。
{中央都市・城下町メインクエストが一部のプレイヤーによって解放されました}
『……なに? どういうこと⁉』




