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ズィミウルギア  作者: 風月七泉


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【オン67】イベント騒ぎは大騒ぎ



 武器屋の大将がカウンターに肘をついて、面倒そうにしながらもこっちを向いてくれた。


「でぇ、なんでぇききてぇことってぇのは?」


 話しを聞く態度では全然ないけれど。


 大将の奥さんはため息を大きく吐きながらも、頭を下げて店の奥へと消えて行った。


「あからさま不機嫌な感じなんだな」


「はは、まぁ仕方ないんじゃないか」


 あんまりオレ達に良いイメージが無い様だし、コレでも譲歩してくれているのだろう。


『ここはどうして他のお店みたいに武器が少ないんですか?』


 遠まわしに聞いたところで、きっとイラつかせるだけだと思い、聞きたい事を直に聞く。


「ぶっこむわね、スノーちゃん」


「シュネー嬢もスノー姫もどっちも怖いもの知らずなんだな」


 周りの皆がピシッと固まったけど、大将の様子は変わらなかった。


「あるだろうが、武器なら一杯よ」


『初心者用の武器しか置いてませんけど?』


 周りを見回してみても、置いてあるのは初心者用の装備ばっかり。


「たりめぇだ。ここに置いてあるのは全部中古品、つってもまぁ儂が打ち直ししたヤツばっかりだが、それの何が不思議なんだ?」


 鼻で笑ってオレを見下ろしてくる。


「打ち直した、でござるか? 大将、手に取って見ても良いでござるか?」


 ガウが何か引っかかったのか、徐に近くにあった剣に手を伸ばした。


「勝手にしろ」


 了承を得ると、すぐに剣を鞘から引き抜いた。


 いや、それよりも前から驚いた表情をしていた気がする。


「どうしたのガウっち?」


 刀身を真剣に見つめながら、全体を丁寧に見回していく。


「刃こぼれも無い、綺麗な刀身……持ち手もしっかりとしているんだな。コレが初心者専用の装備? もしかして、全部がそうでござるか⁉」


 一本、また一本と同じ動作を繰り返し、全部の剣を見ていく。


「どうしたのよ? 私はナックル系しか使わないから剣の事は分からないんだけど?」


「大将! ナックルも初心者用装備があるでござるか⁉」


「あぁ? そこの左棚を上に置いてあんだろうが」


 教えられた場所に駆け寄って、ナックルを持ち上げる。


「…………ケリア嬢、コレが初心者用のナックルなんだな」


「何を驚い……て? ちょっとオジサンっ! この装備おかしいわよ、なんでこんなに軽いのよ。ちゃんとしたモノなんでしょうね⁉」


 ケリアさんが今度はとんでも無い事を叫び始めた。


「あぁ! 儂が偽物を拵えたってか⁉ 寝てんのかてめぇは」


 それに反応してすぐに大将がカウンターを叩いて立ち上がる。


「初心者用の装備は錘が入ってて、もっと扱いにくいわよ! こんな軽くないの、殴ったら壊れるんじゃないでしょうね」


 ケリアさんが何度も自分の手に持ったナックルを指さしながら大将に詰め寄っていく。


「んな不良品を作るかってんだ! なんなら裏で試してみやがれ、感触を確かめる為の人形があっからよ」


 ドタドタとなんか騒がしくなってしまった。


『本当に軽い』


「見てみて~、僕でも持てる~」


 オレとシュネーも面白半分でナックルを持ちあげる。


 すると驚くほど軽く持ち上がった。


「お前らの筋力って確か1だっけか? つまり二人が持ててる時点で誰でも持てるって事が今この場で証明されたも同然だな」


 ケリアさん達を追って、遅れてオレ達も裏庭へと出向く。


「壊しても弁償なんてしないからね」


「はん、寝言は寝て言えってんだよ」


 お互いに見合って、練習人形の前にケリアさんが立つ。





 それから数分間は怒涛のラッシュ、ナックルを確かめるという言うよりも、藁人形を粉砕していくケリアさんの姿が未だに焼き付いている。


 普段と違い、物凄くカッコイイ男の人でした。


「遠慮なく全力で殴ってたんだな」


「拳が全然見えなかったの」


 呆気に取られながらも、全員がケリアさんの動きに感動していた。


『アレなに? ギアって技だよね?』


「多分、爆裂拳だろ? 何発殴ったかは正直分からんけど」


「最後に打ったのが正拳突きなんだな。しかも、気合溜めの型までしていたから、威力は半端ない数値が出るんだな。軽く千越えはしてると思うんだな」


 最後の最後で出したのは、溜めが長く居る分、次に繰り出す技の威力が上がると言う。


 真っすぐに放たれた拳が音を置き去りにして、後に衝撃はが襲ってきた感じだった。


「凄いね~、打ち込んだケリアんの周りだけ綺麗に砂が飛び散ってるもん。扇状に」


 ケリアさんの足元に砂は無く、綺麗な石の地面が吐出してしまっている。


『的は見るも無残な事になってるけど』


 粉砕されて原型を留めていない。


「どうでぇ、それが初心者用のナックルだよ。偽物なんて言わせねぇぞ」


 鼻高らかに腕組みした大将が見下ろしたように言う。


「壊れもしないなんて……何か特別な効果があるとか⁉」


 すっごく感動したのか、高揚した顔を気にもせずに大将に詰め寄る。


「ねぇよんなもん。そもそも、お前らが使っている武器と違って当たり前だ」


 バカにした様に笑って、横目でオレ達を見ながら言う。


「どういう事でござる?」


 ガウが一番に大将に聞く。


「どうもこうも、なんであんな武器で戦っていけるのが不思議でしょうがねぇ。売られる武器は全部が鉄くず同然の出来じゃねぇか、剣ってよりは剣の形をした鈍器だぜあんなもん。全体のバランスはズレてる、刃の研ぎも素人以下だ。

 己の能力に頼った戦い方をしてやがる証明だろうが、全体のバランスと何処に重さをのせてやるか、それだけでもしっかりしてれや、変な重さ何て感じねぇよ。あと嬢ちゃん、アンタは拳を打つタイミングで軸がブレてんぞ、変な装備をしこたま使ってきた付けだな」


 しっかりとケリアさんの動きも見えていたようだ。


「……大将は我らの事が嫌いなのでござるか?」


「あぁ、嫌いだね」


「即答だな。理由を窺っても?」


 ティフォが唾を呑み込みながら、頑張って大将に聞き返した。


「決まってらぁ、儂らには必要最低限のアイテムしか寄こさねぇくせして、技術はよこせだ、良いモノを作れだのと、随分と勝手な事をいってくれるじゃねか。そこ装備だってなお前ら渡り人が捨てた代物だ。所かまわず捨てやがてよ。武器を何だと思ってやがる」


「返す言葉も無いんだな」


「そうねぇ~」


 二人は肩を落として、大将の言われた事が身に染みて分かってしまっているようだ。


『はぁ、そういえば捨てるとどうなるんですか?』


 そう言えば、オレもシュネーもティフォだって捨てるコマンドとかしたことない。


「……あ? 何言ってんだおチビちゃん」


「そういや俺達って、アイテムを捨てた事なかったな」


 今後の為にちゃんと聞いておかないと、ゴミ捨て場も作らなきゃいけないって事だ。


 この世界でまだゴミを捨てたことがないんだよな。


「基本的にホームで使う物ばっかりしか持ってないしね~、倉庫にあった古い農具だってウサギさん達に持ってかれて今も使われてるしね~」


 いつの間にか倉庫の中身が空っぽになっていたのは驚いたな。


 アレってきっと余分に農具とか入っていたはずなのに。その全てがウサギさん達によって持ち出されていた。


「ゴミ捨て場みたいな所があってね、そこに皆が古い装備とかを捨てるのよ。ヴォルマインだと門から入ってすぐの壁沿いにあるわよ」


 そうなんだ、そこまでしっかりと見ていなかったな。


「道端に捨てるマナーの悪い人も居るでござるが、基本的にこの世界ではアイテムは消えないでござる。フィールドに捨てた場合はゲーム内時間で一週間すると消失するんだな」


「街中じゃあ消えないんだ?」


 街中は結構に綺麗なイメージしかないんだけど。


「消えないでござるな~、基本誰かが落ちたモノをゴミ捨て場へと持っていくんだな」


「ゴミ拾いってクエストもあるくらいだしね~、村人が受けてるんだと思うわよ」


「ちょ、ちょっとまてチビちゃん達。本当にアイテムを捨てた事がねぇのか?」


「無いですね~、捨てるアイテム何て無かったですし」


「出来損ないって投げ売りされてた、巨大ニンジンも結局はウサギのエサになったからな」


「うぁ、思い出したくない記憶が……」


『ニンジンブレードで何時かウサギさん達をぎゃふんと言わす』


「止めとけ、返り討ちにあうのが関の山だ」


「お、おい。この水晶に手を当ててくれよ」


「どうしたの~?」


『水晶に? 別に良いですけど』


「よ~し、じゃあもう一度聞くぞ。本当に今までアイテムを捨てた事が無いんだな?」


「ないよ~」


『原木も石材も、必要なモノだし。捨てるアイテムって今まであったかな?』


「種も雑草も、何だかんだ畑で使うからなぁ~。無いだろう」


「ま、マジで反応しやがらねぇ」




 なんか鍛冶屋の大将が震えながら水晶を見ている。






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