【オン65】イベント騒ぎは大騒ぎ
受付嬢さんが書類に何かを一生懸命に書き込んでいる。
「俺達はちょっと別の所を見回ってくるよ」
待ち時間を効率よく回す為か、ティフォがそう言って周りを指先を回している。
『うん分かった』
「スノーは僕に任しといてよ」
保護者気取りのシュネーがオレの頭の上で胸を張っている。
オレは何処まで子供だと思われているんだろう。確かに見た目はチミッちゃいけどさ。
受付嬢さんの大まかな手続きが終わったらしく、パタパタとカウンター席に戻ってきた。
「こちらが水精霊の水晶(小)となります、扱い方はスノー様の権限内であればどこの土の上に置いても、その場所が小さい泉となります。一度使うと無くなってしまうので、泉の場所をちゃんと決めてからお使いください」
青白い透明な水晶が入った小さい箱を手渡されて。
『は、はい。気を付けます』
箱を渡される際にギュッと手を握られた。
「原木と石材は明日には届きます。原木はボウガさん宅の倉庫へ、石材はスノー様のホームにある石材置き場に運ばせておきます」
『ありがとうございます』
お礼を言って手を引こうとしたが、放してはもらえなかった。
「いえ、他に何か分からない事や困っている事などはありませんか? この私が微力ながら全力でお手つだいっ――――いった~い⁉」
見かねたのか、隣に座っている受付嬢さんが頭を小突いて、彼女の暴走を止めてくれた。
「ごめんなさいね、早く彼女の手を離しなさい。それに過度な特別扱いは禁止よ」
「だって~、せんぱ~い」
小突かれた頭を抑えるために、オレの手をパッと放した。
「だってじゃないの。しっかり仕事を熟しているかと思えば、全くこの子は」
大きくため息を吐きながら、更に頭をツンツンと突いている。
『気にしてくださってありがとうございます。でも、今のところは大丈夫ですよ』
「うぅ~、本当ですか? 唯でさえ遅れての開拓スタートなんですよ。金策だって他の場所が優位に立ってるって言うのに、不利過ぎて諦めたらどうするんですか~」
この人、よく調べてるな。伊達にギルドの受付嬢さんじゃないってことだろう。
他の大地の状況も正確に把握してないと、さっきの言葉は出てこない。
「お姉さんって意外にも切れ者?」
「えっへん。な~んて威張ってもね、私じゃなくても、誰がみたって明らかですし想像に容易いかと思いますよ。あの土地で上手くいっているって事は、少なくともお金を掛けずに出来る事はやっているみたいですけど、やはり金策は必須ですからね」
鼻を鳴らして、ドヤ顔を決めて言う姿は何とも残念なお姉さんだ。
「ねぇ、普段からその頭を使ってアタシ達の仕事を手伝いなさいよ」
その姿に隣の受付嬢さんが、ため息をさっきよりも深めに吐き、更に頭を抱えながら言う。
「お姉さんって有能なの? それともポンコツちゃんなの?」
思わずと言った感じで、シュネーがツッコミを入れてします。
『こらシュネー、失礼だろ』
「あう、ごめんなさい」
オレとシュネーは二人で頭を下げて謝る。
「ふふ、良いですよ~。皆にポンコツって言われてますしね。あぁ、私の名前はカミルです。気軽にカミルちゃんって呼んでも構いませんよ。特別に」
何故か嬉しそうにしながら、自己紹介も兼ねて笑って言う。
「調子に乗らない……ったく。確かに普段はポンコツだけど優秀な子であることは間違いないわよ。じゃなかったらギルドの受付嬢なんて務まらないんだからね」
「アン先輩に褒められた~」
両手一杯に広げて喜び、抱き着いてきそうなカミルさんを隣の受付嬢さんが止める。
『それじゃあオレ達、もう行きますね』
「えぇ、頑張ってね。陰ながらだけど応援しているから」
「バイば~いスノーちゃんとシュネーちゃん」
「ばいばいカミルっち~」
手を振ってその場から離れようとした時に、カミルさんが思い出したかのように、オレ達を小声で引き留めた。
「……あぁ、最後にヒントだけあげる」
『ヒント、ですか?』
軽く片目を閉じてウィンクをしてきた。
「そうヒントだよ。街を見回る際に注意してみるなら、店じゃなく此処に住む人を見なさい」
お茶目な感じとは裏腹に、カミルさんの発する言葉のトーンは真剣な感じだった。
「ここに住まう人を見る?」
首を傾げて福証するように呟く。
「そうよ、渡り人の貴方達じゃなく、住まう人を見なさい。コレが私が出来る最大の譲歩」
スッと一瞬だけ真剣な表情で、真っすぐにオレとシュネーを見てくる。
『……ありがとうございます。頑張って考えてみます』
本当に一瞬だけで、すぐにさっきまでのふにゃふにゃ笑顔のカミルさんに戻ってしまう。
「うん、それじゃあ頑張ってね~」
寂しそうにしながらも、ヒラヒラと手を振ってオレ達をみおくってくれる。
☆★☆★
「アンタね本当に興味ある事にしか頭を使わないのね」
「何がですか?」
「惚けるんじゃないの。意味深にヒントなんて言っちゃって。アレはどういう意味よ」
「そのまんまですけど?」
「肩入れしてるのを責めてる訳じゃ無いのよ。カミルが言うようにあの子達が開拓しようとしている大地が不利な状況だって言うのは、アタシだって思わなくもないもの」
「じゃあ良いじゃないですか~」
「隣で聞いてたアタシがモヤモヤするから、その、教えなさいよ」
「ダメで~ス。いくら先輩でも教えませ~ん」
「むぅ~、なんでよ」
「あの子達が気付いたなら、きっとビックリしますよ。それまでのお楽しみですね」
「なんでアタシが驚くのよ」
「どうなるか楽しみだな~、ふふ。ちゃ~んと気付いてくれると良いな~」
「まったく、何よその妙なテンションは」
「私の想像道理なら、きっと楽しくなると思うからですよ」
「やっぱ教えなさい。いま、ここで」
「いやですよ~」
☆★☆★
「よう、随分と掛かったな。なんか楽しく喋ってたみたいだけど」
「皆の方は何やってたの?」
「城下町のクエストをやってみようって感じでござるな。街中と言えど案外クエストが多くあるんだな、だから街を見回るついでに良いお使いクエストが無いかを見ていたって感じでござるよ」
「なにかいい情報でも教えて貰ったの? 難しい顔をしちゃって」
『うん、金策になるだろうヒントを貰った』




