【オンライン】385話:魅了される者達②
★☆★☆【視点:敵国の兵士(新兵)】★☆★☆
我々の目的はグランスコートなる出来たばかりの小国。筆頭として子供がこの地を治めているという情報で、皆が半信半疑で我が国同様に傀儡王女だと思っている。
我が隊の隊長もその一人だ。
「こんな舞台に立って自ら顔を出してくれるとは、良い余興じゃないかさぁ始まるみたいだぞ。恨みは無いが最高潮に盛り上がった所で地獄の底に落としてやれ」
隊長の直属の部下達もいきり立っていたはず。
なのに、今は誰しもが舞台に立っている者達に釘付けになってしまっていた。
自分だって今見ている舞台は夢の様で、現実に見ているのかと思う程だ。
初めの空高く打ち上げられた炎の花から一気に心を持っていかれてしまった。
舞台に立つ彼女達の楽器も見たことが無い代物ばかり、唯一分かるのは太鼓の様な打楽器くらいだ。それも音が鳴る度にドラとは違う音という衝撃が体を突き抜けていく。
「綺麗だな」
近くの誰かが呟いた。
自分もそうだけど、周りに居るもん達も思わず頷いて、それ以上の言葉が浮かんでこない。かと言ってジッと黙っている事も出来ない変な気持ちだ。
舞台に立つ者達が音楽を奏でる度に、体が曲に合わせたがる様に動きたくなる。
「魔法に……あんな使い方があるのか……美しいな」
魔導士の者が目を輝かせて見逝ってしまっているようだ。
演奏を担当している子達が楽しそうに奏でながら、タイミングを合わせて氷の結晶を広範囲に散らし、空気中にキラキラとした幻想的な空間を生み出すと、妖精が空中に光る氷を集めて水の小鳥達を観客の頭上に飛ばしていく。
帯状の色とりどりの水柱を作り出して、青や緑など色々な色が鮮やかに入れ替わって曲に合わせて色が変わる。初めの勢いは何処へやら、自分も今では舞台の上に立つ彼女達の一つ一つの動きや曲によって変わる演出に目を奪われて、少しの変化が起こる度に感動している。
「こんな凄い舞台は見たことがない」
「曲が変わるな、次はどんな感じの曲がくるんだろうな」
さっきまではアップテンポの和やかな曲だったのが、今度はしっとり系の透き通る様な声と共にゆったりとした曲が流れ始めた。
周りの演奏者達も穏やかな川のせせらぎの様に、静かな演出で周りも静かに盛り上げる。
しばらく聴き入ってしまい、自分達が本来やるべき事をすっかり忘れてしまっていた。
「あ、あの隊長……このままで良いんでしょうか」
直属の部下が少しだけ戸惑いながら、無謀にも曲を聴き入っている隊長に話しかけた。
「なんだ、こんなに良い曲だぞ、静かに聞けんのか」
不満そうに睨み、これ以上の邪魔をすれば今にも叩き切られそうだ。
「す、すみませんでした」
彼は別に間違った事を言った訳ではないが、他の兵士達からも物凄く睨まれてしまう。あの話しかけた者は確か王子と仲の良い奴だった記憶がある。
将来は王子のコネでも使って側近になると、偉そうに語っていたな。
同情はするけど、騎士である自分は正直に言ってこのまま有耶無耶に終わって欲しいと思っている。任務の為とは言っても年端も行かない子供の上に女性達を手に掛けると言うのは……気分の良いモノじゃあない。
あの王子……いや、今は王に従うのは果たして正しいのだろうか。コレが騎士になって初めての任務なんて、自分が夢見ていた騎士とは何だったんだろうな。
※※※敵兵達が動かない事で、ステージ上では全員がちょっとだけ焦っていたりする。
『妨害が来ないんだけど⁉ スノー先輩どうするの⁉』
〈はぁ、準備してて良かったね。まさか何もしてこないとは思わなかった〉
『ティフォナんが敵兵達を魅了しちゃうのがいけないと思いま~す』
『俺のせいじゃねぇだろう、お前らだって似たようなもんじゃねぇかよ⁉』
『それもこれも、シャープ先輩が本格的に指導してきたせいなんだな』
『どうするんです?』
『合図は何時送れば良い? アタシとムーンちゃんが送るんだよね』
〈ん~、盛り上がったタイミングかな、そっちの方が怨みが強いでしょう〉
『平然と言うなよ。腹黒スノーになってるぞ』
『スノー先輩、悪い顔してますよ』
『そんなスノーも格好良いよ?』
『罠に嵌めた時の快感は良く解るよ、ムーンちゃんも似た感じの顔するしね』




