第89話 船
トゥーランの町に辿り着いたが、人1人いない。
老猫将軍から怪異達が現れるまでは俺達みたいな人も沢山いたみたいなんで、今はかなり少ないらしい……。
しかし、人はいなくても物はある。
船に乗って東の大陸に移動だ。
「船は何処だろう?」
海の方に船を探しに行く。
「ところでさ〜ちゃん、船を動かせるの?」
俺はもちろん無理だ。
「無理よ……」
船が見つかっても詰んでしまった。
人もいないから船乗りを探す事も出来ない。
「ふっふっふ、お困りのようね?」
海の方から声がした。
声の主はゆっくりと姿を現した。
「お前は……!!」
「そうよ、ワタクシは濡れ女よ」
「……濡れ女……だれだっけ?」
見覚えがあるような……?
「忘れたのか!! ワタクシはナイル川であなた達を滝に落とした濡れ女ですわ」
「あ〜、あの時の、あの時は大変だったから忘れてた」
真面目に忘れていた。
「覚えておきなさいよ!!」
「何してきたの……?」
確かにあの時は俺達を殺そうとしてたから、また殺しに来たのか?
「何してきたのはご挨拶ね、ワタクシは船の操縦が出来るのですよ」
船の操縦?
俺達は助けに来たのか?
でもなんで?
「なに企んでる……」
さ〜ちゃんの言う通りだ。
「いやね、この前の事を反省して助けてあげるって事よ」
怪しい。
目が笑っているように見える。
「殺しかけといて信用出来ないんだけど」
「あらそう? なら操縦はどうするのかしら?」
確かに操縦出来るのは濡れ女だけかもしれない。
「……さ〜ちゃん、頼んでみようか?」
東の大陸にはいかないといけないし、船の操縦は絶対必要だ。
「だが、監視はさせてもらうからな」
俺達が目を光らせれば大丈夫だろう。
「良いわよ、ならこの濡れ女号に乗りなさい」
「濡れ女号?」
横を見ると中型の船が停まっていた。
「これで行くのか?」
「ええ、そうよ」
俺達は乗り込んだ。
「乗ったかしら? なら行くわよ!!」
濡れ女はエンジンをかけ発信した。
無事に東の大陸に向かう事が出来て一安心だ。
船はかなりのスピードで進んでいく。
「さて、この船の目標は、船の墓場よ!!」
濡れ女が先端に立ち言った。
「船の墓場? どういう事だ!!」
やはり罠だったようだ。
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