第78話 レン人
螺旋階段を登り始めた瞬間、上の方から何かの鳴声が聞こえた。
「なにかくるのか?」
俺達は戦闘準備をした。
「キュルル〜」
上から降りてきたのは、シャンタク鳥1匹だった。
ただ、背中に誰かを乗せている。
シャンタク鳥は1番下に降り立った。
俺達も警戒しながら戻ってみた。
シャンタク鳥の上にいるのは、浅黒い肌で2角に尻尾、頭にターバンを巻いた人物だ。
「メリーさん、分かる?」
「もう調べてるわよ、こいつはレン人ね。商人みたい」
商人?
なら、いろいろ調達出来るかも知れない。
「お前達、なにかいるか?」
「何があるの?」
レン人は、小さな鞄からいろいろな物を出してきた。
あっという間に、フリーマーケットみたいになってしまった。
「……古の道具ってあります?」
前にニャルラトホテプから聞いた古の道具があれば儲けものだ。
「古の道具か? もしかして、十種神宝のかことか?」
十種神宝?
知らない名前だ。
メリーさんの方を見るが知らないみたいだ。
「十種神宝ってなんですか?」
「十種神宝は、はるか昔にあった伝説の道具の事で、今は世界のあちこちで眠りについているが、その1つがこの塔にある……」
この塔にそんな道具があるのか。
なら、探すしかない。
「何処にあるんですか?」
「これ以上は、お金払う」
情報料ってやつか。
「いくらだ?」
「100万コイン」
(コイン? って、100万!! 高すぎる!!)
「……えっと、日本円ならいくら?」
手持ちは日本円しかない。
「……100万コイン!!」
どうやら、日本円では払えないみたいだ。
「仕方ないわね、はい100万コイン」
メリーさんが出してくれた。
「良いの?」
「ええ、それに日本円にするなら10円だし……」
(10円なのか……)
「十種神宝の1つはこの塔の隠し通路を進めば手に入る」
「隠し通路なんて何処にあるんだ? 螺旋階段以下、それらしいものはないけど」
「お前、節穴!! 入口、ここ」
壁にスイッチがあった。
レン人が壁のボタンを押した瞬間に塔全体が揺れた。
「なっなんだ!!」
揺れは酷くなり立っていられない。
更に塔全体が動いている。
暫くして収まってきた。
「これで、この塔はダンジョンになりました、ダンジョンと言えばクリア特典!! 頑張ってクリアして下さい」
「ちょっ、なんでダンジョンに?」
わけがわからない。
質問しようとレン人の方を見ると、レン人の姿はなかった。
「ここの住人は、神出鬼没なのか!!」
「……どうするの?」
「どうするって、行くしかない」
戻ってもガグがいるし、先に進む以外に道はない。
「仕方ないわね」
「……行きましょ」
「行くしかねぇか」
「がぅ」
とりあえず、このダンジョンをクリアして、十種神宝を手に入れて見せる。
ダンジョンなら俺のゲーム攻略能力が役立つはずだ。
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