第65話 姥ヶ火(ウバガビ)
山に向かって歩いていると目の前がいきなり明るくなった。
(なんだ?)
前方をよく見てみると、かなり大きい火の玉があった。
「あれって、姥ヶ火じゃない?」
「だなぁ〜」
メリーさん達の知り合いか。
しかし、ここでの知り合いは敵になっているケースが多い。
「気をつけて!!」
俺が言葉を発する前に、すでに戦闘態勢に入っているメリーさんとさ〜ちゃん。
「ここであったら普通じゃないのは分かってるわ」
姥ヶ火は女性の顔の周りに火が纏わりついている感じだ。
顔だけなので、空中に浮かんでいる。
姥ヶ火は大きく息を吸い込んでいる。
ものすごい風圧が来るのだろうか?
俺は池田の前に立ち、バットを構えた。
「ぶはぁぁぁぁぁ」
姥ヶ火は火を吐いてきた。
「ヤバ!!」
メリーさんは俺達の手を掴み、回避した。
地面に焦げ跡がかなり残っている。
かなりの火力みたいだ。
でも、こっちにも火力はある。
「池田、頼む!!」
「任せて」
池田は拳銃を構え、姥ヶ火に向かって発砲した。
空気の弾は姥ヶ火の火を吹き飛ばした。
そのまま落下する姥ヶ火。
どうやら、周りの火で浮いていたみたいだ。
「勝った?」
「おい、それは……」
「きぃゃぁぁぁぁぁぁ」
地面に落下した姥ヶ火は、さっきよりも激しく燃えてきた。
そして、俺達を囲むように火を吐いた。
(逃げ場がない、これでさっきの攻撃をされたら全滅だ)
「池田、もう一度だ」
「うん」
カチャ
なんの反応もしない。
「あれ?」
エネルギー切れみたいだ。
どうやら、シャンタク鳥で1発、姥ヶ火で1発と計2発しか撃てないみたいだ。
姥ヶ火はまた大きく息を吸い込んでいる。
「さ〜ちゃん、火を切れる?」
「無理だ!!」
分かっている答えを改めて聞いた俺が馬鹿だった。
俺がフルスイングしても少しの風しか起こせないし、もう駄目なのか?
いや、やるだけやってみるしかない。
あれだけ激しく燃えているのだ、かなり無理しているはずだ。
ここをしのげば勝ち目はある。
俺は包囲網を破る為、連続フルスイングをした。
炎は一瞬揺らぐがまた元に戻ってしまう。
しかし、なんとかしないと池田まで燃やされてしまう。
俺はその想いでフルスイングしまくった。
「来るわ」
姥ヶ火の準備も出来たみたいで、陽を吐いてきた。
火がどんどん迫る。
俺は最後のあがきで、縦スイングをした。
すると、目の前の炎が割れた。
「なんだか分からないけど、ここから逃げるぞ」
俺達はそこを通り回避に成功した。
「ぐぎゃぁぁぁぁ」
姥ヶ火が燃えている。
やはり無理をしていたみたいだ。
姥ヶ火は、そのまま燃え尽きてしまった。
「今なにやったのよ?」
「いや、俺もなにがなんだか?」
俺はまた縦スイングをしてみたが、何も起きなかった。
今のはなんだったのか?
このバットになにかあるのか?
謎はあるが、俺達はまた山を目指した。
まだまだ山までの距離は長そうだが……。
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