第54話 撤退
なんとか食屍鬼は倒せたみたいだ。
「流石さ〜ちゃんよね」
「……皆の援護……なければ……無理だ……た」
武器を持っているのにさ〜ちゃんのテンションが低い。
さ〜ちゃんの手をよく見ると、ハサミはボロボロ、カッターも刃がなかった。
テケテケの時はこんな事なかったのに……、それだけ食屍鬼が強かったのか。
「でも、1匹だけで本当に良かった、これで集団だったらもうダメだったよ」
「おっおい、池田、それはフラグ……」
「ぐるぁぁぁ」
「ぐがぁぁぁ」
「ごぁぉぁぁ」
「ぐぁぁぁぁ」
食屍鬼の集団がいきなり現れた。
数は10体はいる。
「フラグ立ってしまった……」
武器もない状態で食屍鬼の集団なんて相手出来ない。
「どうしたら……」
フラグを立てたのは池田だったが仕方ない。
ゲームのお決まりなんて知らないのだから。
「メリーさん、なにか突破口はないの?」
「あるわ」
「あるのか、それを早く教えてくれ」
そんなやり取りをしてる間にも、食屍鬼はゆっくりと迫ってきている。
「……それは、窓から脱出よ」
メリーさんは近くにいた池田の手を引っ張って窓から外に出た。
俺は一瞬呆然としていた。
突破口って逃げかよ!!
ツッコミたくなってくるが、ここは我慢。
俺とさ〜ちゃんも窓から脱出した。
食屍鬼も窓から出ようとしている。
このまま走って逃げれば追いつかれないとは思うけど、まだ怪異図書館の中には重要な情報があるかも知れない……。
今、逃げ出すわけにはいかない。
「せめてあの本だけでも持ってこないと……なにか役に立ちそうなんだよね」
池田は、あのクトゥルフの本が、重要になるような気がしているみたいだ。
だが、武器も何もないのにどうやって食屍鬼を倒すんだ?
「とにかく今は逃げるの、あそこに行けばきっと……」
メリーさんには本当に突破口が見えているようだ。
「よし、メリーさんについていこう」
俺達は怪異図書館から逃げ出した。
少し走ると、古びた建物があった。
そこは、懐かしい感じがする駄菓子屋だった。
「……なんで駄菓子屋?」
お菓子なんて食べてる暇はないはずだ。
「誰がお菓子食べるって?」
「えっ? さ〜ちゃん……」
俺はメリーさんの後ろを指差した。
そこには、お菓子を食べまくるさ〜ちゃんがいた。
「……さ〜ちゃん……」
メリーさんは難しい顔をしている。
「とっとにかく、お菓子じゃないの、これよ」
メリーさんが見せてくれたのはガチャポンだった。
「ただのガチャポンじゃない?」
「ただのガチャポンじゃないわよ!! これはあなた達のゲームと同じで武器が出てくるの」
「おお!! 武器ガチャか!!」
テンションが上がる。
ゲーム好きとしては、一度は本物の武器ガチャ等を引いてみたかった。
ただ、池田の目が引いていたが……。
「あっ、えっと、その……なんでこんなのがここに?」
「元々はなかったのよ、前にゲームの世界になった後に、この店と一緒に現れたの。その時いた店の人に聞いたのよ、偉いでしょ!!」
偉いでしょって、その店の人も怪しいんだけど……。
「今日は店の人いないみたいだから、早く回す!!」
「仕方ない……」
俺は百円玉を手、ガチャを回した。
ガラガラ、ガラガラ、ポトン
「普通のカプセルなんだけど……」
このサイズの武器なんて使い物にならない。
でも、一応開けてみよう。
カプセルを開けると中には、野球のバットが入っていた。
もちろん、ミニチュアの……。
「持ってみて」
メリーさんの言葉通り持ってみると、ミニチュアバットがちょうど良いサイズになった。
「これは……?」
「手に取ると、その人の使いやすいサイズになるんだって」
先に言って欲しかった。
他のメンバーもガチャポンをしていく。
結果は、池田は拳銃、メリーさんはトンファー、さ〜ちゃんが日本刀だった。
池田とさ〜ちゃんは、前回の世界の武器をそのまま手に入れた。
俺とメリーさんは新しい武器だけど……俺のはバット?
バットって武器なのか?
それに、メリーさんのトンファーもなんか古い。
まぉ、とりあえず武器も手に入れたので、謎の店主も気になるけど、食屍鬼退治に向かう事にした。
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