第53話 食屍鬼
「ぐるぁぁぁ」
集団でいるはずの食屍鬼が1匹で来た。
だが、こちらは武器がない。
素手で倒せるような相手ではない。
食屍鬼はゆっくりと向かってきている。
足の筋肉が腐っているからなのか、動きが鈍いのは助かる。
「なにか武器はないか?」
あたりを見渡した。
貸出のカウンターの上にはハサミとカッターが置いてあった。
俺はその2つを手に取った。
「さ〜ちゃん!!」
掛け声と同時に2つをさ〜ちゃんに投げた。
「まかせろぉ!!」
武器を受け取ったさ〜ちゃんのテンションは上がっていた。
「ハサミとカッターって、最初にさ〜ちゃんに会った時を思い出すね」
池田の言う通り、さ〜ちゃんと始めて一緒に戦った時も、俺がロッカーに入っていたハサミとカッターを投げたんだった。
少し前の事なのに、通り過去のような感じがした。
さ〜ちゃんは、ハサミとカッターで食屍鬼を斬りまくった。
「ぐぁぁぁ」
食屍鬼は腐った肉を落としまくりながら、抵抗している。
食屍鬼がさ〜ちゃんに抱きつき、そのまま締め付けていく。
「ぁぁぁぁ」
さ〜ちゃんが苦しんでいるが、俺達は動けないでいる。
武器がないからだ。
武器がない俺達は足手まといになりかねない。
「えい!!」
池田は分厚い本を食屍鬼に投げつけた。
どんな物でも武器になるのか。
池田を見習って俺も本を投げつけまくった。
メリーさんは上空から本を食屍鬼の頭上に落としまくっている。
「ぎゃぁぁぁ」
食屍鬼は手を離し後ろによろけた。
そこを見逃さず、さ〜ちゃんは食屍鬼を斬り刻んだ。
そして、食屍鬼はその場に倒れ込んだ。
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