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日陰姫の陰謀論  作者: 蜜柑
番外編
22/47

番外編・◯◯◯◯疑い

日間ランキング13位に!!!

ブックマーク200越えの、評価も頂いて、ただただ驚いております。

ありがとうございます!すごく嬉しいです!

アクセス数も急にアップして嬉しい舞を踊っております。

 ここのところ、冷酷な皇帝陛下が、少し機嫌がいいのだという。後宮で気に入った娘を見つけ、皇妃にすることにしたからだというのは、公然の事実だ。昼は今まで以上に執務に勤しみ、夜はその娘のところで過ごすのだという。部屋からほとんど出ず、茶会の誘いにも乗らないためにその娘の素性はほとんど知られておらず、後宮に住まう他の令嬢は苛立ちを募らせているところだ。当然陛下の指示で護衛も増やされ、居室周辺の警備も厚くなっており、どうやっても接触できないのだという。

 そもそも、皇帝陛下は今まで後宮にどれだけ美しい令嬢が入っても、気にもかけなかったのだ。男色ではないかと噂がたちかけたほど、後宮に足を運ばなかった。それなのに、突然一人の娘にのめり込んだために、周囲は騒然としていた。




「おい、これはなんだ」


 執務室の机の上に山積みになっている書類の山を小突きながら、ディルを睨む。昨日はこんな書類の山はなかった。そして、朝からこんな書類の山に囲まれるような火急の案件は今はないはずだ。


「あー?宰相がいそいそと持ってきたらしいけど?」


 そちらが本当の仕事であろう書類を捌きながら、ディルはなんでもないことのように流した。


「そんなことは分かっている。何故俺がこれに目を通す必要があるのかと言っているんだ」


 あの阿呆な宰相は、朝の会議の最中にも言っていたからな。くだらな過ぎて返事もしなかったが。


「まぁ、アレクがユーシェ殿を娶ることに決めた今なら、側妃にねじ込んでもらえるかもって思ってるんだろうな。普通はその逆だと思うもんだが。…何をそんなに苛立っている?今までだって何度もそんな書類届いてただろう。何を今更」

「……お前、この中身を見ていないだろう」

「ん?」


 やはりなんでもないことのように言うディルの姿に、中身を見てないだろうことが読み取れる。いつものことだとノーチェックでいいと思うのは分からないでもないが、これをノーチェックで渡してくるとはいい度胸だと怒鳴り散らしたい。

 そう、俺は苛立っている。ものすごく腹を立てている。


「やばい案件でも紛れてたか?」


 不穏な雰囲気にようやく気付いたディルが、少しだけ険しい表情を見せながら書類をつまみに来る。俺は大きくため息をついて椅子の背もたれに寄りかかった。


「…いつもの入宮伺い…………じゃないな。うわ……、これは……」


 徐々に顔を引きつらせていくディルは、何枚か書類をめくっていた。その度に顔の引きつりが悪化していく。


「いーやー…、なんていうか…エゲツないな」

「ユーシェを皇妃にするにあたり、民衆が味方につけばやりやすくなるだろうと、ユーシェとの話を流すよう言ったのはお前だったな」

「そうだが…、アレクも反対はしなかったよな」

「…こうなることを予想していたか?」

「いや…もしかしてとは思ったが…、ここまで分かりやすいとは…なぁ」


 市井では今、俺とユーシェのことが話題になっている。ずっと皇妃どころか側妃の一人も娶らなかった俺が、突然皇妃をたてると宣言し、しかもそれが庶民の、孤児だというのだから話題にならないわけがなかった。それに便乗して、ディルがもっと詳細を流して、民衆の支持を得られるようにしようと言ったのは少し前のこと。

 俺としてはユーシェとのことが民衆に受け入れられようがどうでも良かったのだが、ただでさえ肩身の狭い立場なんだから考えてやれと言われ、そこまで言うのならと了承したのだった。確かに、なんの後ろ盾もないユーシェを皇妃に迎えることに関して、主だった貴族はもちろんのこと、重役達も難色を示していた。後宮に居座る令嬢達も、ユーシェを忌々しく思う者が多いことは分かっていた。俺が気にしなくとも、ユーシェは心を痛める。そう言われれば、くだらないの一言では片付けられなかった。

 そして瞬く間に俺とユーシェの馴れ初めなどが脚色されて広まっていき、ぼかしながらも庶民の読む娯楽小説になっているとか、大衆劇場の演目になっているとか、予想以上の盛り上がりを見せているということは知っていた。孤児が一国の皇帝に見初められ、皇妃にまでなるというシンデレラストーリーは、庶民の心を十分すぎるほどに掴んだらしい。

 その結果、民衆の支持した皇妃を蔑ろにすることはできなくなり、貴族や後宮の他の令嬢達は表立ってユーシェを貶められなくなったようだ。

 ユーシェ本人はと言えば、自分の話が広まっていることを恥じらいながらも喜んでいるようで、話を広めたのは良かったかと思っていた。

 しかし、この書類の山を見れば、方向性を間違えたかとため息が溢れるのは致し方のないことだった。何故なら…。


「こちらの侯爵家の令嬢は12歳、こちらの伯爵家の令嬢は黒髪の10歳。この伯爵家に令嬢はいなかったはずだから、どこからか見つけて来た娘を養女にしたのだろうな。こっちは男爵家だが、社交デビュー前から麗しいと評判の14歳。ものの見事にうら若き乙女が集められたようだな」

「何がうら若きだ。子供ばかりではないか。社交デビューもしていない娘を差し出そうなど、こいつらの頭はいかれているのか!どこまで腐っているんだ!」

「アレク…残念ながら、幼女趣味だと思われているな…」

「俺にそんな趣味はない!」


 生暖かい視線を向けられ、思わず怒鳴り返す。ディルは片手を額に当てて唸り、本当に阿呆ばかりだと呟いた。

 俺に幼女趣味はない。断じて、ノーマルだ。何度言ってもいい。幼女趣味は絶対にない。

 だが、この国の阿呆な貴族どもはそうだと思っているのだろう。今すぐ斬り捨ててしまいたいくらい腹立たしい。

 そんなくだらない予想をされた理由は分かっている。

 俺とユーシェの出会いが10年前で、その当時ユーシェは6歳。10年を経て再会し、ユーシェを見初めたというのに、阿呆どもは俺がずっとユーシェを想っていたと勘違いしたのだ。俺が絶対に後宮の令嬢に手を出さなかった理由も、成熟した女性には興味がなかったからだと思い込んだに違いない。

 だからと言って幼女趣味など、俺への侮辱としか受け取れん。


「まさかとは思うが、民衆もそう思っているわけではないだろうな」

「いやー、民衆はそこまで馬鹿じゃないだろう。10年前に助けた娘と偶然再会し、運命のように惹かれ合う二人…とかなんとかと言っていたはずだ」

「それなら阿呆はこれを出して来た奴らだけということだな」

「多分な」


 曖昧な返答をするディルを睨みつけるが、両手を広げて「いないと断言はできない」と言われ、俺は眉間のシワをさらに深くした。


「これを調査しろ」

「は?全部か?」

「当然だ。養女になったものに関しては、人身売買や人攫いがなかったか確認しろ。事実があれば処罰する。それと養子縁組に関しては俺の許可なしにはできないよう法律を作り変える」

「あぁ、まぁ、必要だよな…。こんな…、親に庇護されるべき年齢の娘を差し出す阿呆が山のようにいるってことだからな」

「その娘に俺の食指が動くも思われていることも耐えられん。ユーシェの元に行く!執務なんてやってられるか!」

「苛立っているからって、昼間っから手は出すなよ」

「それ以上余計なことを言うと、粛清するぞ」

「おいおいおいおい!粛清されるのは俺なのかよ」

「されたくないなら仕事しろ!」


 ディルに怒鳴り散らし、執務室を後にした。どんなに怒鳴り散らしても腹の虫が収まらない。だが、あまりに腹が立って仕方がなかった。

 俺は幼女趣味ではない。絶対に、だ!





 ここのところ機嫌の良かった皇帝陛下は、この日をもって冷酷な皇帝に舞い戻った…とか。






次はユーシェ視点の話を書けたらいいなと思っています。

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