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第79話 キラキラ!希望の未来へ走り出そう!

「おや、おはようございます同志サミコ。もう『怪我』の方はよろしいのですか?」


「ッ!ええ、おはようございます同志ゴーツク。おかげさまで、なんとかね」


ギリィ!と歯噛みしそうなのを必死に堪えた感じのポーカーフェイスを浮かべ、ガメツの爺さんに肩を抱かれた俺を睨みつける緑髪ロリ。わかっててわざとやってるなこの爺さん。俺の手にはお見舞いの鉢植え。植えられているのはペパーミントだ。


「こんにちは、初めまして!メアリちゃんのクラスメイトのポーク・ピカタです!今日は僕がクラスを代表して、メアリちゃんのお見舞いに来ました!」


「あら、そう!あの子もきっと喜ぶでしょうね!」


もうこれ以上ここにいたら殺意を抑えられないので失礼します!といった感じで足早に去っていく緑髪ロリ。悪い顔してんなあガメツの爺さん。これ見よがしに俺の肩に手を置いて仲よしアピールなんかしちゃってさ。


「ククク!!見たかよあのクソアマの面!よくやったぜホーク!褒めてやるよ!」


「神父様、口調口調」


「おっと、失礼しました。よく頑張りましたねホークくん。女神様もきっと君の行いをよく見てくださっていることでしょう」


さて、謎の編入生の謎は解けたものの、後始末が残っている。


まず当人の扱いだが、女神教の息がかかった人間が学院内で不審死を遂げたり失踪してしまったりすると煩そうなので、彼女には記憶喪失になってもらうことになった。


女神教ブランストン王国支部の教会に帰って来るなり入口の階段で足を滑らせ、頭を打って記憶喪失。実際には魔法で記憶を奪い操り人形にした彼女をわざと転ばせただけなのだが、これで学院関係ないところで勝手に彼女がすっ転んで記憶喪失になっただけ、なので難癖をつけられることもない。


無論、学院長印の侵入者除けの結界が学院全体には張り巡らされているため、ホーク・ゴルド暗殺作戦のバックアップとして学院の外で待機していたであろうディヴァインズエイトの面々、特に今回片腕を根元から失う羽目になった緑髪ロリなんかはそんなわけあるか!って感じだろうが、何分証拠がない。


「こんにちはメアリさん、お元気ですか?」


「あ、えっと...」


「ポークです。ポーク・ピカタ。君のクラスメイトで、転校生の。君には転校したばかりで右も左もわからなかった時に、とてもよくしてもらったんです」


「そうなんだ!よろしくね、ピカタくん!」


全ての記憶を失った彼女が異端審問部隊の隊長や仲間たちからどんな扱いをされたのかは知らないが、とりあえず今のニュートラルな何もわからない普通の少女である彼女に余計な刷り込みや洗脳教育は無駄だと悟ったのか、こうして部外者の面会を許される程度には自由に放置されているようだ。


そりゃそうだろう、ペッパーお姉様ラブ、ホーク憎しだけでここまでやってきておきながら、ペッパー?誰それ?暗殺?工作任務?ちょっと、いきなりそんなこと言われても困ります!?みたいな一般人少女にされてしまった彼女には、もはや使い道もあるまい。


「あ、ゴーツク神父様」


「調子はよさそうですねメアリさん。この様子なら、学院に復帰できる日も近いかもしれません」


「本当ですか!?えへへ、ちょっと心配だけど、でも、学校に行けるようになるのが楽しみです!」


そんなわけで、ディヴァインズエイトの管轄だからお前は口を出すな的に締め出されていたガメツの爺さんにこの娘の扱いは丸投げされ、女神教の王国を内部から取り込んでやろう計画は最初の一歩で躓くこととなった。


当然、ピクルス王子や公爵令嬢にして未来の第三王子妃ローザ嬢としては、見過ごすわけにもいかない。明確な裏切り行為を通り越した、もう水面下での侵略戦争だからね。今頃王宮は大騒ぎになっているはずだ。


王国も穏健派、強硬派、過激派、女神教の信者派と一枚岩ではないため、しばらく荒れるだろうが俺には関係ないな。いざとなったら帝国に一家揃って国外逃亡してしまえばよいだけだし。


とはいえ、今回の一件で完全に女神教の上層部とは敵対することになったので、いずれまた何か仕掛けてくる可能性もある。面倒なので、王子たちには是非とも頑張ってもらいたいところだ。


ヴィオレット先生と保険医は、何事もなく仕事を続けている。さすがに彼女の正体や背後関係を全部明かすわけにもいかなかったので、教会(じたく)で滑って転んで記憶喪失になったけどむしろ前よりまともになったからもう安心、ということで話が学院長から行ったそうだ。


逆に『ポークくんにラブレターもらっちゃったんだけど、もし何かあったら怖いから万が一の時のために』とあの日放課後空き教室に呼び出され、冤罪事件の目撃者として用意されていたアル・グレイ、リン・ダージ、チェリオ・シルバーバックは...まあ、うん、案の定というかなんというか。


いきなり学院長と一緒にやってきたピクルス王子らと一緒に通信機越しに一部始終全てを聞き、盛大にショックを受けた彼らは、現在カウンセリング中というか、反省中というか。


大切な人を殺されたのだからその敵討ちには正当性があるのではないか、と寝ぼけたことを言い出した赤髪の騎士団長息子は呼び出しを受け一部始終を説明された騎士団長によってぶん殴られ、今は荒療治のため騎士団に混じって遠征に連れていかれているそうだ。


チャラついた髪型もバッサリ刈り落とされて坊主頭にされ、『バカ息子の腐った性根をどうか叩き直してやってくれ!』と頭を下げたという騎士団長計らいの下、血と汗と泥にまみれた魔物の討伐任務を頑張っている頃だろう。地獄のブートキャンプか。大変だがこれも君のためだ、頑張るといい。


青髪の魔術師団長の息子は、女は魔物であるということを認識したらしく、やや女性不信気味になりながらも、己の浅慮で短慮な振る舞いを滾々とご両親に説教され、現在は学院内で真面目に勉強に取り組んでいるそうだ。


自分は賢いと思い込んでいる人間ほど、実はそうではなかったと思い知らされた時の衝撃は大きい。彼が今後今回の苦い経験を糧に飛躍できるか、それともただの敗北者で終わるのかは当人次第。


問題だったのがサニーという婚約者をほったらかしにしてメアリにうつつを抜かしていたチェリオ・シルバーバックだが、もう二度とよその女に目を奪われたりはしないよ!とサニーに土下座することで両男爵家には黙っていてもらうことで話がついたとサニー本人から聞かされたよ。


『ええ、ええ、結果だけを見れば悪くはなかったと思いましてよ!お陰で一生!わたくしが!チェリオよりも上の立場で結婚することができるんですもの!オーッホッホッホ!』


たぶん弱みを握られた彼はこれから一生女房の尻に敷かれ続けるんだろうなあ。ヤケクソ気味に高笑いしていたサニーだけど、それでも見捨てない辺りまだチェリオへの情は残っていたということだろう。まあ、カップルに倦怠期や破局の危機は付きものだ。ふたりの未来に幸あれ。


「此度の一件、世話になったな、ホークよ」


「いえ、あなたに恩を返せたのなら、よかったと思いますよ」


お見舞いも終わったので、そのままの足で学院長室に向かう。


「ポーク・ピカタは休学扱いにしておくゆえ、また何ぞあれば戻ってきてもよいのじゃぞ?」


「まあ、何もないことを願いますがね」


来年からは妹も入学してくるし、ひょっとしたらまたここへポークとして戻ってくる可能性もあるが、とりあえず今はお役御免ということでいいだろう。


「そういえば、この後ガメツの爺さんと飯を食う約束してるんですけど、学院長も一緒にどうですか?美味い鉄板焼きの店があるんですが」


「おお、それはよいのお!では遠慮なく、ワシもお邪魔させてもらうとするぞい!」


さて。突然だが不倶戴天の敵という言葉がある。同じ天をともに戴けない、つまりは、この空の下でそいつが生きていると思うだけで許せないし安心できないぐらいの敵を示す言葉だ。


例えば、自分に強い恨みを抱いている相手。その恨みの矛先を、自分の家族に向けかねない相手。いつそいつが襲ってくるんじゃないかと、疑心暗鬼になってしまって心の安寧を妨げるような相手。


「それじゃあ、お疲れ様でしたー!」


かんぱーい!と三人でジョッキをぶつけあう。同時に、遠隔操作で仕掛けておいた罠を起爆させる。侵入者をこの世から撃退する高圧電流の即死トラップなのに、咄嗟に片腕だけを犠牲にして逃れるようなやり手の人物を、果たしてこのまま野放しにしていて安心できるだろうか?


俺なら無理だね。だから、先手を打つ。残った方の片腕で余計な手出しができないように、パパやママや妹たちに、危害を加える企てすらもできないように、『骨の一片どころか、炭化を通り越して遺灰の一粒すらも遺さぬプラズマの一撃による蒸発』。


一度俺のかけた魔法によって片腕を失った彼女の体には、今もまだ俺の魔力の残滓がこびりついている。あとはそれを辿っていくだけで、彼女の居場所を突き止めるのは朝飯前だ。


その魔力の痕跡を導火線代わりに仕掛けたのは文字通り、跡形もなくこの世から消失する強烈な大雷撃魔法。人間ひとり分に超圧縮された超高電圧が、瞬きをするよりも短く、痛みも苦しみも感じる間もなく死を与える一瞬の一撃。


それを、朝教会の廊下ですれ違ったあの瞬間に、仕掛けておいた。後は頃合いを見計らって起爆させるだけ。ひとりの女海賊の死が今回の騒動のきっかけとなったように、この一撃が新たな復讐の呼び水となるのかもしれない。


恨みが恨みを、憎しみが憎しみを、復讐が復讐を呼ぶ、血で血を洗うよな泥沼の連鎖の連鎖を、断ち切ることなくつなげてしまったのかもしれない。


だが、構わない。来るなら来るがいい。俺も、ただおとなしく殺されてやるつもりはない。負けるつもりも、屈するつもりもない。


「あ、それ俺の肉!」


「いいじゃねえか、ケチケチすんな小僧!」


「フォフォフォ、いただきじゃ!」


「あッ!?てめジジイ!」


「ジジイはお互い様じゃろ?フォフォフォ」


俺の居場所は、俺の安寧は、俺の未来は、俺自身の手で勝ち取ってやる。

これにて7章完結です。

やはり美男美女だらけでおっさん成分が足りないとやや盛り上がりに欠けてしまいますね...

8章どうしようかな...

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