第73話 エレイレ・ガーリーエディション??
聖女。それは女神をこの世界に降臨させるための選ばれし存在。11種類全てのエレメントを束ね、女神をこの世界に降臨させるための鍵であり器である存在。
「そんな奴、あちらの世界線にはいなかったはずなんですけどねえ」
「そなたの存在がイレギュラーとなり、世界がまた異なる未来へと分岐しつつあるのやもしれんのお」
時は遡ること学院長室。いきなり中学2年生やってくれない?と学院長にお願いされた俺は、なんで??と頭の中が????で一杯になってしまった。
なんでも今年の春になって、いきなり女神教の息がかかった平民の女生徒が王国にやってきて、しかも王立学院に転入を希望したらしいのだ。一応、平民であろうがなんだろうが、学費さえ払えて入試に受かれば入れるのがこの王立学院である。
女神教からの義援金により支払われた学費と、まさかの編入試験で全教科100点満点を叩き出すという素晴らしい成績を収めた彼女は、貴族でもなんでもなかったのでB組に配属された。
「いやでも、女神が降臨した時にあんなストロベリーブロンドの女いなかったはずなんですよ。女神教の異端審問官の緑髪ロリとピンクの髪のシスターはいましたけど、あの娘とは顔が違いますし。そもそも、あの女神が女の子をわざわざ選び出したりしますかね?」
聖女なんてイヤ!可愛い男の子がいい!とか言い出しかねないような奴だった女神のことを思い出し、俺は首を傾げる。実際に、本当に聖女なるシステムが存在したとしよう。だが、女神は聖女なしでもあちらの世界で降臨した。
ならば考えられる可能性はいくつかあるが、まずあの11人のヴァンハーレムの中に聖女がひとりいた。もしくは、聖女なんて嘘っぱちで、別になくても降臨できる。あるいは、あちらの世界では聖女を選出する必要がなかった。もしくは、ホークが余計なことしたせいで死んだとか?
「いやはや、実際に女神に会ったことがある人間が知りあいにふたりもおると話が早くて助かるわい」
「そもそも、なんで俺なんですか?本性を見極めるだけならヴァンとかピクルス王子とかに頼めばいいじゃないですか」
「それがのお」
その平民、メアリ・イースという、赤ん坊の時に教会の運営する孤児院に捨てられていた際に名前を示す紙切れ一枚と虹色に輝く宝石がはめ込まれた首飾りだけを頼りに残りは一切不明という状態で保護された彼女が、そのピクルスやヴァンとかなり仲がよくなっているらしい。
生徒会長やってる第三王子(白髪)、ピクルス・ブランストン
実は公爵家の長男であるワケアリ学級委員(黒髪)、ヴァニティ・ゼロ
この国の騎士団長の息子(赤髪)、アル・グレイ (みんなこいつのこと覚えてる?)
宮廷魔術師長の息子(青髪イケメン)
保健室のイケメン養護教諭(緑髪)
B組の担任のイケメン男性教師(紫髪)
そしてまさかの男爵令嬢サニー・ゴールドバーグの婚約者、チェリオ・シルバーバック男爵令息(銀髪)。
何やってんだあいつ、『あなたに代わってこの僕がサニーを幸せにします(キリッ!)』とかやってたじゃねえか。
「何故かはわからぬが、この国の名立たる名家の後継ぎや教師たち、男性生徒たちが彼女に対し好意的なのじゃよ」
「魅了の魔法でも使ってるんじゃないですか?ほら、その虹色のペンダントがその類いの魔法や呪いが込められた魔道具だとか」
「そうであったなら話は早いのじゃが、残念ながら違うことをワシがこの目で確認した」
「学院長がそう仰るなら大丈夫、と言いたいところですが、あなた自身が魅了されている可能性もありますよ?あなたも所詮は股間に逸物ぶら提げた男ですからね。『何万年も生きてきたが、君のような興味深い女の子に出会ったのは初めてだ』とか言って若返りの魔法でイケメンエルフに変身したりしても別におかしくはないですし。そこんとこどうなんです?」
「フォフォフォ、相変わらずクッソ失礼なガキじゃのう。じゃが、じゃからこそ君に頼みたいのじゃよ」
微妙に額に青筋を浮かべそうな柔和な笑顔で、湯飲みで緑茶を啜る学院長。確かに俺なら女神の加護も受けているし、女に魅了されるぐらいなら問答無用で死ぬけど。というか、今頭の中で必死にそうなったら死ねる用の魔法術式を組み立ててはいるけれども。
「それで、別世界のあなたとはいえあなたには大きな恩もありますし、やるのは構いませんが、どうするんです?俺、これでも一応現役の大学院生なのですが。飛び級をなかったことにするとか?それとも変身魔法で別人に成りすます?」
「それが無難であろうな。幸い、ゴルド商会ならば戸籍の偽造程度造作もあるまい?ワシも協力するゆえ、そなたをホーク・ゴルドではない別人としてB組に編入させるとしよう」
そんなわけで、ポーク・ピカタの出番というわけだ。イグニス陛下にお願いして帝国民としての偽造戸籍を作ってもらい、正式に登録してもらえばそれはもう偽造ではなく本物になる。なんせ皇帝陛下直々のお墨付きだからな。
後は帝国からの留学生ということで強引に学院長経由で捻じ込んでしまえば、誰も何も文句は言えなくなるだろう。なんせ学院長の肝いりだし。
「そんなわけで、よろしくお願いします、特定の女子生徒に異常に肩入れしていらっしゃる先生」
「えええ!?」
別にロリコン呼ばわりはしませんので安心してください。この世界じゃ結婚適齢期は13歳から16歳ぐらいまでが普通ですからね。むしろ18歳とか19歳になってくると、行き遅れ扱いされるような世界ですから。
紫のフワフワとしたクセっ毛が特徴的な、丸眼鏡の優しさだけが取り柄そうなイケメン男性教師に頭を下げる。学院長の肝いりということで、さすがに担任に話は通しておこうということになったのだ。
もしこいつがメアリに俺の情報を垂れ流したならば、その時は粛清ポイントが貯まるよやったね担任ちゃん!
「お名前を窺って(伺って)も?」
「あ、ヴィオレットです」
「では改めまして、よろしくお願いしますヴィオレット先生。短い付き合いになるでしょうが。役に立てとは言いませんから、精々邪魔だけはしないでください」
「えええええ...?」
初等部1年生から大学1年生に飛び級して、さらに大学院にジャンプアップし、今度は中等部2年生に戻ってくるとかほんと波乱万丈というか、グッチャグチャだな俺の学歴。いや、ポーク・ピカタの場合は何らおかしくもないごく普通の転校生というか留学生なんだけどさ。





