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第67話 異世界はガラケーと共に

今にして思えば。母が死んだという話も、マリーが不義の子だという話も、全て父からそう言われて育っただけで、そういうものなのか、で完結し、疑うということを俺もマリーも特にしてこなかった。疑ったところで、確かめる術もこの世界にはないしな。


「えー、DNA鑑定と血液検査の結果、紛れもなくマリーがパパとママの子であることが判明しました」


「そんな、そんなまさか、だって...!」


「だから、言ったじゃない...裏切ってなんかいないって...」


カフェレストランを臨時休業して、店内で非常に重苦しい雰囲気の中パパとママから事のいきさつを聞いた俺は、早速ワープ魔法でマリーをここへ召喚し、女神からもらったチートを使って真実を明るみにした。


転生特典の神様チート、それはスマホ...ではなく、可愛らしい豚さんのようなピンク色のガラケーだった。ナウなヤングにもバカウケのハイカラな、黄金の剣に黄金の竜が絡みついたシャレオツな最高にカッチョイイストラップまでついてるぞ、すごいぞ。


その名もメーガーミーツ。アドレス帳に登録されているピザ屋とかラーメン屋に電話すると、注文後2秒で出前を届けてくれるという優れものだ。これでいつでも豊富な種類のピザとコーラ筆頭に各種飲料、色んな味のラーメンや餃子や炒飯といった中華料理が楽しめる!


それだけ聞くとすげえ不健康そうなジャンキーなチートなんだけど、病院に連絡するとお医者さんが往診に来てくれるしタクシーを呼べばどこまでも車を走らせてくれたり、通販を頼めば大体欲しいものが届くというスーパー便利グッズなのだ。勿論金貨は取られるけどね!


そんなわけで、なんで異世界で血液鑑定とかDNA検査してるんだよとの回答がこちらになります。ちなみにこれらは全て神様が経営しているお店らしく、24時間年中無休という素晴らしさ。注文してから2秒でお届け!それが噂のメーガーミーツ!!女神とMega Meetsをかけているのかな??


「えーと、初めましてお母さん?」


「ええ、こうして言葉を交わすのは初めましてになるのね...ホーク。それに、マリー」


「おかあ、さま...」


ヨロヨロと立ち上がった母が、ぎゅ、っと俺とマリーを抱きしめる。


「会いたかった!!ずっと、こうしてあなたたちを抱きしめてあげたかった!」


「お母様!お母様、お母様あ!!」


「ごめんなさい!傍にいてあげられなくて!寂しい思いを、辛い思いをさせてしまって、本当にごめんなさい!!」


大号泣する母と妹。いい話だなー!と思わずホロリとしてしまう俺。そんな俺たち三人の姿を魂が抜けたように放心状態で見つめる父。


「わた、私は...なんという...なんということを...おお!!」


父の目から、止めどなく涙が溢れる。そりゃそうだ。全部自分の勘違いからの思い込みだったわけなんだから。


11年。


母にとっても妹にとっても、長い歳月だっただろう。マリーに至っては生まれてから今日まで人生の全てだからね。誤解でした。誤解が解けました。はいじゃあ仲直りしましょう、で済むような問題じゃないよねっていう。


俺たちを強く強く抱き締めていた母が、父の前に立つ。パアン!と万感の想いを込めたビンタが父の頬を強かに打ち、浅黒い顔を赤く染める。だが、母の白い手の平も、同じように赤くなっている。


「言うことが、あるでしょう?私に...この子たちに!」


「...あ、ああ...すまなかった...私が、間違っていた、のか...」


「この、バカァ!!バカッ!!バカバカ、バカァ!どうして信じてくれなかったのよ!どうしてよおッ!私、一杯傷ついたんだからね!この11年、ずっと泣いて、泣いて、悔しくて、悲しくて、苦しくて!嫌いよ嫌い!あなたなんか、大っ嫌い!」


「すまない、すまないアリー。私が、全ては私が愚かだったのだ...お前の愛を、信じられなかった...」


愛してるが言えなかった悲しい男。愛してるを信じられなかった愚かな男。そんなどうしようもない黒豚を、好きになった変わり者の女。


叩く、叩く、叩く。それから、抱き締めて泣く。椅子に座ったまま放心する父を抱きしめ、号泣する母。そんな母の背を抱きしめようとして持ち上げられた父の手が、止まる。自分にはそんな資格ないって思ってる?


時に、資格なんかなくても思いきってやっちゃうのが人間なんだぜ?


「嫌いよ嫌い!あなたなんか、大っ嫌いなんだから!」


「ああ」


俺はふたりに歩み寄り、父の手を掴むと、母の背に回してやる。最初こそびくっとしたものの、やがて震える手で、父は母を抱きしめ、ボロボロと泣き始めた。


隣でマリーも泣いている。いつまでも戻ってこない俺たちを探しにきたクレソンとバージルは店の外でもらい泣きしているようだ。


戦争を止めに来た帝国で、まさかの死んだはずの母と再会し。そうして家族の問題が氷解するとは夢にも思わなかったけれど、みんなが幸せになれるのなら、これはこれでとてもいいんじゃないかと思う。

結局実の娘であることが判明したから和解できただけで、血の繋がらない娘じゃ所詮は無理だったってこと?それってどうなの?みたいなツッコミは、みんなの胸にそっとしまっておこうね。

お兄さんとの約束だ。

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