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第43話 一方その頃王都では

学院長 は 遠見 の 魔法 を 使った!

「クソ!」


「落ちつけ、ふたりとも」


「これが落ちついていられっかよ!?」


陰でこっそり悪口を言うのと、悪口を本人に聞かれるのとでは天と地ほども違う。というわけで、ホークが煽り耐性ゼロというか、今までバカなんてお爺様にも言われたことないのに!系の幼女竜に連れ去られてから、ゴルド商会は大騒ぎになった。


息子が誘拐されただけでも大変なのに、まして相手が世界の果てに住むと云われる邪竜でしたと報告された父イーグルは卒倒してしまい、今は息子を救うために邪竜討伐したいからとにかくS級A級冒険者集めろ!と奔走している。


しかし、たったひとりで一国の軍隊をも凌駕するとされるほどの人外レベルの実力者が集うS級冒険者たちはそもそも国家と契約するレベルで雇われていたり、一生遊んで暮らせるだけの金も地位も名誉も持っている者がほとんどであるため、まず来ない。


そして、そんなS級冒険者たちがパーティを組んでも倒せないのが邪竜という神域の魔物なのだ。そんな邪竜を相手に、S級になれなかったA級冒険者たちが戦いを挑もうと思えるだろうか?答えは否。


S級とA級の間にある、常人では絶対に超えられない高く分厚い壁の存在を口惜しいほどに痛感しているからこそ、彼らもまた動けない。よって、集まりは最悪である。


そもそもが、息子が邪竜にさらわれました、なんて言葉がまず眉唾なのだ。令和の時代に日本海で海水浴してたら子供が某国の潜水艦に拉致されたので助けて!!と主張するぐらい疑わしい。


そして万が一事実であったとしたら、これほど厄介なこともあるまいというのが周囲の実情だ。過去には、邪竜の怒りに触れたことで、滅ぼされた国も数多歴史上の記録には残っているのだから。


下手に討伐隊でも結成して邪竜に喧嘩を売って、まず勝てるわけがないので負けて全滅して、それでゴルド商会の人間や冒険者が死ぬのは勝手だ。だがそのせいで、ブランストン王国そのものが邪竜に目をつけられてしまっては堪ったものではあるまい。


よって、イーグルは方々で大嘘つき扱いされ、吐くならもっとマシな冗談を吐けと冷笑され、王族たる王子たちやゼロ公爵家の人間たちも、協力してやりたいのは山々なのだが、表立って動くことができないこの現状。


大方魔法狂いのバカ息子が魔法の実験中に爆発事故でも起こして屋敷を吹き飛ばして死んだのを、邪竜のせいにしているのだろうなどと世間の笑いものになったゴルド家は、お通夜のようなムードであった。


不幸中の幸いというか何というか、マーリン学院長だけは邪竜の存在を信じてくれたものの。


何故か『ホークのことじゃからどうせ大丈夫じゃろ。そもそもあの引きこもりジジイが悪口ひとつ程度で子供を害するとも思えん。放っておけい』とよくわからない台詞と共にピクルスとローザを追い返してしまったそうだ。


あまりにも八方塞がりな状況にイーグルは寝込んでしまい、マリーはどうすることもできずオロオロしながら兄の無事を女神に祈り、ハイビスカスは複雑そうな面持ちを浮かべ、ローリエは表面上は平静を取り繕いながらもどこか落ちつかない様子。


そして目の前で守るべき主をみすみす奪われた護衛たちは、それはもう荒れに荒れた。


「俺が、俺にもっと力がありゃあ!」


「言うな。S級冒険者ほどの力があったとて単身では何もできなかったであろうことは明白だ」


てっきり坊ちゃんを守れなかったことを責められ解雇されるものと覚悟していたバージルは、崩壊した部屋の惨状を鑑みても身を挺しホークを守ったことをイーグルに評価され、むしろ責められもしなかったことで己の無力に対する怒りや罪悪感が増し。


「クソ!約束したんだよ!あいつはいつか必ず俺がぶっ殺してやるって!それなのに、俺以外の奴に殺させちまったら俺ァ嘘つきになっちまう!」


「まだ死んだと決まったわけではない。そもそも殺すつもりならばさらう必要もないだろう?違うか?」


己の力だけを頼りに生きてきたクレソンは、己の力など羽虫に刺された程度も通用しない、文字通り生命体としての存在の格、次元が違うレベルの邪竜の圧倒的な力の前に、何もできなかったことを悔いるばかりの苛立ちが募る一方で。


『オリーヴ、助けてええェ!』


そしてそんなふたりを窘めながら、冷静にあろうと努めるオリーヴ自身もしかし、助けを求め伸ばされたホークの手を掴めなかったことで、狂おしいほどに自身の不甲斐なさを責めている。だからこそ、オリーヴに窘められるふたりも辛うじて堪えられているのだ。


この屋敷で過ごした七年という歳月は、オリーヴという人間にとっては意味や価値のある七年間であったらしく、もはやクレソンもバージルもただの同僚以上の、仲間と呼べる存在だと感じられるまでになっていた。そしてその最たる原因であるホークも、彼にとっては以前のように給金さえ弾んでくれるのならばなんでもいい、どうでもいい存在でしかないただの雇い主ではない。


実際にはヘルプミー!!などと叫びながら嵐の中に消えていったわけだが、脳内でやや美化されているホークの姿はオリーヴの中では恐怖に打ち震え涙ながらに己に助けを懇願する無力な子供として鮮烈に焼きついてしまっている。記憶とは都合よく補完されるものだからね、しょうがないね。


「こうなったら俺ひとりだけでもあいつを助けに行く!」


「無茶だ!いくらお前さんが強いからって、相手は邪竜なんだぞ!?」


「うるせェ!!何もしねえであいつが死んじまうのを待って生き長らえるよか、助けに行って返り討ちにされて殺されちまった方がまだ納得ができらァ!!俺ァな!!テメエに納得できねェ生き方をするぐれェなら、納得して死んだ方がよっぽどマシだッ!!」


「落ちつけ。何も行かせないとは言わん」


激昂し今にも屋敷を飛び出していこうとするクレソンを必死に抑えるバージルが、オリーヴの言葉にそちらへ振り向く。


「俺も行く」


「本気かよ?」


「本気だ」


張り詰めた緊迫感が三人を包む。だが。


「皆様!坊ちゃまが!!坊ちゃまが!!」


扉を開けて現れたのは、珍しく焦った顔のローリエであった。普段は冷静なメイド長たる彼女が、ノックもなしにバーン!と扉を開け放つなど極めて珍しい。つまりは、それだけの異常事態が起こったということだ。


最悪の展開を想像して、三人の顔が強張る。だが。


「坊ちゃんが、お戻りになられました!!」


メイド長の口から飛び出してきたのは、誰もが予想だにしない言葉だった。

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