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獅子とアンティーク  作者: 結木さんと
第6章 オールドカメラは知っている
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オールドカメラは知っている 2








 密室殺人だと先輩二人が主張する現場に、俺たちは揃って足を踏み入れた。

 なぜこんなことになったのか。

 今日は新入部員の織目さんと軽く顔合わせをして、今後のことを簡単に話したら帰るつもりだった。

 そうでなくても近頃は考えることが多いのだ。

 余計な騒動に首を突っ込んでいる時間などない。

 だというのに……


『あれが、壊されたカメラ……』


 沈痛な声音がかぶりものの奥からもれる。

 その視線は、叩き落とされたようなカメラに注がれている。

 言いたいことが横顔からたやすく伝わってくるようだ。


 木製の床に転がるそれは、一風変わった形のカメラだった。

 ほぼ正方形の箱にレンズやファインダーがくっついたような形状。古い物という話だが、あまりそうは見えない。どちらかといえば小洒落たシルエットだと感じる。

 そのすぐ近くにバッテリーパックのような部品が転がっているが、よく見るとフィルムらしき物体がはみ出しているので、おそらくカートリッジみたいなパーツなのだろう。

 デジカメ主流の現代において、本格的なフィルムカメラなど、クロ爺の店以外ではじめて見た。


『……すこし見せていただいてもいいでしょうか?』


 織目さんが二人に確認をとる。

 言うと思った。

 そもそも彼女は元から人助けを率先して行うような性格だった。

 いったい朝の俺の発言になんの意味があったのか。

 着実に消したい過去が積まれていく……。


「ねーねー、それよりさ、アンタの写真撮らせてくんない? めっちゃクールだよね、そのマスク! どこで買ったの? しまむら?」

『し、しま……? えっと……』


 おい、あんたが巻き込んだんじゃないのか。

 まるですでに壊れたカメラのことなんて忘れたような言動に嘆息する。

 あまりの世界観の違いに圧倒されたのか、詰め寄られた織目さんも困惑気味だ。


「よく、わからない……ひと……」

「星崎先輩は校内でも屈指の変わり者だからね。飽きっぽいし、気になることには猪突猛進だし…………聞いた話だけど、去年の夏は公園の噴水で遊ぶ子供たちを撮るために、自分も下着姿になって突撃したらしいよ」


 ただの変質者じゃないか。

 よく捕まらなかったな。

 そんな大和の話が聞こえていたのか、ギャルの先輩がくるりとこちらを向く。


「そんなのあったり前じゃん。モデルが裸なら、こっちも服を脱ぐ! それで心の壁が取り除かれて、本物の笑顔が生まれんの。ほら、裸の付き合いってよく言うじゃん? あれはそういうことなのよ」


 ……どういうことだろう。

 意味はわからないが、とりあえず関わりたくないなと思った。

 大和には二度と部室に来るなと言い聞かせよう。

 できるだけ接点を減らさなくては。


「でもさ、あーしの写真より、部長の撮る風景の方がスゴイんだよ? 選んでるシチュは普通の学校の裏庭とかなのに、めっちゃキレーでミステリアスな感じに写せんの。あーしに写真を教えてくれたのも部長だしさ」


 そう言って星崎先輩がニカッと笑う。

 ちょっと意外だった。この人は、部長のことをきちんと尊敬しているようだ。

 あまりそういうことは考えない人なのかと思っていた。


「そんなことはない。星崎君のダイナミックでありながら繊細な構図は、僕には真似できないものだ。君には本物の才能がある。もっと誇りを持つといい」

「まーたまたー。部長はすーぐそういうこと言うもんなあ」

「お世辞じゃないぞ? 写真に関してなら、僕はいつだって本気だ!」


 まあ、その、部員同士で和やかに話し合うのはいいんだけど……


『…………あの、カメラは……?』


 放置された織目さんがオロオロと狼狽えていた。

 もう、今日はペースを乱されっぱなしだな。


「ああ、すまない……別に、触ってもらってもかまわないが」

「なーに? もしかして、サヨちんってばカメラ直せんの?」

『専門的な修理は難しいですが、故障個所の判別くらいなら……おそらく、このカメラなら大丈夫だと思いますけど』


 よくわからない前置きをして、織目さんは白い手袋を取り出した。


『それでは――――遥か遠き昔日のカケラを、拝見いたします』



        ◇



 織目さんがカメラをそっと持ち上げる。

 それはまるで傷ついた小鳥を慈しむような仕草で、俺は久しぶりに彼女のそんな姿を見た気がした。

 さて、こうなると俺のやることがない。

 というか、状況がよくわからない。


「さっき密室って言ってましたけど、カメラが見つかった時はどうなってたんですか?」


 とりあえず(まだ多少は)まともそうな部長さんに訊ねてみる。

 すると彼は、眼鏡をくいっと押し上げて、なにやら遠い目をした。


「そうだな……あれは僕が、星崎君と共に部室を訪れた時のことだ……」

「ヤバイっす、部長。なんとか知的に見せようとしてるのが、かえってアホっぽいっす」

「あの、そういうのいいんで。普通に話してもらえませんか?」


 なにがまともだよ。写真部には変な人しかいないじゃないか。

 あんたのカメラが壊されたんじゃないのか?

 ふざける二人を呆れて見ていると、霧小路さんが「あれ?」と不思議そうに首を傾げた。


「部室には、入れないって……」


 そういえば、大和が言ってたな。

 たしか謹慎中がどうとか。


「ああ。それなら、星崎君が部室に忘れ物をしてしまってな。今日だけ特別に鍵を貸してもらったんだ。またすぐに返さないといけないが」

「活動が停止になる前に、英語の教科書忘れちゃってたんだよねー。今日まで気づかなくってさー」


 嘘だろ……謹慎になってから、いったい何日経ったんだ?

 英語なんて、わりと頻繁にある授業だろうに。


「星崎君には、ちゃんと授業に出るように常々言ってるんだがなあ……」

「にっひひっ! あーしのあふれるパッションは、授業ごときじゃ抑えきれないっす!」


 単に授業をサボりたいだけでは……?

 どうやらこの星崎先輩、部活以外の学校生活だとあまり真面目にならないらしい。

 それほどまでに写真が好きなのか。

 あるいは勉強が驚異的に嫌いかのどちらかだろう。


「戸森先輩がここの扉を開けたのは、ついさっきってことでいいんですか?」

「間違いない。星崎君の用事が終わるのを待って、合流してから鍵を開けたんだ」


 そして鍵を開けたらカメラが壊れていた、と。

 ……なんというか、自然とも不自然ともつかない話だ。

 まだ情報が圧倒的に足りていない。

 そもそもこれは、俺がなにかするべき状況なのだろうか?

 一番の被害者である戸森先輩はさほどショックを受けた様子もないし、星崎先輩にいたってはあのお気楽さだ。正直、なぜ巻き込まれたのかわからない。

 そう思うと、唐突に考える気力が失せていく。


『お待たせしました』


 やる気を失くして立ち尽くす間に、織目さんがこちらに戻ってきた。

 どうやら鑑定……というか点検が終わったらしい。


『こちらのフィルムは一部だけ感光していましたが、巻き取りにある部分はたぶんまだ無事だと思います。他に破損した箇所はとくに見受けられませんでした。レンズや絞りも無事です』

「おお! そうか、ありがとう! 助かったよ!」

『いいえ。やっぱり、ハッセルブラッドのカメラは丈夫ですね』


 そんなやりとりを交わして、元の姿に戻ったカメラが持ち主に返される。

 カートリッジもきちんと取りつけられたその様相は、やはり俺が知るどのカメラとも違っていた。どちらかというと、ハンディカムのビデオに近い。

 ハッセルブラッド、といったか。

 なかなか格好いいフォルムだと思う。働きだしたら趣味として持つのも悪くないかも……などと考えるぐらいには。

 そんな俺の視線に気づいたのか、織目さんのライオン頭がこちらを向く。


『“ハッセルブラッド”――1937年にフリッツ・ヴィクター・ハッセルブラッドが設立したスウェーデンのカメラメーカーです。こちらは1957年代に発表された500Cシリーズの最初期モデル。アンティークとしてはまだ歴史が新しいですが、六十年が経ったいまも多くの人に愛される、高品質の中判一眼レフですよ』


 へえ、そうなのか。

 思わずジロジロ見てしまう。

 正直、これまでの骨董品で一番興味が出たかもしれない。

 そうしているうちに、周りが静かなことに気づいた。


 見渡すと――写真部の三人が、あんぐりと口を開けて織目さんを凝視していた。


 おお、大和のあんな顔を見るのは久しぶりだな。中学一年の時に、あいつがはじめて男の先輩から告白されたのを目撃した時以来か。『君となら新しい世界が開けそうな気がするんだ。いろんな意味で』という誘い文句はわりと面白かった。

 そんな中、霧小路さんはすでに一度見ているので驚きはすくないようだ。


「織目さん、やっぱり、すごい……」

『い、いえ、そんな……まだ未熟ですので……』


 ライオン少女がもじもじと照れている。

 さすがに同い年の子に褒められるのはくすぐったいか。

 そういえば、彼女の周りでまったく同じ年齢の女子というのは、霧小路さんがはじめてかもしれない。

 このまま打ち解けられればいいな、と思いつつ二人を眺めていると――横から大和が掴みかかってきた。


「ちょ、ちょ、ちょっと暁彦! 彼女何者!? 織目さんはいったいどういう人なのさ!?」

「おいやめろ。そんなに揺するな。……あとその腕を放せ、お前は妙な誤解を招きやすい容姿であることをそろそろ自覚しろ」


 中学時代に一部の女子の間で噂が立ってたことは忘れないぞ。その連中はいまは別の高校にいるが、例の一件は俺の中に深刻なトラウマを残した。

 あれはもう二度と繰り返してはならない悲劇だ。


「――スッゴイじゃん、サヨちん! なになに? カメラ好きなの?」

『あ、いえ……どちらかといえば、私はアンティークが……』

「それでもヤバイって! もう入っちゃう? 写真部! ね? そうしよ!」


 ……おっと、それは困る。

 彼女はただでさえすくないうちの部の精鋭(予定)なのだ。

 同じ危機感を抱いたのか、霧小路さんも「フーッ、フーッ」と毛を逆立てた猫のように織目さんをかばっている。必死だ。

 関わると面倒くさいことになりそうなので、俺は話題を変えることにした。


「戸森先輩、ちょっとカメラを見せてもらえませんか?」

「え……あ、ああ。いいぞ」


 衝撃からようやく抜け出した写真部の部長が、カメラを手渡してくれる。

 おお、結構ずっしりくるな。

 落とさないように両手で支えようとするが、ほぼ真四角の形状のおかげで持ちにくい。

 どうやって持つんだ?


「そのカメラはな、こう構えるんだ」


 わざわざ戸森先輩が持ち方を教えてくれた。

 左手で底面からボディ全体を包むように。右の手はレンズ周りのダイヤルみたいな部品へ。

 まるで猫でも抱くようなポーズだが……なるほど、織目さんが最初にしていたのと同じ姿勢になった。

 それから戸森先輩がカメラ上部のつまみをいじると、中から大きなファインダーが飛び出すように起きあがる。

 へえ、ここで見るのか。

 また変わった画面だな。


「それはウエストレベル……胸の下のあたりで抱えて、上から覗き込むようにして撮るんだ。シャッターは左手の指先の部分にある」


 言われた通りにファインダーを見下ろしながらボタンを押すと、パシュッと軽快な音が響いた。

 うわ……これは、気持ちいいな。

 しかしそこでふと気づいた。


「あの……撮っちゃったんですけど、よかったんですか?」

「いまさらだな」


 眼鏡の部長さんが苦笑する。

 ごもっともな意見だ。


「別に構わないよ。どのみち、そのフィルムは破棄するつもりだったんだ」

「はあ。それはまた、どうして?」

「うーん……まあ、気分かな。それはあまり出来がよくなさそうだから」


 思案するように俯いた戸森先輩が言う。

 ……なにか事情でもあるのか。

 とはいえ、気安く訊き出せるような雰囲気でもない。

 そもそも深く踏み込むつもりもないので、聞き流すことにした。


「おやおや〜? アッキーも写真が気になっちゃう感じ? 入部系かな?」


 そして面倒くさいのがこっちに来た。

 アッキーって誰だ。まさか俺のアダ名なのか。

 助けを求めて目を向けると――――霧小路さんが『ガーン』と効果音のつきそうな顔でこちらを見ていた。

 本当にメンタル弱いな、あんたは。

 いつもの無表情はどうした。アイデンティティーをかなぐり捨ててまで、ショックを表現するのはやめてほしい。


「……入部はしませんよ。俺はもう部活に入ってますから」

「なーんだ、ざんねーん! なかなか部員って集まんないのよねえ……」


 感情の読めない口ぶりでギャル先輩が愚痴をこぼす。

 この扱いづらさ、大和以上だ。

 ローカルクラブの苦労は共感できるが、どうか俺とは関係のないところで頑張ってほしい。

 話が途切れたところで、先輩に礼を言ってカメラを返す。

 さて、用事も済んだし帰るか。


「ちょっと待って暁彦! 密室事件はどうするのさ?」


 立ち上がったら大和に呼び止められた。

 こいつはなにを言ってるんだ。


「カメラは壊れてなかったんだろ? ならいいじゃないか」

「きみは気にならないのかい? この人智を超えた不可思議な事件の真相がさあ!」


 ならない。

 お前と違って、俺はミステリーの愛好家でもないからな。

 それに、


「こんなもの、密室でもなんでもないだろ」

「新屋くん……なにか、わかった?」

「いや、そんな小難しい話じゃなくてだな」


 無表情な少女の期待が込められた視線に嘆息する。

 仕方なく、俺は部室の床を指差した。


「ここはどこだ」

「え……写真部の部室だけど」

「その前に、学校の資料室だろう」


 つまるところ、鍵があれば誰でも入れる。

 物理は二年からの文理選択科目なので詳しいことは知らないが、まず担当の教員なら毎日のように出入りしているはずだ。

 これを密室と主張するのは、ちょっと微妙だろう。

 そう説いたところ、大和は「やれやれ」とでも言いたげに肩をすくめた。

 もうびっくりするほど腹立たしい。


「わかってないねえ、暁彦は」

「……なにが」

「いいかい? 物理担当で、三年生の学年主任でもある御手洗(みたらい)教諭は、とてもストイックな性格の先生なんだ」


 それがどうした、と思ったが、話が長引くのも面倒なので口を噤む。

 いつもの悪ふざけだったら助走をつけてデコピンしてやろう。


「生徒に厳しく、それ以上に自分のミスにも厳しい。良くも悪くも潔癖なんだよね。

 たとえば暁彦の推理通り、御手洗先生がカメラを落とすか、あるいは今日までにこの惨状ができあがっていたとして……そんな先生が、部長への連絡を怠ると思うかい?」


 訊ねられて、俺は答えに窮した。

 その御手洗先生とやらと直接の面識はないが、たしかにそんな性格だとすればこの状態で放置はしないだろう。

 大和の言い分を通すなら、御手洗先生が最後にこの部屋を出てから現在までの間で、部長のカメラが壊されたということになる。

 しかし、だったらその期間はどれぐらいなんだ?

 それによって犯行時刻は大幅に変わってくると思うが……。


「部長は、たしか進路希望が理系でしたよね。先生が最後に授業をされたのがいつだったかわかりませんか?」

「それ、あーし知ってる」


 大和の問いかけに、星崎先輩が元気よく手を挙げて答えた。


「三年の理系、今日の六時間目が物理だったはずだよー。『一日の終りにミタセンの授業があるのはキツいー』って、前に部長が愚痴ってたし!」

「あ、ああ。そうだな……たしかに、僕の選択クラスが最後だ」


 ……なんだ?

 いま、奇妙な感じがした。

 しかしその正体を探るより先に、ずっと黙っていた織目さんが近づいてくる。


『あの、新屋さん』

「断る」

『ま、まだなにも言ってません!?』


 言われなくたってわかる。

 どうせあれだろう? あの人を助けられませんか、とか言うつもりだろう。

 俺は極度のお人好しを半眼で睨んだ。


「……いまは、こんな余計な騒動に首を突っ込んでる暇なんてない。そのことは織目さんもよくわかってるはずだ」

『で、ですが……』

「だいたい、今回は誰も困ってないじゃないか。それなのに出しゃばる必要がどこにある」


 そう……この場の誰も、助けを求めてなどいない。

 だからこそ踏み込む気になれなかった。

 赤の他人の過剰な干渉は、往々にして当事者の不興を買うことになる。

 どう考えてもデメリットしかない案件に関わるなど、俺は御免だ。


『……悲しい、感じがしました』

「は?」

『上手く、言い表わせません……ですが、あのハッセルブラッドが壊されたのには、なにか悲しい事情があるように思えてならないんです』


 やたらと抽象的な言葉を吐き出した織目さんは、俺に向かって深く頭を下げた。


『お願いします、新屋さん……たくさん助けていただいておきながら、厚かましいお願いであることは重々承知しています。でも、どうしても新屋さんのお力が必要なんです。……私にできるお礼なら、どのようなことでもします。だから、どうか……』


 ――それは、あまりにも切実な訴えだった。

 きっと彼女にも矜持はある。どんなに自信が持てなくとも彼女だって人間だ。俺と同じだけ生きてきた、一人の女の子だ。

 他者を頼ることがすこぶる苦手な織目さんが、すがるように頭を下げた。

 その意味は、たぶん俺にもちゃんと理解できていた。


「……なぜ、そこまでする」


 気がつくと、俺はそんなことを訊ねていた。

 答えはなんとなく予想できる。

 けれど、問わずにはいられなかった。


 そして顔を上げた織目さんは……真っ直ぐに俺を見つめて、言う。


『遠く険しい歴史を生き抜き、多くの人の想いを受け取ってきたアンティークの結末は――どうか、なによりもあたたかな時の中にあってほしいと、願っているからです』


 声には一分の迷いもなく、わずかに揺らぐことさえなかった。


 ――――それが彼女の“誇り”なのか。


 肉親たちに人生を踏みにじられて、すべてを奪われてきた彼女が――唯一、手放さなかった大切な「想い」。



 ……瞼を閉じて、絞り出すような息を吐く。

 胸の奥に巻き起こった感情を鎮めるため、ガリガリと乱雑に髪を掻いた。


「ああ、もう…………わかったよ。考えればいいんだろ、考えれば!」


 撒き散らした言葉に、織目さんは再び腰を折って深く感謝を告げる。

 だからやめてくれ。そういうのは、俺の柄じゃないんだ。


 一連のやりとりに対する周囲の反応は様々だった。

 きょとんとした星崎先輩と、なにやら複雑そうな表情の戸森部長。

 大和のやつはニヤニヤと口元を歪め、霧小路さんは安堵したように胸を撫で下ろしている。

 他人事だと思って気楽だな、おい。



 さて、どこから手をつけるべきか。

 やっぱり逃げきれなかった俺は、しぶしぶ思考を巡らせた――。






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