俺たちは妖怪を退治する
危うく死にかけた俺は救出された。
俺は賠償としてメメの尻を揉む権利を求めたが、代わりにシエラを与えられた。
もにゅもにゅ……。
「くすぐらい」
シエラも俺の手から逃げていき、シエラはもにゅもにゅとリルゥのお尻を揉んだ。リルゥも仕返しにシエラのお尻を揉んだ。
こうして世界は救われたのだった。
終わり。
「……(ぴょんこらぴょんこら)」
黒もやちゃんは俺の周りで跳ねている。褒めて褒めてと言っているようだから、頭を撫でてやった。
その瞬間、俺の頭がぐわりと揺れて、「もうその展開いいよ!?」と抵抗したが、あえなく映像が脳裏に叩き込まれる。
「はぁはぁ……ドラゴン……?」
俺の脳みそに叩き込まれたのは古典的な物語な映像。お宝を守るドラゴン。
穴蔵と言ったらドラゴンとお宝。なんて俗なイメージだ。そんなものに目を輝かせるのは子供くらいか。
「ドラゴン!?」
目を輝かせる子供がここにいた。
メメは俺の袖を掴んでひっぱり、俺のたわわな胸たたぷんと揺れた。
「ドラゴンいるの!?」
「凄い食いつきだな」
いるかいないかでいったら多分いないだろう。というか居てほしくない。何が楽しくてモンスター界最強生物と戦わなきゃいけないんだ。こいつは楽しそうだけど。
だけど見せてきたからいるんじゃないかなと思ってしまう。いやむしろ……。
「メメって意外と英雄譚とか好き?」
「よくわからないけど! ドラゴンとか! 戦いたい! じゃないの!」
メメがぴょんこら跳ねて、一緒にシエラとリルゥも跳ね出した。やかましい。
マナが願いを叶えると言うならば、メメがそれを願うと生み出されるということで、きっと多分見せられたドラゴンはメメが望んでいる事なのだろう。
ということは少しずつわかってきた。
俺はたぷたぷした胸をしまい、濃いマナの中の階段を下りていく。
「この穴は、俺たちの頭を盗み見て反応している」
「ふむ。なるほどのぉ」
あのお花畑もメメの記憶の光景なのかもしれない。あるいは、俺の記憶も混じっているかもしれない。古い記憶の中の、広い牧草地の光景を思い出す。花畑をクローバーにしたら、俺の知ってる土地に似ていたかもしれない。今ではどちらの記憶もうすぼんやりとしている。
そうなると一つ懸念がある。
「?」
俺はちらりとシエラを見た。尻だ。いや尻じゃない。
シエラを構成する99%がお菓子で出来ている。間違いない。シエラの身体からは常に甘い幼女の香りがする。お尻もプリンのように柔らかい。
「ねえ。どんどんマナが濃くなってるけど大丈夫?」
意外なことにメメが俺の事を心配してくれた。ああ大丈夫。俺はメメの鼠径部をガン見した。今までおっぱいにしか興味が無かったが、改めて見るとメメの姿は痴女すぎる。何度か服を着ることを奨めてみたが、「動きにくい」と言って脱いでしまった。なのでいまだに身体に布切れを巻きつけてる状態だ。シエラですらちゃんと服を着ているというのに。砂糖でべたべただけど。
なので鼠径部、つまり下腹部の太ももの付け根のことだが、そこがやけに艶かしく見える。なぜ人間はスリットの部分に惹かれてしまうのだろうか。胸の谷間。お尻。脇の下。太ももの付け根。ああ素晴らしき隙間たちよ。隙間があったら入りたい。
俺は隙間に賛美した。
「えっち! 変態お兄さん!」
俺がメメの身体を見つめていると、メメの蹴りが飛んできた。俺はそれをパシと受け止め、ああそうそう足もいいよねと思い返す。すると女の子というのは全身魅力的で、全身凶器ということがわかってしまう。そんなものを正面から受け止めたら死んでしまう。
「大丈夫だ」
「何が?」
俺は逃げるように見つけた壁の隙間に入り込んだ。おっぱいのせいで引っかかるが、ギリギリ通れた。
「なんだここは……」
泉だ。小部屋の中に泉があり、泉の周りに青い魔石が生えている。そしてその傍らに古びた小屋が建っていた。小屋は大樹に侵食されて、半分埋まってしまっている。
「ちょっとぉ。急に変なとこ入るんじゃ……あらぁ?」
メメが俺の後に入り、背中にくっついてきた。
「ここって、精霊花のとこ?」
「え? まじで?」
あんな小屋とか、まして魔石とか無かったけども、言われてみればなるほど。魔石を精霊花に置き換えると見覚えのある光景になりそうだ。
これも記憶から作られた部屋なのだろうか。
「むむむ……変な隙間に入るでない……」
ヨウコが巫女服に付いた土埃をパンパンと払い、シエラもそれを真似してはたいた。リルゥはきょろきょろと辺りを見回し、小屋に向かって駆け出した。
「おい、危ないぞ!」
声を掛けた瞬間、泉からざばぁと水しぶきが立ち上がり、ハゲの魚人モンスターが現れた。
「サハギンか!」
人の倍ものある異形の姿。そして奇妙なことにそれは魚ではなく亀の姿を模していた。
メメが真っ先に飛びかかったが、強靭な肉体に阻まれびくともしなかった。
さらに足場の水に足を取られ、思わぬ強敵と見たメメは水から上がり戻ってきた。
「いや……あれは河童という妖怪じゃ」
「知ってるのかヨウコ」
「うむ。わちの炎を持ってすればさして強くない。じゃが場所が悪いのう……」
ヨウコの魔法の炎は空気を使うと言っていた。かなり広い場所とは言え、このような空気の循環しない空間で使うと、呼吸ができなくなって俺たちが倒れるという。
「メメよ! 頭じゃ! 頭の皿が弱点じゃ!」
「そんなこと言われても届かないよ」
オークロードよりでかい巨体が、泉の中で立ち上がり、俺たちを睨みつけた。
「シエラとリルゥはヨウコの後ろで待機だ」
「あいっ」
「……(こく)」
幼女組は温存しておく。リルゥは病み上がりだし、シエラの魔導銃は音が大きいため狭い場所で使うと反響がやばい。ヨウコはおろか、俺たちも目を回しかねない。
俺は小回りを重視して持ち込んだショートソードを抜き、前に立った。
「いくぞ!」
「左右同時ね!」
メメが左に駆け、俺は右から回り込む。
思った以上に水に足を取られる。そしておっぱいが邪魔だ。動きにくい。メメが滅多に大人バージョンにならない理由がわかった。おっぱいとは重しである。
カッパの爪が迫る。俺はそれを大きく回避した。むろん、すれすれで回避するとおっぱいが切り裂かれるからだ。ショートソードの選択は失敗したかもしれない。
カウンターを入れるにも、足がおぼつかない。メメが反対から一撃を入れた隙に斬りかかるが、撫でるように裂いた皮膚からは一筋の青い血の痕を付けただけだった。
水を意も介さないカッパは、その巨体を持ってシンプルに殴りつけてくる。そして水しぶきがあがると視界が塞がれ、さらに波で押し戻された。
俺たちは距離を取り、再び水から上がった。
「厄介ね」
「なああいつ、水棲だし水から上れないんじゃないか?」
ヨウコは首を横に振る。
「頭が乾かない限りやつは陸でも動けるのじゃ。しかしなぜこんなとこにカッパなぞがおるのか……」
「頭を燃やせばいいのね。気が向かないけど」
メメは指先をカッパの頭に向けて光らせた。
滅多に使わないのだが、メメは炎魔法が使えるのだ。
だが危険を察知したのか、カッパは水の中に潜ってしまった。
「ああ! もう!」
「あの巨体じゃ隙間を抜けられないだろうし、ほっとくか?」
「じゃが、壁を崩してきたらまた面倒じゃぞ」
確かに。今後の探索を考えると斃してしまうべきだろう。
「ヨウコの炎魔法なら斃せるんだろ?」
「じゃが――」
「外から蒸し焼きにしてやれ」
「なるほどの」
中で魔法を使うと共倒れするなら外から使えばいい。
俺たちがいそいそと撤退を始めると、カッパは水から上がり襲いかかってきた。
「急げ!」
そう言った俺のおっぱいが狭い隙間に引っかかってしまった。
「はやくはやく!」
「おっぱいが邪魔で動けん!」
なんということだろう。せめて苦しくとも革の胸当てで押さえ込んでおくべきだった。
行くも戻るもできず、俺は完全に挟まってしまった。
「……(!)」
そんな中、リルゥの機転でカッパの足元に蔓が絡みつき、カッパはびたーんと地面に倒れた。
さらに魔導銃を構えるシエラの姿が。
「! みんな耳をふさげ!」
耳をつんざく爆発音とともに飴玉が発射された。そしてカッパの頭に命中すると白いハゲにひびが入り、カッパはびくびくと身体を震わせて動かなくなった。
ついでにヨウコも頭の上の狐耳をぐんにゃりと寝かせたまま、自身も地面に転がった。




