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ばかばっかり!  作者: 弥塚泉
2014年、再びうろな町役場企画課
32/42

7/5『平成二十六年度うろな夏祭り報告書/午後四時』

 腕時計で四時になったのを確認して、マイクを手にした風野はステージの横に出ていった。ステージといってもその上には大人が五人並べる程度のもので、メインのステージとは比べ物にならない。しかし、うろな工務店の若者たちに手伝ってもらったおかげであって、素人特製のチープさは無く、それなりの出来となっていた。

「さあ、みなさんお待たせいたしました」

 ステージが休憩中ということもあり、この中央公園の真ん中に設けられた白いプラスチックのテーブル席から視線が集まる。事前に宣伝していたおかげで、ステージの前にも二十人ほどの観客がいて、風野は少し緊張した。

「うろな町役場企画課のお二人による漫才です! どうぞ!」

 漫才番組でよく聞く音楽とともに二人が屋台の後ろから登場し、ステージに上がると拍手で迎えられた。



「どうもー、佐々木達也ですー」


「香我見遥真です」


「よろしくお願いします、っちゅうことでね。いやー、まさかこんなにお客さん来てもらえるとは思いませんでしたわ。みなさん、暇ですねー」


「失礼やなキミは」


「まあまあ、ゆうてもね、ホンマにこの暑い中来てもうてありがたいことですわ。

最近いよいよ暑うなってきて、夏も本番っちゅう感じでね」


「佐々木君はこの夏の予定とかあんの?」


「夏と言えば海っちゅうことで、今年もナンパしに行こうと思ってんねん。ほら、去年の夏は一緒にARIKAアリカでナンパしたやん」


「仕事で行っただけやろ。しかもあんときは水鉄砲でぶっ飛ばされてたのに、懲りひんやっちゃな」


「何事も当たって砕けろやで。でも、普段からナンパに行ってもあんま成功率高ないからさあ、ちょっとここで練習させてくれへん?」


「ええよ。じゃあ俺はその辺におるライフセーバー役でいい?」


「もうちょいこっちに絡んできてや! ほな香我見クンは女の子役やって」


「任しといて」


「ちょいちょい、そこの姉ちゃん、暇ちゃいまっかー?」


「おいどんのことでごわすか?」


「なんかめちゃくちゃごついの出てきた!」


「佐々木君の趣味に合わせたつもりやってんけど」


「ちゃうからね! ボクが好きなんはどっちかゆうたら、シュッとしてるタイプやから」


「分かった。シュッとしたタイプな」


「ちょっとそこのお姉さん?」


「あらどうしたの?」


「いやあ、あんまりスタイルええもんやからつい声かけてしもたんです。スリーサイズなんぼでっか?」


「上から50,10,40です」


「ガイコツちゃうのそれ!? なに真夏のホラーにしてくれてんねん!」


「シュッとしてるやろ?」


「シュッとしすぎ! もうええわ、香我見クンはボクのナンパのサポートして」


「任しといて」


「返事だけはええな……。ちょっとそこのお姉さん、ボクらと遊びまへんかー」


「ぷよぷよとテトリス、どっちがええですか?」


「テレビゲームちゃうねん!」


「あ、花札の方やった?」


「カードゲームもやれへんねん! ここビーチやねんから、ビーチバレーとか」


「いや、ここステージやで?」


「分かってるわ! ナンパのときの話!」


「あ、そういえばこないだ面白い看板見つけてな」


「別の話せんといて!? 何回もおんなじくだりやってボク、アホと思われるやん!」


「分かった分かった。今度はちゃんとやるから」


「頼むでホンマ……。いやあお姉さん、その水着めっちゃ似合ってはりますわ」


「流線型のフォルムに白一色の配色、名前がすぐ分かるのもポイントですね」


「白いスクール水着やんなあソレ!?」


「佐々木君、好きやろ?」


「好きやけどそれ着てる女の子ナンパしたら捕まるから! ……そうや、ボクらとビーチフラッグ勝負せえへん? ボクらが負けたら海の家で昼飯奢るわ」


「佐々木君ごめん、俺今財布に二十五円しか入ってないねんけど」


「黙っとけばええねん! あ、アクセル聴いてんの? ボクも好きやねん!」


「すいません、町役場までにはどうやって行くんでしょう」


「それはアクセス!」


「この薬、飲みやすいな」


「それはカプセル!」


「アケメネス朝の王様の名前ってなんやったっけ?」


「なんで今聞くの!? もう全然ちゃうやん!」


「あのさあ佐々木君、俺思うねんけどナンパって結局んとこ、顔が全てちゃう?」


「それ言うたら終わりやろ! もうええわ」


「どうも、ありがとうございましたー!」

小藍さんの『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』から、東のビーチにある海の家ARIKAのお名前と、

寺町朱穂さんの『アクセル!-新人アイドル奮闘記!‐』から、主人公の所属するアイドルグループ、アクセルのお名前をお借りしました。

「水鉄砲でぶっ飛ばされた」のくだりは『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』の『8/8 始まりは突然に』から。

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