表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんで俺が、メイド科に!?  作者: LOVE坂 ひむな
第二章 世界分割の巻
35/42

デデリ城御前試合 一日目

本日二度目の更新です。

 デデリ王国首都デデリアは、円の意匠を多く備えた街だった。ドラゴン教魔石派が強い影響を及ぼす地というだけはある。そういえば街の移動手段も蜥蜴車が多い。


「御前試合は七人の戦士による総当たり戦だ。ただし死や大怪我での脱落者が出れば試合数は二十一より少なくなりうる」


「どういう人が出るんですか」


「例の岩の躰のディルディロユ、のちに彼とフラーブルとともに三騎士と呼ばれることになる空の衣のレバイエ、剣英の名をほしいままにする最強の剣士チョッチョラ、先の王より勇者の称号を受けた魔術師トヴィシュトフ、冒険者カンカウラ、後の二人は未定だがゾンセは多分参加できるだろう。あとはそうだな、この時代だとシヒデという戦士が来るかもしれん」


 電電先生がすらすらと名前を挙げる。


「参加資格は第一に供託金を出すことだな。普通は出資者と戦士は別だ。なにかコネがあるか、高位の冒険者の資格を持っていて冒険者ギルドの選抜を勝ち抜くかでなければここで弾かれる。その上で予選を越えれば、ここに参加できる。脱落者が出れば代理として出ることもできるが、条件は厳しい。今回はミコトくんには参加してもらうつもりはないよ」


「別に参加したがってはいませんよ」


「我々の目的は大会の撹乱と、ラチャラチーくんに翻訳ギルドで蛇・蜥蜴語を覚えてもらうこと、それとミコトくんには木の葉落としという魔術を身につけてもらう。小さめの飛び道具を葉に変える魔術だ」


「銃砲への対抗策ですか」


「明日に、指定の場所へ向かってくれ。今日は御前試合を観戦しよう」


 魔術花火が上がる城の前の広場に向かうと、もうすでに人がかなり集まっていた。第一番はゾンセとカンカウラの戦いだそうだ。ゾンセさん、出ることができたんだな。


「お待たせいたしましたーッ! デデリ城御前試合!! 始まりですッ! 幕開けを飾るのはーッ!! 無名の戦士ゾンセ対ッ一級冒険者カンカウラだーッ!!」


 観衆の声はほとんどカンカウラの方の名を呼んでいる。まあそりゃあそうだろう。


「カンカウラは説明不要でしょう!! 数々の武勲を上げ人類の活動領域を広げるのに貢献ッ最も名高い冒険者といえますッ!! 冒険者ギルドの出資で参加!! 一方のゾンセはプロフィール不明ッ! しかし出資者は死の商人ロゾフだァーッ! 毀誉褒貶ある人物だが掘り出したものが外れであろうはずはないッ!! 一体どんな戦いを見せてくれるのか!!」


 ロゾフは死の商人として知られ、同時に商人の嗅覚も有名なのか。しかしこの戦いの見られ方は必然的にカンカウラが善玉、ゾンセが悪玉という形になってくるだろう。戦いづらそうだな。


「それでは試合ッ! 開始ーッ!!」


 最初に動いたのはカンカウラだった。魔術の術式を複数展開し、剣を構えて駆け出す。オールラウンダーの冒険者としてわかりやすい戦い方だが、動きに隙がない。戦いを組み立てづらい相手だ。それに対しゾンセは動かない。動けないのか。術式が起動し、剣が迫り、そして——


「断魔剣ヌ・ドラヴナ」


 術式がすべて切り裂かれ、剣は砕け散った。カンカウラの目が驚きに見開かれる。隣でラチャラチーが叫ぶ。


「あれは、断魔剣!?」


「知っているのかラチャラチー!?」


 教えてくれた。ヌ・ドラヴナは魔術を切り裂く剣だそうだ。といってもよほどの技術がなければ大した魔術は切れない。魔術を切り裂く技は剣技とは別に磨かなければならない。そう扱いやすい剣ではないのだ。あんな技術を隠し持っていたのか。

 それでもカンカウラは引かない。剣を左手で受けて止め、短刀と手足を使った接近戦に持ち込む。泥臭い戦いはそう長く続かなかった。左手を切りつけられているのだ。カンカウラが先に力尽きた。傷だらけになったところにヌ・ドラヴナが袈裟懸けに振り下ろされ、それが決着となった。


「深い技術の研鑽があったな。しかし——私の方が深い」


 無名の参加者が最強の一角を下すという番狂わせに、静寂が、ついでどよめきが会場を包み込んだが、司会者が決着を宣言する。


「しょ、勝負あり!! ゾンセの勝利!! なんという、なんということでしょうッ! 誰がこの展開を予想できたかッ!!」


 司会者も困惑しつつ興奮しているようだったが、一方隣では電電先生が大笑いしていた。


「ハッハッハッハ!! ッククク……ハッハハハ!! ヒー」


「笑いすぎじゃないですか」


「失礼、この大会は各戦士の出資者たちがそれぞれ誰それを暗殺しようとか陰謀を巡らせているんだがね、その中でほぼ全員が死んでほしいと思っている戦士がいるんだ。あのカンカウラというのはね、その下手人の第一候補だった。それがあれほどの怪我だ。今頃金持ちどもは慌てているぞ!」


 ほぼ全員に死を望まれている戦士というのは気になるが、ここで伏せるということはまだ言う気はないのだろう。というか。


「勇者、ですかね。死んでほしいと思われている戦士というのは」


「まあ、そうだな。先王が持ち上げた英雄で、やたら強いときた。今の王にとっても諸勢力にとっても目障りなことこの上ないんだろうな」


 その後チョッチョラがレバイエに勝ち、トヴィシュトフがディルディロユに勝って一日目は終わった。ここで特に脱落者は出なかった。


「えっと、チョッチョラとトヴィシュトフの出資者は王室、レバイエはドラゴン教僧院、ディルディロユは建設ギルドでしたね」


「覚えなくていいぞ。それより木の葉落としだ木の葉落とし」


「建設ギルドなんていかにも組織犯罪と関わりありそうですよね」


「覚えなくていい」


 覚えなくていいらしい。今日はしっかり寝ておこう。

 明日から、俺の戦いが始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ