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なんで俺が、メイド科に!?  作者: LOVE坂 ひむな
第二章 世界分割の巻
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商人ロゾフ2

「貴様ら! 何奴!!」


 戦場をのんきに歩いていると、呼び咎める者があった。


「やれやれ、物騒なことですね」


 まあ戦場が物騒なのは当たり前だ。ちょっと言ってみた。


「どうするんだ? ロゾフさん、何か身分を証明して通してもらうためのものとか」


「ありますが、ここは力で押し通りましょう。圧倒的暴力を見せておけばあとで取引が楽になります」


 発想が暴力に慣れた人間のそれだった。商人として生きていく上でも色々あるのだろう。目の前の兵士をぶちのめし、大将の元へ案内させた。


「誰かと思えばロゾフどのか。いつか預けた紋章はどうした。あれを出せばすぐに通したものを」


「はは、イェク・クジョイ総大将。調子に乗らないでいただきたい。」


 調子に乗っているのはお前じゃないのか。この商人すごいな。気分を害すると最悪の場合一つの軍隊が丸ごとかかってくる相手だぞ。


「相変わらず面白い男よ」


 これでかなり好印象らしい。戦狂いの考えることはわからんな。


「——ふむ。従来は精密な炸裂魔術の制御を必要としていた兵器である砲が、誰でも使えるものになるということだな。その上小型化も可能であると」


「話が早くて助かります」


 炸裂魔術によって砲丸を打ち出す砲は、高位の魔術師を含んだ四、五人がかりで運用できるものだった。精密な制御ができる魔術師はそうそういるものではない。それが普通の人四、五人で使えるようになるというだけでかなりの進歩である。

 それに加えて、威力が多少落ちてもより少ない人数で使えるようになれば、戦力は飛躍的に伸びる。そもそも大砲の威力など、城攻めならともかく、対人戦では過剰なものなのだ。


「さらには砲丸に火薬を詰め、着地と同時に炸裂させることでより高い威力を実現することもできる」


 電電先生が付け加える。着地と同時に炸裂する砲丸というものも、これまでになかった訳ではない。しかし炸裂や爆裂の魔術を付与するのはかなり高度な技術で、そのような使い手は非常に稀である。


「よし。擬硝石を買い付けようではないか」


「ありがとうございます。今後ともぜひご贔屓に」


「そうさせてもらう。お前の商品は他にないものばかりだからな」


 この人他にも色々独占しているのか。なかなかの商人だ。無事に取引を終え、俺たちはクジョイに見送られて立ち去った。


「今回はさらっと運びましたね。この辺で世界が崩壊して次ですかね」


「いや、まだ終わりではない」


「ああ、まだ終わりではないとも。この後は別の氏族にも火薬とその扱いを売り込みにいくのだ」


 死の商人だった。争いを激化させて利益を貪ろうというのだ。


「ミコトさん! 電電さん! いいんですか!? こんなのを見過ごして!!」


 巫女ラチャラチーは怒りを表明する。宗教倫理の観点から思うところがあるのだろう。そう敬虔でなく道徳的でない人間でも、大量死を起こして儲けようなどという話には普通眉を顰めるものだ。


「よくはないな。あいつをそういった道徳に目覚めさせるのはすぐには無理だろうから、利益という視点から説得してみるか」


 多分電電先生の考えは、人間としてどうとかではなくて、さっさとヴェルベッラが統一されないと困るというところだろう。あとは統一された直後の国が諸々の処理に追われて十分な力を持てないと外から叩き潰される懸念があるとかか。


「商人どの。この地での戦争が泥沼になれば兵器や火薬が売れると考えているようだが、私は異なる意見を持つ」


「ほう? 拝聴しようか」


「クジョイたちに銃砲の圧倒的優位性を使ってこの一帯を統一してもらった方がいい。多くの人口を抱えて他世界に侵攻するなら、ずるずると内戦を続けるよりも火薬の需要は増えるだろう。それに他の氏族には先のとは別の世界と繋がりを持っているものもある。彼らが火薬をその諸世界から仕入れ出せば、独占による優位は失われよう」


「一理あるな」


「ロゾフどの。私をデデリ城御前試合に紹介する件だが、その際にデデリにも火薬を持っていけばより儲けを増やせるのではないか」


 デデリ王国で足場を確立する目的か、武人のゾンセがそう言い出す。これはいいのだろうか。デデリ王国に火薬がもたらされると俺たちがあとで困るんじゃないか。


「ふむ。私からはいいとも悪いとも言いかねるな」


 ところが電電先生は反対しない。大丈夫かな。


「次はデデリ王国に向かおう」


「防衛の要であるという巨人の弓の対策もしていないのにですか」


「今回は決戦の時ではない。いくつか準備をするだけだ。この商人と武人についていけば堂々と中に入れる」


 世界が揺れ始める。崩壊しようとしているのだ。


「堂々と入れるのならこれを決戦の時としてもいいのではありませんか」


「このタイミングでは、王国に害をもたらし、滅ぼしたとしてもパソデサ村の破滅を避けるのには直接繋がらない。因果が遠すぎる」


 よくわからないがそんなものらしい。


「よく見ておけ。いずれ決戦の舞台となる、デデリ王国だ」


「いくつか準備をするというのは何をやるんですか」


「鍵となるのはデデリ城御前試合だ。可能な限りかき乱し、のちに強大な派閥を作る者や武勇を振るう者を、王国にスカウトされる前に脱落させる」

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