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なんで俺が、メイド科に!?  作者: LOVE坂 ひむな
第二章 世界分割の巻
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巨人の弓争奪戦2

 墓守に不意打ちが効かなかった。それでもやることは変わらない。召喚術を妨害し魔術攻撃を加えつつ、巫女ラチャラチーが近接戦で削っていく。

 ところが打撃を加えるラチャラチーの手が、止まった。


「ほう、よく気づいたな」


 巫女の手には切り傷が生じていた。よく見れば、空間に糸が張られている。手を止めなければ切断されていただろう。


「召喚獣じゃなさそうだな」


「これはこの洞窟に生息している鋼鉄蜘蛛だよ。飼い慣らしてある」


 召喚術師であるという事実を陽動に使って、密かに召喚したのではない生き物を使役して罠を張り巡らせていたというわけだ。鋼鉄蜘蛛は非常に強い上に見えづらい糸を張る。こうした狭い箇所では厄介な相手になる。


「岩よ、在れ」 


 四方に大岩を生成して転がす。部屋の構造上、最下段へと落ちていく。つまり墓守がいる場所にだ。


「効かない」


 墓守は何も対抗策を取らなかった。不可視の糸で岩は勝手に切り刻まれ、最下段に届く前に石となって崩れた。


「風よ、在れ」


 風が吹き荒れる。石たちが浮かび上がり、部屋の中を暴れまわる。


「砕けろ」


 墓守が呟くと、全ての石が粉々になった。


「もう終わりか」


「いや、まだ始まったばかりだ。周りを見なよ」


「ああ、なるほど。うまいな」


 不可視だった鉄の糸に石の粉が積もって付着し、見えるようになっていた。鋼鉄蜘蛛はそこそこ有名で厄介な生物なだけに、対処法もいくつか知られている。砂などで見えるようにするというのはその中でもっとも簡単なものの一つだ。

 それだけではない。岩を作った時点で、対召喚術の魔術を組み込んでおいた。その粉が舞う中で、墓守は召喚術が使えない。ナルナナナヤンの刃を振るう。先のように同じ性質のナナヤン魚を召喚して迎撃することはできない。墓守の頭上の糸が上から次々に切れ、そして——


「白刃どり、なんてな」


 両手のひらで挟むことで止められた。驚愕を隠し切れなかった。これ止められるものなの!?


「知らなかったか。予習が足りていなかったようだな」


 墓守は刃を掴んだまま俺ごと振り回そうとする。力が強い。このまま振り回されれば、鉄の糸によって細切れにされてしまうだろう。やむなくナルナナナヤンから手を離す。


「素直だな。では、これで形勢逆転かな」


 墓守が持ち手を手繰り寄せ、ナルナナナヤンをこちらに向ける。これはまずい状況だ。結界強度を元に戻せばリーコが外に出てくるだろうが、それで事態を把握して相手を殴り倒すよりは刃が振られる方が早かろう。


「手助けしてやろう」


 電電先生の涼やかな声が響く。直後、墓守は「がっ」と声をあげ何かに弾かれたようにナルナナナヤン刃を落とした。先生は今明らかに点穴とか関係ない技を使ったが、まあ気にしている余裕はない。ラチャラチーが走り寄り、墓守を殴り飛ばして刃を拾う。そして素早く振るうと、墓守は切り裂かれて砂となり消えた。


「やりました!」


「見事ですね。ところで先生、さっきの何ですか」


「あー、点穴だ。空間の、点穴を突いた」


 もっとマシな誤魔化し方できないのかな。何だよ空間の点穴って。


「ワッハッハ、俺たちが出てくる前に攻略してしまったか」


 そうしているとリーコたち三人が現れた。


「あの程度の結界ならすぐ破れると思ったが、意外と手こずったようだな。おかげで援軍がなくて苦戦したなー」


「抜かせ。それよりお宝の分配だ。話し合いを始めるぞ」


 右の拳を左手のひらに繰り返し打ちつけながら言う。そのジェスチャーって話し合いを提案しながらやるやつじゃなくない? 


「ふむ。宝の分配というか我々は破壊しようと考えていてな」


 電電先生の言葉に対して、リーコは鼻を鳴らした。


「これほどの武具がそう破壊できるか。火口にでも放り込まなきゃ無理だ。何にせよ一度持ち出すことになる。ともかく俺たちとお前たちがそれぞれ何を持ち出すかの話だ。とりあえず目的を聞かせてもらおうか」


「そちらから話してはいかがですか?」


「この話し合いは暴力を背景にしているということをお忘れになってはいけませんわね」


 毅然として問い直す巫女に、ィディヤ嬢がさらに毅然として脅し返す。


「えー、か弱い乙女に手をあげるのかよ」


「ほう、自ら質問を受ける者として名乗り出るとはさすがだ」


 茶化すと、次の瞬間にはリーコが目の前にいて俺の左手小指を握っていた。


「とりあえず質問の前に一本やっておくか」


 パキッ


 流れるような動きで暴力を振るう。手を引っ込める間も無く、リーコは俺の左手薬指を握っていた。


「ああ、気のすむまでやればいい。この程度なら治せるし、心頭を滅却すれば痛みも感じない」


 以前金的だの百叩きだの痛い目に遭うことがあったので、痛みを無視するすべを身につけておいたのだ。役に立ったな。


「ふむ。つまらんな」


「ああ、かわいそうに! ミコトくんがこんな目に遭うのは見ていられないから私が話そうではないか」


 何を思ったか芝居掛かった口調で電電先生が語り出す。


「そこにいる巫女ラチャラチーの村を守るのが目的だ」


「うーん、村を守るために武具を破壊するっていうことは盾系ではなさそうだね。槍か薙刀か……一つ一つ訊いていけばわかるか。槍かい?」


「違うね」


「薙刀……何だ? 地響き?」


 先ほどから地響きと揺れが強くなっていっているのを、ズィロ少年が訝しむ。


「何か知ってる?」


「ああ。これほどの武具は火口にでも放り込まないと破壊できないんだろう?」


「まさか」


「山の秘孔を突いた。ここは間も無く溶岩に埋もれる」


 どうやら電電先生は時間稼ぎをしていたようだ。


「さ、逃げるよ」


 そして俺たちは入ってきた道を走って出ていく。リーコたちも一緒だ。リーコは巨人の薙刀を、ィディヤ嬢はスリングショットを、ズィロ少年は弓を持っている。

 術式を行使して弓を叩き落とそうとし……失敗した。


「やっぱり弓か。のちに王国の防衛に用いられる武具だ。すると君たちは王国に攻め入るのかな」


「構うな、ミコトくん。あれが王国に渡ってもリカバリーは効く」


 巨人の弓が王国に渡るのを避けることはできないか。この世界での仕事はうまく行かなかったようだ。地面の揺れとは別の揺れが起こっていることに気づく。世界が終わろうとしているのだ。


「弓の対策は後で練る。次はまた別の案件だ」


 そして世界は崩壊し、三人で次の世界に放り出された。

 海の見える丘にいた。海に面して港町が広がっている。

 電電先生が次の目的を述べる。


「現在ここに留まっている行商人ロゾフ。彼が命を落とすのを防ぐ」

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