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なんで俺が、メイド科に!?  作者: LOVE坂 ひむな
第一章 学園の巻
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再会と再会

 どうして、こんなことになったんだ。君はどうしてこんなことになってしまったんだ。


 僕は極めて長く大きい弓から放たれる魔の矢を魔剣で逸らし、熊に接近する。熊——前世での無二の友スズキ・グシケンに。ミコトの話によると彼は動物使い系の高位魔術【調律】で操り人形と化しているそうだ。しかしそれは彼の目から理性の光が感じられることと矛盾しているとも語っていた。そのような高度な動物には【調律】はおろかその下位の【調教】すら本人の同意なしにはかけることができないという。本人の同意——スズキ、君は悪魔に魂を売ってしまったのか?


 衝撃に耐えかねて魔剣が砕ける。別の魔剣を霊的収納空間から即座に取り出し斬りつける。爪で防がれ、そのまま凄まじい力で押し返される。力に抗わず軽業のようにバネを使って体を動かし、体勢を立て直す。スズキを見ると矢を引き絞っているところだった。もう一度魔剣を犠牲にして近づくのは筋が悪い。向こうの矢が尽きるより先に魔剣のストックがなくなるだろう。


 そこで魔剣を投擲した。僕は伏せて矢を回避し、スズキは爪で魔剣を弾こうとして——爪が触れた途端魔剣は爆発した。爆裂魔術を付与していたからだ。これが最初の有効打となった。がその直後傷が治って元どおりになっていった。スライムなどのような自己再生ではない。白魔術を用いての治癒だ。難敵を前にして、顔に浮かんだのは笑みだった。


 ——俺たち、生まれ変わってもきっと一緒だぜ


 ——僕は——あいつにもう会えないぐらいなら、炎に包まれて死んだ方がマシだ


 ——前世の記憶が蘇る。楽しい日々と突然の悲劇、そして後追い転生——そうした感傷はしかし今は無用のものだった。目を閉じてまた開く。ただ戦いたい。強い相手を倒したい。スズキと戦わなければならないのが悲しいというのも本音だったが、戦っていて楽しいというのもまた本音だった。ならば今は宿命にしたがって踊るのも悪くない。


 そうして剣を振り、矢を躱しているうちに気づいた。


「支配が、弱まっている?」


『さあな。だったらどうする。戦うのをやめて仲直りでもするのか』


 スズキが体の前に文字列を表示する。熊の口では喋ることができないので脳をアストラル何とかに繋いで構築した文を現実に投射しているんだろう。


「いや。お前とは本気で戦ってみたかった。今回も結局殺し合いみたいにはならなさそうだが、それでも決着が着くまでは続けてみせるよ」


「おそらくは戦いの中で白魔術を続けて行使し神を降ろした状態に近づいたことで支配に対する抵抗が強くなったんだ。このまま武闘という魔術儀式を続ければ完全に断ち切ることもできるんじゃないか」


 ミコトが分析する。ちょうどいい。——やってやるか。


「改めて名乗ろう! 僕はズィロ・ボロフ! 前世の名をタカハシ・コジマというヘパイストス型転生者だッ!! 固有魔術【武器錬成】で生成された魔剣を食らえ!!」


『俺は現世の名をレレブヌメーア、前世はスズキ・グシケンというアルテミス型転生者だ。戦闘用の固有魔術はないが——よろしく頼む』


 ——そして小一時間後、僕たち二人は共に全力を出し尽くして大の字に倒れていた。


『——なぜ調律を受けたかだって? こんな姿に生まれ変わってヤケになっていたんだよ』


『それでもタカハシはちゃんと再会を喜び、そして戦いを悲しみかつ楽しんでくれたな、俺がこんな風に堕ちても』


「——君は、どんな姿になっても美しく気高いとも」


『どうやらお前も前世から変わっていないようだな』


「あはは——」


『ハッハハ——』



 なんかいい話っぽく終わったのでよかった。前会った三下の話だとあとゴズとメズとかいうのがいたはずなのでこの戦力が削がれているタイミングで襲ってくるかと思ったら襲ってきたのでラースラーと共に難なく撃退した。ユルクロニは分体だけで俺より高い能力値を持っていたのに配下が弱いんだよな。


「さて、一件落着だな。帰るか——」


「待て。お前には、銃士を押し付けて来た罰を、受けてもらう。百四十四叩きだな」


 え。熊射手は何とかなったのに?


「お前は熊相手に、何もしていないだろ。膝の上にうつ伏せになって下穿きを脱げ」


 そして抵抗も虚しく組み伏せられてしまった。林に小気味よい炸裂音が響く。受けている方としては全く小気味よくないが。


「痛っ——今のっ! さっきまでの三倍強かったから三カウント進めてよくない?!」


「やかましい、一から数え直せ」


「ああ畜生——」


 そうやって何かにつけてやり直させられたり目標数を増やされたりしつつ何とか耐え抜いた。四百ぐらい叩かれた。ていうかこいつ絶対楽しんでただろ。


「これで終了だ。お礼はちゃんと言えるかな?」


「——ありがとうございました」


 帰って回復をかけて寝た翌日。


「ユルクロニ・リェキだ」


 黒幕がアパルトメントにやってきた。夜襲をかけたりしないのは正々堂々戦っても勝てるという自信からか。


「あなたの潜在能力はこんなところでこんなことをやって腐らせておくには勿体無い——正しく使える私に使われた方がいいのだ」


「大きなお世話だな。俺がメイドやるのも俺の勝手だろ」


「いやいや、強きものはその力をキチンと世のため人のために使った方がいい。だから私は君の魂を前世の肉体に嵌めて操り人形としようと思う」


 どうやら和解のしようがなさそうだった。


「なんだ、ただの敵か」


「ううむ、理解してもらえないなら仕方がない。実力行使といこうか——ん?」


 ユルクロニの体が傾いで、受け身も取れずに地に伏した。背後から致命的な攻撃を受けたようだ。そのまま灰になって消えた。最近、問題の方が勝手に解決されてくれること多い気がするな。


「祈っても届かなかったのが、自分から動いてみれば簡単に成就するものだな」


 攻撃者は狼の頭と体毛をもつ人型の存在——人狼だ。それも前世で見覚えのある個体だった。


「どうやら俺の両手は拳を握るためにあるらしい」


 【月を見る人】——リーコ・ラオランゴというかつての友がそこにいた。


***************


「お前はっ! ずっと俺の目標であり続けたお前はっ! なんで生まれ変わってまでメイドごっこなどっ!!」


「最強だから冒険ができない、だから転生して冒険者に、その結果がメイド騎士? 人生一個張ったギャグにしては面白くなさすぎるぞ——!!」


「まさか気づいていないのか——? なんでお前がメイド科になんか行くことになったのか、その理由に」

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