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ベジタブル・バトラー・オンライン  作者: 青田 ガリ
1章 大会のはじまり
6/10

究極のゲーマーと究極のベジポン


「な、なんで突然、こんな大胆な変更を……」


 ゴキブリ育成計画を終えたライトは、ファームにも戻ってメールチェックをしていた。

 すると、とんでもない内容のものがとどいていたことにきづく。




【重要 予選二回戦における特例措置について】


 ライト様には、予選二回戦から大会に参加いただけることとされておりました。

 しかし、予想以上にコミュニティからの注目を集めていることがわかったため、たとえ予選であるとしても、ある程度のエンターテインメント的要素を取り入れたいと運営は考えています。

 

 よって戦いをより白熱したものにするために、今回の予選バトルロワイヤルにおいて、「ライト様を含む、ほか二名のプロゲーマーを同ブロックに配分することが決定いたしました。


 三人のプロゲーマーによる三つ巴の争いによって、今回の大会がより盛り上がることと、ライト様のご活躍を期待しております。



 ※なお、特例措置としてこのブロックのみ、勝ち抜くのは『上位二名』とします。







 よりによって、明日がその予選だ。

 前日にここまでのルール変更を行うなんて非常識、なぜわざわざ行ったのだろうか。



「おとーさん、どうしたんですか?」



 どういうわけだかファームに居座っているゴキブリのコックが、俺の周囲をかさかさと飛び回る。



「いや、なんでもないよ。二人プロゲーマーが混じるくらいなら、なんとか戦えるさ。ご丁寧に、勝つのも一人だけから二人に増やしてくれてるしね」


「おとーさんなら、余裕で勝てますよ! ぼくは信じてます!」


「うん。……ありがとう」



 おとーさんは、目の前にいる奇怪な生物についての謎のほうが気になっているのだった。


 コックが来てから、【ファーム内に害虫がいます!!】というウィンドウが常に表示されている。

 このゴキブリのことをさしているのは明らかだ。


 ミラクルゴキブリ。

 こんな異常な特性をもつ害虫がいるのなら、とっくに騒ぎになっていいはず。

 騒ぎになっていないのなら、これはイベント用に最近実装された害虫ということになるだろう。



(うーん。運営の遊び心で実装したにしては、AIが完成されすぎているよな……)


 

 まずコックは、みるからに自我を持っている様子だ。

 意思疎通にまったく齟齬が生じないことからして、かなり高度なAIが用いられていることは間違いない。

 こいつがただのゴキブリだったときには言語を解することはなかったので、おそらく「変態」に伴って得た力なのだろう。


 一応このゲームには、人間と大差ない知性を持つ害虫がいくつか存在する。


 たとえば現時点のストーリーにおけるラスボス「血に飢えた赤猪 レベル250」なんかも、テレパシー的なものでプレイヤーと意思疎通を図ってきた。

 ただの虫とか獣とちがって、言語を解するというだけで「ラスボス」としての格はあがって見えるものだ。


 ……が、それらは「自我があるようにみせている」だけに過ぎない。


 何百かの会話パターンを持っており、うまく組み合わせているだけだ。

 長時間話してみると、必ずほころびが出てくるものである。


 それは、このゲームにおけるNPCも同じだ。

 同じ人間のように見えるものの、やはり話してみると必ず、人間ではないと感じる。

 理屈はライトにもよくわかっていないが、それこそが人とAIの超えられない壁なのだろう。



「あ、ファームにまだベジポンあまってるじゃないですか~。食べてもいいですか?」


「それはほんとに大事なやつばっかりだからダメ」


「くそー、そうだったのかー。じゃあぼく、ちゃんと我慢するね!」



 言っていることはかわいいが、残念ながらこいつはゴキブリだ。

 まるで妖精のように舞う姿と、ゴキブリのカサカサとした姿が、あまりにもミスマッチ。



「ところでおとーさん。おかーさんはどこにいるの?」


 コックがおおげさに首をかしげて見せる。



「レターは自分のファームに戻ったよ。第二予選の準備をしないといけないからね」


「ほほう、第二予選ですか。おかーさんは今日第一予選を突破したばかりだというのに、もう次があるんですね」


「そりゃ、イベント期間も無限にあるわけじゃないからな。多少のハードスケジュールは仕方ない。まあ実のところ、本当に準備しなければいけないのは俺のほうなんだけど」


「おとーさんが使うベジポンって今装備してるやつなんだよね? 武器のほうは分かるけど、防具として着ているベジポンはなんだかみなれない野菜ばかりだね」




 ライトが大会のために用意したベジポンは以下の通りだ。




 まずは、先ほどのテントウムシ退治で投擲に使った、取り回しの良い短剣の『忍刃ニンジン


 次に、打撃攻撃を担当するサブウェポン、『ポテトンファーM』

 

 一回使い切りのグレネードで、主に催涙効果で相手の目をつぶすのに用いる『オニオンボム十六式』



 これだけである。

 それぞれ、『ニンジン』、『ジャガイモ』、『たまねぎ』の最高峰ベジポンである。

 総合的な使いやすさはどれもピカイチであり、レベル99になったプレイヤーならみんな手に入れようとするベジポンたちだ。

 現在の環境では『ほうれんそう』や『モロヘイヤ』のような単純に栄養の多いベジポンが優勢であるものの、強力なベジポンの一角であることは変わらない。


 ただ、逆に言うとこれらのベジポンは『一般プレイヤーでも手に入れられる程度』のレアリティなのである。

 レターが使っている「菜王の憎悪レ=タス」と同じカテゴリだ。

 

 

 実はこのゲームには、本当に少数の、選ばれしプレイヤーにしか持つことの許されないベジポンというものが存在する。


 その名も、「突然変異野菜ユニークベジポン」だ。



 ユニークの名のとおり、この世界に一つしか存在しない、その持ち主のためだけの特別なベジポンだ。

 このシステムこそが、この野菜で戦うVRMMOのもっとも特異な点である。


 

 当然、このベジポンは簡単には手に入らない。



 ある者は、レイドボス害虫の最高級素材を惜しげなく肥料にして収穫した。

 ある者は、気の遠くなるような回数の品種改良を重ねてたどりついた。

 ある者は、自分のプレイスタイルに合わせて、栽培セオリーからはずれたベジポンばかりを作り続ける中で、覚醒した。

 

 突然変異野菜ユニークベジポンを手に入れるためには、常人離れしたプレイヤースキルと、柔軟な発想を持っていなければならない。

 当然これを手に入れるころには、自然とレベルは99になり、ストーリーも完全クリア。

 クエストもあらかた終わらせてある、というように、このゲームをしゃぶりつくした状態になる。


 いうなれば、RPGにおける裏ボスを倒した後に手に入る最強武器のようなものだ。


 当然、その次元の違う性能を発揮するのに足る相手はほとんどいない。

 一応オンラインゲームである性質上、常により強力な敵はリリースされ続ける。

 しかしそもそも、突然変異野菜ユニークベジポンを手に入れられるようなプレイヤーともなれば、別にそれを使わなくても攻略できることはほとんどだ。

 貴重なベジポンをそんなことに消費する必要もない……。



 

 突然変異野菜ユニークベジポンを持つプレイヤーのほとんどはそう考え、大事に冷蔵庫の中で保存していた。

 しかし、たとえ冷蔵庫といえども無限に保管して置けるわけではない。

 最高レベルまで性能を上げた冷蔵庫でも、消費期限を遅らせるだけに過ぎないのだ。

 

 トッププレイヤーたちは求めた。

 自分の心血を注いで作り上げたベジポンの力を、いかんなく発揮させられる場を。




 そして、BBOサラダバーカーニバルでの、「PvP大会」が開かれた。




 当然トッププレイヤーたちは、温存してきた究極のベジポンを使い始める。

 それはもちろん、人類最強のゲーマー、「ライト」も例外ではない。


 天才のプレイヤースキルを補完する最高のベジポンを、ライトはかなり高い精度で実現させていた。



「おとーさんの服、すごくいろんな種類のベジポンをあわせて作ってあるね。だけど全部、あんまりみたことないマイナーなベジポンだね」


「確かにマイナーだな。とても優れた性能を持っているのに、今この世界では活かせてるプレイヤーがほとんどいない。不遇野菜ってやつだ」



 ライトは自分の服をなでながら立ち上がった。

 興味深そうに自分の周囲を飛び回るコックに目を向ける。



【ミラクルゴキブリ レベル0】


 あまりにレベルをあげすぎてオーバーフローしてしまったらしいコック。

 ライトにとっては明らかに、怪しい数値だった。


 


「あのさー、コック」


「どうしたの、おとーさん?」











『中辛の拳ッ!!」


 ライトは右手を金色に発光させ、コックにつかみかかる。

 完全に予備動作のない、正確なつかみかかり。


 たとえAIといえども反応しきれずにつかまれ、そのまま握りつぶされ……



「ひどいなあ、おとーさん。ぼくはわるいゴキブリじゃないよ?」



 握りつぶされ……はしなかった。


 コックの全身から白いオーラのようなものが放出されており、バリアのように全身を覆っている。

 ライトの発光する右手は、それによって受け止められていた。



【ミラクルゴキブリ レベル999999】



「いくらおとーさんでも、無理だよ。この圧倒的なレベル差補正の前では、どんな攻撃も僕には通じない」


 勝ち誇ったような顔のコックに対して、ライトはすずしい顔をしていた。

 それどころかその顔にはどこか、笑みがこぼれていた。



「なるほどね。自在にレベルを操作する能力か。こいつはおもしろそうだな……」




 そうライトがささやいた瞬間、コックはある雰囲気を感じた。

 どれだけのレベル差があっても、コンピュータによる演算能力があっても、絶対に勝つことができない、ライトという男の異常性を。





――――――リアルスキル、『究極のゲーマー』発動!!


______ユニークスキル、「?????」発動!!






 その二つの反則的な能力が発動し、交わった瞬間、



「あ、れ、そんなはずが……!」




 コックのまわりを覆っていたオーラは、完全に消滅していた。

 コックはへなへなと漂い、そのまま地面に不時着する。



「なかなかおもしろかったよ、コック。これでわかった。お前では俺を殺すことはできない。あまりにも危険だったらここで駆除しておこうかと思ったが、その心配はなくてよかったよ」


「あ、あはは、やっぱり、おとーさんはバケモノだよぅ……」


 全身を「黄金色」に発光させ、ライトは空気を砕くような圧力のあるオーラを放つ。

 その力を目の前にして、コックの親への反抗心は急激にしぼんでいったのであった。


 


 ミラクルゴキブリとはどのような害虫なのか?

 

 それを圧倒したライトのスキルとはなんなのか?


 ライトが持つユニークベジポンは何なのか?


 


 全ての疑問を置き去りにしたまま最強の男が動き始める。



 予選第二回戦の日は、翌日に迫っていた。

長い前置きでしたが、次回からやっと大会の始まりです。

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