エピローグ2 ???
今回はネクさんのお話です。
*ネク視点です*
<元の世界>
私はかつて日本という国で大学生をしてた。年齢は丁度成人した頃だ。酒を飲める年齢となり、大学のコンパで堂々と大手を振って飲めると自分の許容量以上飲んでしまった。
私はふら付くほど飲んでいた。足取りも危なげで真っ直ぐ歩く事が出来ないほどだ。恋人や仲の良い友人でも一緒に居れば送って行って貰えたのかも知れない。その時はたまたま両方共欠席していた。
私は左右に揺られながら帰り道を歩いていた。そしていつの間にか車道まで出てしまっていた。気が付いた時にはもう遅い。自動車が目の前まで迫っていた。そして私はそのまま意識を失った。
<先の世界>
次に私が目を覚ました時は、手足が動かなかった。余程大怪我をしたのかと思い目を開けてみるが天井しか見えない。首も動かないようだ。恐らく重症なのだろう。しばらくは看護士に迷惑をかけながら眠ろう。
それから数週間経過した。まず、私を見る人たちが日本人ではない事に気が付いた。髪の色、顔の造り、全て日本人とは異なっていた。また言語は聴いたことがない国の言葉だ。私自身大学で言語は3種類は学んでいたが、それ全てと異なる。
抱き上げられた時は手足が欠損してしまい軽くなったのだろうかとすら思った。だが私の手を見るとかなり小さくまるで赤ん坊のようだった。もしかしたらゲームや小説であるような転生をしてしまったのかもしれない。
それから半年ほど過ぎる。首も据わり、周囲を見渡せるようになった。どうやら私が住んでいた世界とは文化が違うようだ。家電製品が一切ないのだ。代わりに剣や杖が見える。どうやら剣と魔法の世界に転生してしまったようだ。
それなら話が早い、この世界で楽しんで生きてやろうと思う。まずは必要な言語を覚える、次に魔法を使ってみたいと思う。
それから更に2年ほど経過した。言語の書き取りもマスターし、ようやく魔導書を読める段階まで来た。だが、途中大きな誤算があった。何と私は女に転生してしまっていたのだ。鏡はないが、剣に映った私の顔は可愛らしくなっていた。恐らく将来は美人になるだろう。自分が美人になっても仕方ない気がする。
魔導書だと思って読んでいたらどうやら神聖魔法が載っている聖書だった。両親は敬虔な信者だったのだろう。この頃に初めて魔法が成功した。神聖魔法だった為、回復魔法だったのは残念だったが、家の周囲の植物を元気にしていった。
それから更に3年経過する。私は自警団員である父に剣を教えてもらっている。とは言えまだ子供である。そこまでまともな訓練は出来ないので基礎体力作りをメインで行っていた。そしてその年に私が神聖魔法を植物に使っているのが両親にばれた。
両親は驚き、私を神父様の元へ連れて行って相談をする。すると神父様は私を神官戦士にするのはどうだろうか、と提案してきた。まだ5歳の子供になんて事を言うのだろうか。だが、その言葉に両親は乗り気になってしまう。そして私は5歳にして神官戦士の養成所へと預けられることになる。
養成所に預けられ半年が経過する。同期どころか数年先の先輩たちまで勝てないほど私の鎚と盾、神聖魔法の技術は向上していた。半年程度で修了課程を終えてしまう。そして私は6歳という最年少の年齢で神官戦士へと就任した。
最年少で神官戦士になったとは言え6歳だ。権力者からは疎まれた。そして私は辺境の町へと赴任する。そこには気のいい住人と、歳はさすがに離れていたが、私を子供ではなく1人前の神官戦士として扱ってくれる頼もしい同僚がいた。皆4,50歳であったが。
それから数年、周辺の魔物やアンデッドを同僚たちと殲滅し、町の平和を守っていた。もっと都市部には冒険者ギルドというのがあるらしく、そこでは私たちのような神官や自警団ではなく冒険者や騎士が守っているらしい。つまりこの町は人手不足というわけだ。
この頃に妖精と友達になった。森に住んでいる種族で人前には殆ど出て来ないらしい。私が子供の外見をしているからか警戒をしなかったようだ。その妖精は魔法、強いていえば結界に関する魔法に凄く詳しかった。結界魔法なら攻撃魔法と違い世界のバランスを揺るがすほどではないだろう。この戦闘ばかりで退屈だった日常を変えてくるかもしれないと教えてもらいながら研究を始めた。
そうして危険ではあるが、充実した日々を送るようになった。結界の魔法は同僚に知られる事になり、度々協力もして貰った。現在ある結界魔法より遥かに良い物が出来てきたと思う。これからは効果時間を延ばす研究に入る。
ある日、定期的に会っていた妖精が私に言ってきた。そろそろここを離れなければならない、と。何でも上位精霊候補だったとか。上位精霊というモノは良く解からないが、その姿に変わる所を見て欲しいんだそうだ。数少ない友人のお願いだったので承諾し、彼女は人と同じくらいの身長の精霊となった。そして私に別れを告げると森から去って行った。調合法を置いて。
そして私が10歳になった時だ。町の緊急用の警笛が鳴り響く。何事かと集会所に集まると魔物が大量にこの町へと迫ってきているらしい。恐らく私たちの戦力では勝つ所か時間を稼ぐ事すら難しい数だ。住民の避難の為、私たち神官戦士と警備団は前線で戦うらしい。
最初、同僚たちと警備団の人たちは私に住民と逃げるように言ってきた。まだ10歳で死地に向かう必要はないだろうと。私とて4年もここで住んでいたのだ。この町に、住人に愛着はある。護りたいとも思う。折角の申し出だが拒否させて貰った。
同時に私は提案する。大規模な神聖魔法を使ってみないかと。大規模な神聖魔法とは儀式を使った魔法だ。準備や人数が必要になる。神官戦士数人では発動できないような魔法だ。だが、幸い私は魔力が普通の人の数百倍あるらしい。それだけあれば大きな儀式魔法も使えるだろう。
勝機があるのなら、と皆賛同してくれる。私は養成所の教官に教えてもらった魔法陣を描き、私を中心にして大規模な魔法を完成させる。そしてそれは魔物の集団を焼き払った。だが、そこに誤算があった。そこには魔王と呼ばれる魔物たちの王が居たのだ。
魔王は単独で突入してくると、私や同僚たちと対峙する。私たちは文字通り命を懸けて戦った。同僚たちは1人また1人と散っていく。私は自分の無力を嘆いた。持てる魔力を全て使用し魔王へと最大の攻撃魔法を放つ。それが魔王に当たるのを確認すると私の意識は無くなる。
<この世界>
私はどうやら彷徨っていた所をスズキという男に使い魔にされたようだ。自分の身がスケルトンになっていた事には驚いたが、どうやらまだ生きているらしい。それにしても鈴木とは。また元の世界の住人に会えるとは思わなかった。
私が神官戦士をしていた町はどうなったのか気がかりだが、現在知る方法はない。今はこの不器用で間抜けな男と一緒に過ごしていくのも悪くない、と最近は思い始めた。この感情が10年間女として過ごしてきたからなのかは知らない。知ったとしても私はスケルトンだ。どうしようもないだろう。
願わくば長くこの男と一緒に居たいものだ。
そして私は驚愕する。先の世界とやらが私が転生した世界であった事に。
本来は養成所に入るのが12歳くらいで早くて15歳くらいに卒業です。




