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迷宮と掲示板  作者: Bさん
最終章 ラストダンジョン
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63話

「ねーマスター。テレビの映像を残す手段ってないのー?」


 コタツで休んでいるとタリスが間延びした声で聞いてくる。相変わらずである。


「ん?元の世界ではビデオとかレコーダーがあったが、ここだとどうなんだろうな」


 今はビデオなんて使わないが、子供の頃は良く見かけたものだ。HDDレコーダーが便利すぎてすぐに移行したが。


「マスターお願いー残したい番組が多いのよー」


 探してみるか、とコタツから立ち上がりパソコンへと向かう。娯楽品の一覧から映像関連を選ぶとビデオが見つかった。HDDレコーダーの類はないのか探してみたが一切ないようだ。テレビがブラウン管の時点でお察しだろう。ここの管理人は何時の時代の人なのだろうか。


 俺はビデオを購入し、テレビの所へもって行き設置する。


「それがそうなの?使い方を早く教えて」


 タリスが言ってくる。教えようと思い機材を操作していると忘れ物に気が付く。


(あ、テープが必要なんだっけか)


 HDDレコーダーの時は保存媒体がなくてもHDDに保存すれば済む話だったのですっかり忘れていた。


「まだ用意するものがあるから少し待ってくれ」


 俺はタリスにそう告げると再度パソコンへと向かう。テープ、テープと探しているとアレを発見した。AVである。ここでオーディオビジュアルとボケる真似はしない。アダルトビデオである。男なら大体世話になっているアレである。


 ハーレム築いてそれはないだろう、と思うかもしれない。だが、それはそれ、これはこれだ。ラインナップも古今東西メジャーなものからマイナーな物まで素晴らしい程揃っている。ここの管理者は一体何者なんだろうか。


 嬉々としながらリストを見ていると背後に誰かの気配を感じた。


(やばい!)


 そう思い慌ててパソコンの画面を変更しようとするとマウスを持つ手がガシッと捕まれた。


「へーこういうものあるんだー」


 タリスだった。呆れたような声で言ってくる。凄く気恥ずかしい。レンタルビデオ屋のAVコーナーに女が1人迷い込んでた時くらい気恥ずかしい。


「ああ、録画できるからな。需要と供給という奴だ」


 そう平然として言いながら、冷や汗を凄くかいている。正直、さっさとこの話を終えて何も入っていないテープを買って戻りたい。恋人に特殊なAVを見つかって引かれているそんな感じに良く似ている。


「ねぇ、一緒に見てみようか」


 耳元で囁かれる。冷や汗が止まる。別の意味で心臓がドキドキする。


「ああ、そうしようか」


 見ることよりも先の事を期待して同意する。今までの焦りはなんだったのだろうか。単純なものである。


「んーどれにしよっかなー」


 タリスが選ぶ。俺も何を選ぶか興味が湧き一緒に見る。


「よし、これだ」


 タリスが選んだAVは……スケルトン愛憎の果てに。


(タリス……お前はどこへ向かおうとしているんだ……)


 いや、むしろこのAVは何なんだろうか。


(スケルトンが対象ってネクロフィリアどころの話じゃねぇ。どうやったら性交が成り立つんだよ。むしろこんなAVを置いておく管理者は何者なんだよ)


 かなり困惑する。パッケージを良く見ると年齢制限があるホラー映画だった。色んな意味でホッとする。AVじゃなくてよかった。変態の俺でも骨は無理である。


「それじゃ、見よっか。ティアを呼んで」


 タリスが明るい声で言う。お前は鬼か。


(ティアが夜トイレに1人で行けなくなったらどうするんだ。ここにはリアル骨がいるんだぞ?)

 

 そう考えて途中でハッとなる。


(トイレに1人で行けなくて恥ずかしそうに俺に付いて来てくれというティア。有りか無しかで言えば、有りだな)


 俺は変態である。恥じるつもりは無い。紛うことなきHENTAIである。


「よし、呼ぼう。折角だし皆で見ようか」


 そう言って皆を集めてホラー映画を見る。スケルトンがスケルトンモノのホラー映画を見る光景ってどうよ?と思う。


 そしてその晩、ティアはパステルを連れてトイレに行きましたとさ。



---------------------------------------------------------


「ご主人様、狂王の瞳を使って」


 突然ティアがトチ狂ったことを言い出す。アレは危険だと言うに。


「どうしたんだ?……まさか、満足していないのか?」


 男としてちょっと不安になる。精力増大のお陰で毎晩ハッスルしているつもりだったのだが……。


「ううん、違う。子供が欲しいの」


 ティアが更におかしな事を言う。


(アレ?説明してなかったっけ?)


 使い魔になった時点で主と共に同じ時を過ごせるようになる。老化はせず、肉体的な成長も止まる。ただし、子供は作れない体になる上に、主が死んだら一緒に消滅する。永遠を生きる代償だ。


(さすがにこの状況で作れません、とは言い難いな)


 パステルなら知っているだろうと思い、任せようと呼ぼうとする。


「それはいい考えですね。子供が増えるのは良い事です」


 パステルが先手を取って言う。知っているのにだ。


(こいつ、逃げやがった……)


 説明をするとどうしても悲しませる事になる。だから同意して自分も知りませんでしたと逃げるつもりのようだ。


(参ったな、どうするか)


 悩んでいるとコクがこちらに歩いてくる。来た!空気をコクまない子来た!!これで勝つる。


「おや、コク休憩か?」


 白々しく声をかける。するとコクはドリンクバーから飲み物を取るとこちらへやってくる。


「うん、鍛冶の休憩にね。ティアがやたら興奮しているみたいだけど、何かあったの?」


 よし、上手く誘導された。後は空気を読まない発言してもらうだけだ。


「うん、ご主人様の子供が欲しい……」


 ティアが言う。何度聞いてもグッと来る言葉だ。


「え?使い魔って子供が出来ないんじゃなかったっけ?」


 コクがはっきりという、ひゃっほい。それを聞いたティアがショックを受ける。可哀想だがそれが事実だ。


「……え」


 ティアが絶句していた。ショックが思ったより大きいようだ。俺はティアを抱き寄せると頭を撫でながら慰める。


「ティア、使い魔になると子供は作れないんだ。すまない」


 そう耳元で囁き抱きしめる。フォローはしておかないとな。ハーレムの主も大変である。ティアは俺の胸に顔を埋めると小さな声で泣いている。抱きしめたまま背中をさする。


 パステルの方をみるとどうしようもないというお手上げのポーズ。コクはえっえっと左右を見渡しよく理解していないようだ。相談なく悪い役をやらせて申し訳なく思う。


 そして夜までずっとくっついたまま過ごす。他のこの事を知らないメンバーは何事かと見てくるが敢えて聞いてくる真似はしてこない。リムが対抗して空いた方にしがみ付いてくるくらいだ。


 その夜は狂王の瞳を使用し、燃え上がった。全員に襲われた俺は翌日筋肉痛で動けなくなる羽目になったが……。

倫理基準に引っかからないといいですね。

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