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迷宮と掲示板  作者: Bさん
寄り道
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幕間2 コクと生産技術

*コク視点*


 スズキさんに魔道具の開発を頼まれた。腕を見込んでくれたのは嬉しいけど、1からの開発にどこか僕の心は焦っていた。


「コクさん?大丈夫ですか?」


 隣で作業をしていたクウが心配そうにこちらを見る。


「うん……ちょっと焦っていたみたい。顔に出てた?」


 顔に出してしまったら駄目だろう、と反省をする。


「はい、マスターも無理をするなと言ってましたし、気晴らしに歩いてきてみては如何でしょう?」


 クウが言ってくる。心配までかけてしまったらしい。


「そうだね。ちょっと歩いてくるよ」


 詰まっていた事も事実だ。素直にしたがって散歩に行く。

 スズキさんがパソコンの前で何か見ているようなので近寄ってみる。


「スズキさん、何を見ているの?」


 声を掛けるとスズキさんがこっちを向く。


「ああ、酒を買おうと思っていたんだけど、何がいいのか良く解からないんだよな」


 スズキさんがそう言う。酒のことならドワーフにお任せあれ。


「それなら、これとこれ、あとこれを樽で買うといいよ、どれも美味しいんだ」


 答えるとスズキさんが樽!?とか驚いていた。何かおかしいのだろうか。


「そ、そうか。値段も高くないし、お勧めなら買ってみよう。今度皆で飲もうか」


 スズキさんが言う。使い魔になってから酒なんて飲んでいない。凄く飲みたい。


「それは嬉しいな。やっぱりお酒はいいよね」


 顔に出てしまう程喜んでいると思う。スズキさんは僕の頭を撫でてくれる。


(癖だと思うけど僕は子供じゃないんだけどな……)


 そう思いながらされるがままにしている。嫌というわけでもない。


 鍛冶場に戻ると、クウは居なかった。文字通り羽を伸ばしに部屋に行ったのかもしれない。

 魔道具作成だけでは呼吸の維持までしか出来ない。それでは泳ぎながら水中に特化したモンスターを相手に戦うのは難しいだろう。

 

(水中の抵抗を無くすとなると魔法も使えるかもしれない)


 もちろん魔法を維持するには色んな生産技術も必要になるだろう。スズキさんやクウ、パステルさん、タリスにも手伝って貰うことになるかもしれない。

 

(大掛かりな仕事になりそうだなー)


 日課の鍛冶を始める。何も魔道具の開発だけが仕事ではない。毎日装備品を卸して稼ぎにしているのだ。

 オリハルコンの素材も得たので試作をしながら挑戦している。

 


 翌日、タリスから変な薬の調合を頼まれた。素材だけであれば珍しいくらいだったが、問題はその調合方法だった。

 薬草の種類から照らし合わせてみると魂の変質という大掛かりな秘薬だった。こんな製造方法をどこから入手したのだろうか。

 最近のタリスが悩んでいる事は皆知っていたし、協力出来るならしようと話し合ってもいた。

 

(それがまさか自分を上位種族に変身とはねぇ……凄く思いつめていたんだね)


 その方法を知っていればやろうとする種族は一杯いるだろう。何せそのまま低リスクで強くなれるのだ。

 

(といっても、この方法ではフェアリーだけだからどうしようもないけどね)


 自分自身も上位種族には憧れる。それだけに簡単になれるものでもない。この方法自体を見つけるのにそれだけを研究しても数百年の月日が必要とも言われている。

 この方法をタリスがどうやって知ったのかが気になる。後で聞いてみよう。

 無事作り終えるとタリスに渡す。複雑な表情をしていた。今の種族を捨てるようなものだから色んな葛藤はあったと思う。


 目を1度閉じ上位種族の話を忘れるかのように鎚を振る。今は鍛冶に専念だ。オリハルコン装備も順調に揃えられたので皆に何時渡そうと考える。


(これ以上の装備を作るとなるとどうなるんだろう?)

 

 僕の欲望は絶えない。これ以上の装備を絶対に作ってみせる。



 いつも通り出品を済ますし、タリスとネクとスズキさん以外は皆お風呂に行ったから僕も向かう。

 ここのお風呂は大きいから気分が良い。

 

 明日は色んな生産技術との調和出来るかの検証だ。頑張ろう。


-----------------------------------------------------


 翌日の朝、大きくなったタリスが皆に紹介される。


「タリスよ。大きくなったけど中身は変わってないからよろしくね。上位精霊になったみたい」


 上位種族になるとは思っていたけどまさか精霊になるとは……。一番驚いていたのはパステルだ。自分が普段召喚している精霊が堂々と具現化していたら驚くだろう。

 しかも上位精霊なんて召喚をした事ないと思う。ほぼ伝説上の存在だもの。

 

「まぁ、そういう訳だから今まで通り仲良くしてやって欲しい」

 

(タリスのスズキさんを見る目が怪しい。この2人何かあったね)


 恐らく皆気が付いていると思う。


(まぁ、僕は生産が出来ればいいや)


 生産が生き甲斐であり、それだけで十分楽しい。


-----------------------------------------------------


 今、鍛冶場にはスズキさん、パステル、タリス、クウと僕がいる。パステルとタリスは魔法担当、スズキさんとクウは生産技術担当だ。


「今回、集まって貰ったのは水中戦用の魔道具の開発の話だ。現在コクとクウが水中で呼吸出来る魔道具の開発に成功している。だが、それだけでは水中で戦うのは困難だろう」


 そこでスズキさんは話を区切る。そして僕の方を見る。


(続きはこっちなのね)


「水中で戦う為には水の抵抗を減らさないと武器も体の動きは遅くなると思う。魔法は種類に寄ると思うけど、避ける為には抵抗が少なくないと辛いよね?」


 スズキさんとパステルが頷く。タリスは余り動かないタイプだったから良く解からないようだ。クウは言うまでも無い。


「そこでタリスの風の魔法で自分の体をコーティングとか出来ないかな?」


 水圧を魔法で常に掻き分け抵抗させないように出来るかもしれない、という案だ。


「出来ると思うけど……維持が大変よ?」


 タリスがそう答える。やはり維持が問題らしい。どの魔法も一瞬は発動できても維持をしようとするとその数倍から数十倍の魔力を必要とする。

 探索で数時間かかったらまず無理だろう。

 

「そこで調合との融合かな。スズキさん、何かある?」


 スズキさんに聞いてみる。何だかんだでこの人には調合では敵わない。


「単純に宝石の効果を上げるのであれば……ああ、ここで月樹草か。あれを使えば宝石に溜め込む魔力の量を爆発的に増やせると思う」


 早速案を出してくれる。砕いて混ぜて固めるらしい。いつものようにシンプルだ。


「そうだな、とりあえずはその品物を作ってみよう。それを見て維持できるか判断してみてくれ。翡翠は貰っていくな」


 そういって解散する。クウは出番がなかったが、魔道具の作成はこれからだ。



 しばらくしてスズキさんからその品物を貰う。見た目はいびつだが、凄い量の魔力が内包されている。これを全て消化するには相当な魔法を使わないと消えなさそうだ。


「どうだ?」


 スズキさんが聞いてくる。


「うん、これなら十分効果が期待できそう。スズキさん、これの量産は出来る?」


 僕が答える。後はこれの量産と魔法を使って魔道具に収めるだけだ。現実味を帯びてくる。

 

「ああ、時間はかかるが少しずつ作っていくとしよう」


 スズキさんが答える。次はタリスの出番だ。



 タリスにスズキさんが作ってくれた強化宝石を見せてみる。


「これは、凄いわね。周囲を覆うくらいの風魔法なら3~5時間くらい持つかもしれない」


 タリスが感心したように言う。これでも最大5時間らしい。


「これ以上は難しそうだし、クウと協力して呼吸の魔道具と合わせてみたんだ。これに風の魔法をお願い」


 他の魔道具と合わせた物を2つ用意する。そしてタリスに風魔法を発動してもらう。


「ふぅ……これで出来たと思うわ。後は検証ね」


 思ったよりあっさり出来たと思う。とは言え全員スキルレベル70以上の猛者達だ。

 それをタリスと共にスズキさんの所へ持っていく。スズキさんは強化宝石を作っていた。


「試作品が完成したから効果を試しに行きたいんだ」


 そう伝える。早く試したい気分が逸る。


「そうか、2つしかないのなら俺とコクだな。戦闘は行わない方向でいこうか」


 スズキさんが答える。僕はうんと答え、直通ゲートで5階層ボス部屋までワープした。



 ボス部屋から階段を降り、噂の転移魔方陣の部屋まで進む。


「それでこれはどうやって使うんだ?首飾り?」


 スズキさんが困惑している。


「そうだよ。呼吸と風の魔法を念じてみて」


 使い方を伝えると2人それぞれの周囲に風が渦巻いた。


「よし、行こうか」


 スズキさんの合図と共に魔方陣に入り転移した。



 転移した先は水の中だ。とりあえず、呼吸は出来るようだ。第一段階成功。

 少し手を動かしてみても抵抗は殆どない。斧を取り出し振ってみる。どうやら問題なく攻撃も出来そうだ。

 鋼のナイフを取り出し投げてみると手から離れた瞬間に動きが止まる。手から離れると効果範囲外扱いになるみたいだ。


 斧を振って地面に攻撃してみる。特に問題なく地面に激突して傷を付ける。モンスターへの攻撃もいけそうだ。

 スズキさんも同様に試していたようで親指を立てるサムズアップで示してくる。会話は無理なようだ。

 転移の羽を取り出し、拠点へと帰還する。


「はー」


 思わず息が出る。そうしているとタリスが近寄ってきた。


「検証はどうだった?」


 タリスが聞いてくる。


「検証は成功だな。会話が出来ないからこっちの一方的な命令になりそうだが……」


 スズキさんがそう言う。喋れないのだから指示は指を刺すくらいだろう。


「うん、これ以上効果を持たせるとおかしくなっちゃいそうだからね。ここまでが限界だと思う」


 僕が答える。さすがにこれ以上はパンクしそうだ。


「後は水中戦の練習か……場所がなぁ……風呂場は浅いし」


 スズキさんが別のことで悩みだした。とにかく僕の出番はこれで終わりになりそうだ。鍛冶と彫金に戻れそう。



-------------------------------------------------------


 その夜、魔道具の開発成功のお祝いとしてお酒が振舞われた。この間言っていたお酒を樽で開ける。皆遠慮なくお酒を飲みだす。宴会は過ぎていく。


 3時間後、黙々と飲むネク、畳で寝ているティア、裸で踊りを始めるタリス、何もない方向に話しかけるパステル、ずっと笑い続けるクウ、泣き続けるリムとカオスな空間になっていた。

 

(ドワーフとタメを張れるスズキさん凄いです……)


 思わず丁寧語になってしまう。しばらく飲み続けると僕とスズキさん以外寝てしまったようだ。骨も酔うんだね。

 2人で全員をベッドへ運ぶ。コタツに戻るとスズキさんが僕を膝に座らせ頭を撫で続ける。酔っていない様に見えてかなり酔っていたようだ。

 撫でる手が頭以外にもなっていき、そして2人の二次会が始まる。

モンスターで居た頃は飲んでいた、という記憶だけあります。実際には飲んでいません。


そもそもスキル同士を混ぜ合わせるという発想自体は高レベルにならないと出来ません。


2人の二次会(笑)書いてて笑ってしまった。

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