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迷宮と掲示板  作者: Bさん
5章 空と神殿の迷宮
53/125

43話

 翌日、探索の準備を終え直通ゲートへと向かった。今回の構成は前衛が俺とネク、ティアで後衛がタリス、パステル、リムだ。久しぶりの6人構成である。

 ミーティングで天使は上空で魔法を使ってきて降りて来ないから遠距離で打ち落とす、ハーピーは遠距離か降りてきた所を攻撃、馬はそのまま切り裂くと伝えてある。


 階段を降り、宮殿のような建物を出る。相変わらず綺麗な場所である。ティアはその草原で寝たそうな顔をしているが却下し進む。

 遠くから目視でも解かるくらい上空にハーピーが飛んでいる。大量に居るようだ。皆と共に警戒をしながら進んでいく。第一陣のハーピーが近付いてきた。


 俺は盾を構えて待つ。ネクとティアは弓を構える。後衛3人は魔法詠唱を開始する。俺の出番は後衛に攻撃が行きそうな時に護るくらいしかない。

 後衛に寄ってきたハーピーを剣で斬ったり、盾で殴りながら押し返す。とても地味ながら重要な仕事だ。


 ネクとティアは昨日初めて弓を握ったとは思えないような命中率でどんどんハーピーを撃ち殺していく。後衛組みもまた順調に倒す。

 そうしている内に十数匹居たハーピーはどんどん数を減らし俺の出番は減って行く。勝てないと踏んだのか数体が逃げていく。追い討ちをかけても仕方ないので探索を再開する。


「ネクとティアは問題なく弓を使えそうだな。矢の残りには気をつけてくれ」


 出番がなかったのでリーダーらしい事をしてみる。見苦しいとか思わないで欲しい。


「うん、思ったより使える」


 ティアが答える。自身も手ごたえを感じたらしい。ネクは片手の矢を振り回している。絶好調なようだ。


「さて、探索を再開するぞ」


 いつまでここに居ても仕方ない。箱を開け探索を始める。


 探索を開始して2,3時間経っただろうか、順調に探索は進む。どうやらここにはハーピーしかいないようだ。準備をちゃんとしてきたので、思ったより苦戦はない。

 すぐに探索は終了し、次の階の階段を見つけた。そのまま階段を降りる。

 階段のある神殿から周りを見渡すとハーピーとユニコーンが見えた。生体感知でも同様の反応をしていたので、2階はこの2種類なのだろう。

 ユニコーンなら俺の出番もあるだろうと思いながら探索を始める。


 ユニコーンは角の生えた、ただの馬だった。元の世界では聖獣だったりしたのだが、この世界ではただの角の生えた馬。突進さえ気をつければ今の俺たちには脅威でもなんでもなかった。

 問題なく探索は進む。と思っていた。


「ん?ユニコーンの近くにハーピーが居るな。この2種類のモンスターは同時に来たりするのか?」


 生体感知を使い位置を調べると何故か同じ場所に2種類のモンスターが居る。怪しく思いながらそこへ進む。そこで信じられないような光景を見た。

 モンスター同士が争っているのである。モンスター同士の戦闘なんて普通にあるんじゃないか?と思うかもしれない。だが、この世界では縄張りも食料にする必要もないのである。

 尤も今まで俺たちが見かけなかっただけで裏ではこういう光景があったのかも知れない。


「チャンスだ。このまま同時に殲滅するぞ」


 そう思い仲間に遠距離攻撃をするように指示する。俺は盾を構え来たモンスターのみを倒すつもりだ。敵のど真ん中に突っ込む勇気などない。

 大半を遠距離攻撃で仕留め、ここに来るモンスターは1体もいない。両者殆ど残っていないのにまだ争い続けている。もしかしたらあそこに何かあるのだろうか。

 残りを全て仕留め、モンスターが大量に居た場所を調べてみる。そこには宝石が1つあった。


「何だこれ?」


 手に持って調べてみるが、赤い宝石としか解からない。モンスターも倒したし、箱を開けるか、と思って立ち上がる。

 

「マスター!ハーピーが1匹、凄い勢いで突っ込んでくる!!」


 タリスが生体感知で気が付いたのだろうか。何故1体だけ?と思いながら飛んでくる方向に注意する。目視で見える範囲に来ると仲間たちが迎撃する。

 翼を矢で打ち貫かれ、体を魔法で焼かれながらもそのハーピーは止まらない。何と言う気迫だろうか。

 俺の攻撃範囲まで来たので盾で殴って止めようとするとハーピーはそこで旋回し、俺の攻撃を避ける。その隙に俺はハーピーに両肩を捕まれ持ち上げられる。


「うおあー」


 思わず訳の解からない声をあげる。まさか空を飛ぶ羽目になるとは思わなかった。どうにか剣を回しハーピーの翼を切断する。さすがのハーピーも片翼では飛べないらしく。5mくらいの高さから落ちる。


 受身をろくに取れず腕から落ちる。痛かったが、痛みだけで済んだらしい。俺の体も丈夫になったものである。それでも離さなかった剣でハーピーに止めを刺す。


「主様、大丈夫ですか?」


 少し焦りながらパステルが聞いてくる。


「ああ、大丈夫だ。怪我もない。びっくりしたけどな」


 安心させるように答える。仲間たちは皆ホッとしたようだ。


「しかし何だったんだろうな。原因はこの宝石なのか?」


 誰も解からないであろう質問を誰となく問い掛ける。


「もう少しでこの階の探索も終わる。階段を見つけてさっさと終わらせよう」


 そう仲間たちに指示を出す。各々の返答の仕方で返事を受けると探索を開始する。

 その後、特に問題は起こらず俺たちは3階への階段を見つけ拠点へと帰還した。


----------------------------------------------------


「さて、今日の探索は終了だ。お疲れ様」


 そう言ってパーティを解散する。ネクとタリスはコタツへ。ティアとパステルは先程の現象が気になるのか離れない。リムは自室へ戻ったようだ。

 

「それじゃ、気になっているだろうから、さっきの宝石を鑑定してみるか」


「はい、一体なんでしょうね」


 パステルが答える。ティアは俺の左腕をがっちりと掴んでいる。パソコンへ向かい、鑑定台に先程の宝石を乗せる。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

狂王の瞳

効果

大きな力を持った宝石。

それを飲み込めば使用者に大きな力を与えるだろう。

使用可能種族:人間

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


(スキルか何かを覚えるアイテムか?使用可能なのが人間だけと言う事はプレイヤーのみなのだろか)


 少し考える。モンスターが大量に狙うような宝石だ。強い力を持っているかも知れない。だが、同時に大きなリスクを払うのではないだろうか。モンスターが近寄ってくるとか。


「さて、どうするか……」


 独り言を呟く。


「処分した方がいいと思います」


 パステルが答える。やはりあの光景を見てしまうと危険だと思うだろう。


「うーん、だけどもったいないよなー」


 報告にも上がっていない珍しいスキルだ。覚えてみたい。もしくは効果だけでも知りたいと思う。


「ご主人様、迷うくらいなら使えば?」


 ティアが言う。案ずるより生むが易しである。


「そうだな使ってみるか」


 パステルは最終的に俺の決定には反対しない。俺は宝石を持ちそれを飲み込む。すると少し体が熱くなった。何か変わったのだろうか、ステータスを見てみる。


名前:スズキ

性別:男

種族:人間LV50

職業:プレイヤー

種族適正

なし


職スキル

経験値全体化、テイム、マッピング


スキル

剣術LV50、盾術LV50、軽業LV48、料理LV21、罠解除LV55、調合LV60、精力増大LV89、古代魔法LV7(下位)、生体感知LV55、魔力感知LV50


固有スキル

狂王の瞳:使い魔を発情させる


装備

武器:ダマスクスの剣+10

盾 :ウーツ鋼の盾

頭 :ウーツ鋼の兜

胴 :ウーツ鋼の鎧

足 :ウーツ鋼の下衣

装飾:なし


(固有スキルキター、と思ったら何だよこのスキル)


 使い魔を発情させてどうするんだろうか。意味は解かるが、戦闘とか生産に一切役に立ちそうにない。ステータス画面を横から見たパステルとティアは顔を赤らめる。


「まぁなんだ。これは夜に試すとして、害はないようでよかったよかった」


 と無理やり誤魔化しながら、ちゃんと使う宣言をしておく。覚悟をしておくといい。ちなみにウーツ鋼の品物が一式出来上がったとの事でコクから全員に武具が配布されている。

 いつもの処理に戻る。どうやら5階層は更に収入が良くなるらしい。ウーツ鋼はまだでないようだが。

 処理を終え、ティアに夕飯を作るのを任せる。


「そういえばコクに会っていないな、どうしたんだろう」


 そう思い鍛冶場へ向かう。コクならここに居そうだ。鍛冶場に入ると案の定居た。蹲って何かをしているようだ。


「コク、何しているんだ?」


 何となく聞いてみる。すると驚いたように顔を上げる。


「え?い、いや何でもないよ?」


 コクが慌てて答える。手元の品物を急いで仕舞おうとするが、こちらからは見えた。


「彫金か?」


 見えたのは細工を施した腕輪だった。


「ばれちゃったか……ちゃんと出来るようになるまで内緒にしたかったんだけどな……」


 コクが答える。職人として未熟な腕を見せたくなかったのだろうか。


「見せてもらってもいいか?」


 一応聞いてみる。するとコクは腕輪をこちらに差し出してくる。見た限りでは劣っている部分は見当たらない。見事な細工だと感心する。


「これのどこが駄目なんだ?俺には全くわからないのだが」


 職人のこだわりなんだろうか。俺自身は目利きと言うわけでもないので迂闊な事は言えない。


「んーなんかもう1歩足りないんだよね」


 ふーむ、そういえば宝石のカタログみたいなのがあった気がする。本でもカタログは要らないだろうと思って前回は取っていない。

 

「参考になるかもしれない本があるから見てみようか」


 そう聞いてみる。すると


「え?ホント!?」


 飛びついてきた。いや、物理的な意味ではなく。


「パソコンへと向かおうか、昨日本を見ててあったんだ」


 そう答え、パソコンへと向かう。


「それなら何で昨日出さなかったの?高いとか?」


 コクが不安そうに聞いてくる。


「いや、そういうのじゃないんだ。俺の世界の品物で、商品を紹介する本とでも言えば良いのか……」


 どういえば伝わるのか解からないから曖昧に言う。


「なるほど、それなら商品がなくても……でも紙も精巧な模写技術も必要になるよね……」


 どうやらすぐに理解をしてくれたようだ。コクはこういった技術や商売に関する理解が早い。


「っと、これだ。宝石のカタログだけど写真は参考になるだろ?」


 そういってパソコンから取り出しコクに渡す。


「ありがとう。凄いねこれ……」


 その場でコクが読みだす。俺はせめてコタツで読め、と言いコタツまで手を引いて連れて行く。集中してしまったようで生返事だ。喜んでくれたようで何より。



 その夜、狂王の瞳を一緒に寝ている3人に使った。人として限界を超えた、とだけ伝えておこう。


狂王の瞳はレアスキルです。以前出た魔眼と同様ですね。

レアスキルとは効果も様々で、いい物もあれば微妙なものもあります。

入手が困難だからレアなんですよ?

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