37話
*タリス視点*
マスターは捕獲したヴァンパイアのアイテムを持って牢屋に行った。
(またメンバーが増えるのかな……)
メンバーが増えるという事は迷宮に連れて行く面子から自分が外される可能性があるという事だ。
コクはフェアリー専用の鎧を作ってくれたが、自分自身が敵の攻撃に耐えられるほど防御があるとは思えない。
いつかメインのメンバーから外される時が来るだろう。
「はぁ……」
ため息をついてしまう。隣で裁縫をしていたネクはそれに気が付いたようだ。ノートに何か書き込んでいる。
『どうしたの?』
ノートにそう書いてあった。
「え?」
ネクが文字をかけるなんて知らなかった。ましてやスケルトンにそんな知能なんてないと思っていた。
「あ、うん。ちょっとね」
動揺と一緒に誤魔化してしまった。ネクはこちらを心配そうに見ている。なら相談をして見よう。
「あたしってフェアリーでしょ?今は何とかなっているけど、その内戦闘の役に立てなくなるかも知れない。その時あたしってどうなるのかなってね」
『マスターなら何か仕事を与えてくれると思うけど』
そう書いてくる。恐らくそうだろう。放逐したりはせずに何かしらの仕事をくれると思う。
「それでも不安なんだ。ただ何もせずに相手もされずにされるかも知れないって考えちゃってねー」
笑いながら流して欲しいという意思を込めて言う。ネクは何か真剣に悩んでいる。
『それなら、大変だけど試したい事がある。それをやる意思はある?』
真剣な感情と共にこちらに文字を向けてくる。
(試したい事?なんだろう)
『上位種族への変身』
書かれた文字を見て驚く。
「え?そんな事が出来るの?」
そんな事は聞いた事がない。一体どうやるのだろうか。
『私の生きていた世界の秘術なんだけどね。妖精を上位の精霊に変える秘術があるんだ』
そんな方法があるのならやりたい。上位の精霊なんて話でしか聞いた事がないような雲の上の事である。
「やりたい。そうればもっとマスターの役に立てる……」
『大変だよ?それでも?』
ネクが書いてくる。
「うん、やり遂げてみせるわ」
決意を表す。どんなに辛くてもやってみせる。
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リムを連れて牢屋から出る。コタツで雑談をしていたネクとタリスがこちらを見て驚く。
(そりゃ驚くだろうな。捕獲した時と全く違うし)
コタツへ移動し、2人に紹介する。そうしているとパステルが戻ってきた。
「主様。この方は……もしかして?」
パステルにも信じられなかったようだ。そうだ、と答えると突然パステルがリムを抱きしめる。
それを他人事のように眺め、互いの名前を伝える。今更パステルの奇行を気にしても仕方ない。
コタツで騒いでいると、ティアとコクが鍛冶場からやってきた。
「この子が新しい子?」
ティアが聞いてくる。肯定の返事をするとコクと共に自己紹介をし合っている。仲良く出来そうで何より。
俺はそのままパソコンへと向かい、いつもの作業をする。
途中、リムのステータスを確認していなかったので、調べてみる。
名前:リム
性別:女
種族:ヴァンパイアLV1
職業:メイジ
種族適正
吸血衝動:血を吸わないと暴走する。
魔法特性:魔法のスキル熟練度が上がり易い
飛行:空を飛べる
聖属性弱化:聖属性に弱い
職スキル
魔力の泉、魔法適正
スキル
杖術LV1、古代魔法LV40(中位)、暗黒魔法LV20(中位)
装備
武器:なし
盾 :なし
頭 :なし
胴 :布の服
足 :なし
装飾:なし
(固有はなかったか。といっても魔法が強いな)
仲間に成り立てでこれは破格である。魔法に特化している種族ならもう1人くらいヴァンパイアが欲しいが、仲間にしたらリムがいじけそうなので止めておく。
コクにリム用の杖と防具を注文すると快く受けてくれた。変な物を作らない事を祈る。
人数も増えたし、ベッドが足りないだろうと思いブランクルーム30畳2500DPと最大級のベッド20000DPを買う。残量はもう殆どない。
12畳の部屋をネクとタリスとコクに明け渡し、30畳の部屋が俺たちのものだ。手を出しているのと出していないので分けるのも何だが、夜のことを考えると仕方ない。
仲間たちにそれを伝えるとぞろぞろと一緒に向かう。
(うわぁ……でかすぎだろ)
30畳の部屋がベッドだけで埋まっていた。少し歩く程度の隙間はあるが、それくらいである。
10人くらい全員で寝ても余裕があるサイズだ。さすがは最大級である。そもそもベッドと言って良いのかも怪しい。
何となく全員でベッドに寝転がる。色んな種族が同じベッドに寝ている光景は異様である。主に骨。
しばらくそんな事をして、夕飯や風呂に入る。1つ1つにリムが驚いていたが、そこは慣れたもので仲間たちが説明していく。
そして夜、寝る前になってベッドに入ると、ティアに襲われた。
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翌朝、目が覚める。やはりというか全員同じベッドに入り込んだようだ。
(ハーレムとか作るつもりはなかったんだがなぁ……)
3人も手を出しておいて今更である。
(さて、今日も頑張るか)
大切な仲間たちの寝顔を見ながらそう思う。
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いつものミーティング中にコクからリム用の装備を受け取る。杖と鎧、兜、下衣、そして何故かマント。冒険者として野営をするのであればマントも便利だが、迷宮攻略では必要ない。
「何でマントなんだ?」
疑問に思ったのでリムに聞いてみる。すると鎧を着込んだリムがマントをバサッと片手で広げ
「フハハハハハ」
とかいきなり笑い出した。なるほど、そういう用途か。アレの後に素に戻ったリムに聞いてみた所、偉そうな口調は身長が小さい事を舐められない為と言ってた。
(こちらから見た時は小さく見えなかったんだがな)
別に体が小さくてもそれはそれでいいじゃないか、とは言わない。本人からしてみたら大きな悩みなのだろう。
しかし、モンスター同士コミュニティーみたいなものはないように見えたのに、そういう風に色々とあるようだ。パステルがぼっちだったように。
気を取り直してミーティングを開始する。
「今日は3階だ。この階層の集大成とも言える数多くの種類のアンデッドが現れる。気をつけて進もう」
レイスはゴーストの上位の為、対処は変わらないらしい。ヴァンパイアは魔法主体なのでリムの時と同じである。複数で現れたりはしないとの事。
「そういえば、どうしてリムは2階に居たんだ?」
ふと気になったから聞いてみた。
「階段みたいなのがあったから登ってきたのじゃ」
リムが当然のように答える。
(え?モンスターって階段登れるのか?)
もしかしたら俺たちは大きな思い違いをしていたのかも知れない。
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3階へ移動し探索を始める。ドラゴンゾンビ以外全て出るらしく、感知では大量のアンデッドが引っかかる。
「扉を開けたら大変な事になっていそうだ……リムは無理をするなよ?」
LV1なので下手したら速攻やられそうだ。
「解かっておる」
自信有りげにリムが返事をする。本当に解かっているのか怪しいが、それ以上問い詰めても仕方ないだろう。
5人で陣形を作り探索をしていく。敵はそう強くなく、問題なく倒していく。ただゾンビの臭いが強烈で精神を削っていく。
それ以外は特に怪しい所もなく3階の探索は終了した。あっさりしたものである。
ネクさん初台詞です。知能が高いわけですから文字くらい書けます。主人公にはその方が面白いので秘密にしています。
でも受肉する予定はありません。
今はコクの装備の販売と毎日の稼ぎで1万の入手があるのでDPには余裕があります。
拡張は徐々に小さいのを買いならながらやるよりも、それなりに溜まってから高いのを買った方が無駄が省けます。




