ティア
*スズキ視点*
「ティア!」
俺はティアに向かって叫び、オークとティアの間に割り込むように入り込む。何とか盾でオークの棍棒を受け流し、事なきを得る。正気に戻ったティアがオークの背後に回り、オークを一刀のもと斬り伏せる。
「ふぅ……」
俺たちは今、外の世界の資金を集める為に依頼をこなしている。普段であればなんて事ない戦闘のはずだ。そのはずなのにティアは途中でいきなり呆然と立ち尽くしていた。どういうことなのだろうか。
「ティア、どうしたんだ?戦闘中にボーっとして」
死んでも生き返るとは言え、殴られれば痛い。死ぬような苦痛を味わう事だってあるのだ。出来れば仲間のそんな光景を見たいとは思わないし、味わいたくもない。
「ん、ごめんなさい」
ティアはそれだけ言うと黙ってしまう。この前のオマケダンジョンのクリア後から頻繁にこういう事がある。その都度聞いてはいるが話してくれない。俺には聞かせたくない事なのだろうか。
「俺に話せないのは構わないが、一人で塞ぎこまずに仲間の誰かに相談をしてみてはどうだ?」
女同士でしか話せない事があるのかも知れない。ここは俺が出るより他のメンバーと話し合った方が良いだろう。実際、他の仲間もティアの様子を気にかけている。
「うん、そうする」
ティアはそう言うと、こちらに笑いかけてくる。だが、表情は硬く、無理をしている様にしか見えない。そして俺たちは依頼をこなし、報酬を貰って拠点へと帰還した。
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*ティア視点*
ここの所、私は調子が悪い。原因も解からず、咄嗟に動けない事も多い。何か病気になってしまったのだろうか。
(ご主人様に迷惑をかけてしまった……)
それが一番辛い。もしかしたらパステル当たりなら何か解かるかも知れない。
(相談してみよう)
思い立ったら即行動する。パステルを探して拠点内をウロウロする。途中、ネクやクウ、エンと会った。パステルの居場所を聞くと皆知らないらしい。どこにいるんだろう。
パステルの部屋に入ると奥の方でモゾモゾと何かが動いていた。長い耳が見えるからパステルだろう。そう思い近づいてみる。すると、鼻息を荒くして本を読んでいるパステルが居た。見なかった事にしよう。
私はそのまま部屋から出て行こうと踵を返そうとする。しかし、私の侵入に気が付いたパステルに声をかけられてしまう。
「ティア?どうしたんですか」
先程の表情からは思いも付かないほど真面目な表情で聞いてくる。
「相談したい事があったんだけど、本を読んでいたみたいだったから、邪魔かなと思って戻ろうと……」
そこまで言うとパステルは私の視線が持っていた本に向かっていると気が付き、慌てて後ろに隠す。
「いえ、本よりも仲間の相談を優先するのは当然です。本は何時だって読めますからね」
やや冷や汗をかきながらパステルが言ってくる。やっぱり、あの本はご主人様が持っているような本みたいだ。前にご主人様に聞いた時は、聞かないで欲しいと言われた。きっと気にしない方がいいのだろう。
私はパステルを見ると最近の私の状況を伝える。
「ふむ、つまりは戦闘中であっても気が付くと主様の妄想をしてしまったり、主様を目で追ってしまっていると……」
パステルが私の話をまとめる。そう聞くとご主人様の事ばかりだ。思い返してみると確かにそうなのかも知れない。
「パステル、これは病気?」
私は不安な心を隠さず聞いてみる。パステルがそれを聞いてため息を付く。
「失礼、ティアがこういった感情を今まで持っていなかった事に驚きですが、ある意味病気ですね。ただ、それを治せるのは主様のみです」
パステルがそう言ってくる。ご主人様だけに治せるという事は調合で薬を作れるのだろうか。
「そういえば、獣人は感情よりも種の保存を考える為に力ずくで襲うんでしたね。そういう感情は後から付いてくるのでしょうか。ですが、ティアがそういう顔をするのはそれはそれで……」
パステルはブツブツと何か行っていると思ったら、今度はニヤニヤし出した。多分これは放って置いた方が良いのかも知れない。
「パステルありがとう。ご主人様の所に行ってみる」
私はお礼を言い、怪しい雰囲気のパステルを置いてそのまま部屋を出て行った。
ご主人様はコタツで調合をしていた。邪魔するのも悪いから私は遠くからその様子を見ている。そんな私を見たリムがご主人様と私を交互に見ている。一体何なんだろうか。
(そういえば、パソコンで使い魔専用の掲示板っていうのがあるって聞いた事があった。そっちでも聞いてみよう)
すぐにご主人様の方に行けないのならそっちで情報を増やした方が良いかも知れない。パステルの話は肝心な所を聞く前に変なスイッチが入ってしまったみたいだし。
私はパソコンへと向かうと掲示板を開いた。
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使い魔専用スレ part7
という事なんだけど、これは何なのかな?
97 名無しのフェアリーさん
惚気ですか^^#
98 名無しの犬耳さん
どこの猫耳も相変わらずです
油断なりません
99 名無しの猫耳さん
私も同じような悩みを持った事がある
ご主人様に突撃、それで解決
私も行こう
100 名無しの犬耳さん
させません
今の時間は別の人の時間です
101 名無しの猫耳さん
むぅ・・・
102 名無しのリザードマンさん
お前ら、リアルでやれ
103 名無しのフェアリーさん
しかし、あれね
猫耳の種族ってそういうのに鈍感なの?
104 名無しの猫耳さん
そうでもない
ただ、順序が他の種族と違うだけ
体が先
105 名無しのゴブリンさん
それだけ聞くと不純に聞こえるな
動物的な種族という意味ではそうなのかも知れないけどさ
106 名無しのオークさん
あーうちにいる猫耳もそんな感じだったな
マスターが牢屋で篭絡させてた
性的な意味で
107 名無しのフェアリーさん
使い魔になる前からなのね
さすがはエロ要員
108 名無しの猫耳さん
エロじゃない
欲望に忠実なだけ
109 名無しのゴブリンさん
どう見ても
いや、なんでもない
110 名無しの魔王さん
つまり、恋愛感情に目覚めたばかりなのか
私にもそういう頃があったなー
111 名無しの勇者さん
え?いやお前、さっさと降参してたじゃないか
112 名無しの魔王さん
あったんだぞ
10秒くらい
113 名無しのゴブリンさん
短すぎだろ
魔王が長くても威厳を保つとかで困るだろうけどさ
114 名無しの勇者さん
魔王の威厳があったのって最初私と戦っていた頃だけじゃないか?
その後はマスターに従順な姿しか見ないし
115 名無しの魔王さん
言うなぁぁぁぁぁぁ
116 名無しのオークさん
何なんだこいつら
117 名無しのフェアリーさん
まぁ、とにかくこの猫耳ちゃんが患っているのは恋だから
マスターに思いっきり甘えてしまいなさい
118 名無しの猫耳さん
解かった
ありがとう
119 名無しの猫耳さん
ついでに私も
120 名無しの犬耳さん
させません
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私はパソコンの電源を落とすとご主人様の所へ甘える為に向かう。ご主人様はコタツでテレビをボーっと眺めている。私はその後ろから抱きついた。
ご主人様は驚くが、そのまま私を膝に座らせ抱きしめながら頭を撫でてくれる。心はドキドキしているけど、今までの様に嫌な気持ちではない。この気持ちを忘れないように明日から過ごしていこう。そう思った。
掲示板に同じ種族が出ると解かりにくいですね。




