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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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8 すごい才能があった

 いとも簡単にアーシアの手から炎が上がる。


「やっぱり、炎って基礎的なものなんだ……」


 ゲームでも攻撃魔法の初歩って炎系が多いもんな。


「そういうことになりますね。だからこそ、誰しもがここから入るんです。攻撃魔法の習得を禁止されている聖職者なんかを除くと、みんなこれを習います」


 だが、そこでふと疑問が浮かんだ。


「そういえば、火を出す時も空飛ぶ時も先生は詠唱をしてなかった気がするんだけど……無詠唱で魔法って使えるんですか?」


 授業では詠唱なんて不要だとは学んでないはずだが。


「いいところに気付きましたね、さすが時介さんです」


 またアーシアは褒めてくれた。


「実は、これって高位の術者がやれる裏技みたいなものなんです。ほら、わざわざ『焔よ我が指先にカンテラの如く灯るがよい』なんて唱えるの、かったるいじゃないですか。それで、これができる人はついつい省略しちゃうんです」


「高位ってどれぐらいの次元を言うんですか?」


「ヤムサックという教官の方ならやれるとは思いますが」


 逆に言うと、教官クラスにまでならないとできないのか……。じゃあ、まず無理じゃん……。


「ようはとことん意識を集中させることができればいいんですよ。詠唱もしゃべることで雑念を考えられなくして、意識を集中させる手段に過ぎませんから。それで詠唱内容を唱える魔法に近づけることで、発動する魔法をコントロールしているんです」


「じゃあ、詠唱をしたからそれに関する魔法が出るわけじゃないんですね……」


「詠唱と魔法をイコールだと理解している人が多いですが、厳密には違うんですよ。でも、それは今はあまり重要ではないですね。さて、炎を出してみましょう。手を伸ばしましょう」


 俺は右手を突き出すようにする。


「じゃあ、基礎的な炎の魔法、ファイアの詠唱をどうぞ」


「焔よ我が指先にカンテラの如く灯るがよい――ファイア!」


 ついつい勢いで最後に魔法名を言ってしまった。といっても、火の英語名でしかないけど。


 だが、残念ながら何も出ない。


「やっぱり、まだ出ないか」


 冷静に考えればこんなことだけで火が発生したら火事が多発しそうだし、もうちょっと訓練がいるのかもしれない。


「次は、右の人差し指から炎が出るところを想像しながら、その指に意識を向けてやってみましょう」


「焔よ我が指先にカンテラの如く灯るがよい――ファイアッ!」


 すると、ぼわっと、小さな火が指から出た。


「うぇっ? もう、出た!」


「おお~! いいですね、いいですね~! 上出来ですよ!」


 ぱちぱちぱちぱち。アーシアが拍手をしてくれた。


「二度目で成功するとは思いませんでした。せめて二百回ぐらいは詠唱しないといけないものだと……」


「ぶっちゃけ、ここまですぐにできたのは、時介さんの筋がいいからです。そして、私の教え方もいいからじゃないでしょうかね」


 そこは自分も褒めるんだな。実際、教え方、上手いけど。


「指先に集中というのがコツなんですよ。おそらく、学校の教官は漠然と手に力を込めろとしか言わないと思います。それだと力が散漫になるんで、時間がかかるんです。だって、片手の指って五本もあるんですよ。分散だってしますよ」


「たしかに……」


「その点、指先に限定すれば力は集まりやすくなります。しかも、時介さんは直前に私が指先から炎を出した所を目撃しましたね。あれで、イメージは極めて鮮明になったはずです。だから、火を出せたんです」


 なるほどな。アーシアの説明でかなり飲み込めてきた。


「なので、時介さんなりに魔法を使うポーズみたいなのを決めておくといいかもしれませんね。そういう型があると最初の習得が容易になります」


 詠唱をしながら、最後に右足を前に突き出し、同時に右手も突き出すようにしてみた。


 ボワワアアッ!


 さっきよりかなり強い炎が上がった。

 周囲が少し明るくなったぐらいだ。


「うわっ! けっこう大きい炎だな……」


「おお! 本当にすごいですよ! もしかして天才ですか!?」


 この反応はガチっぽい。アーシアもここまでの効果があるとは思ってなかったようだ。


「いやあ、天才は言いすぎなんじゃないですか? あっ……そうか、日本から来た俺達はマナが多いらしいんだ。それのせいかな」


 おそらく、燃料みたいなものが俺達には多く入っているのだ。だから、威力も大きくなりやすい。


「そうですか。異世界から来た人、恐るべしですね。でも、これだと本当にかなり効率よく魔法を使えるようになりそうですね。本格的にやってみましょうか!」


 そして、アーシアによる熱血指導が始まった。


 熱血といってもあくまで熱意があるというだけで、失敗したら竹刀で叩かれる的なものはないが。


 そして――一時間後。


「凍てつく氷の女神よ、我に力を貸せ! 心までも凍らせるために! アイスバインド!」


 俺の指先から一気に氷と霜が混ざったようなものが飛び出して、演習場一帯が凍結した。


「うわぁ……アイスバインドって初期魔法アイスをかなり使いこなしたあとに覚える魔法なんですけど……」


 アーシアはもう褒めるというより呆然としていた。


「まだ一時間しか経ってないんですよ!? こんなペースだったら一週間後には教官の助手ができるぐらいまで成長しちゃいますよ!? どうなってるんですか!?」


「俺に聞かれても困りますよ……。多分、俺のマナが多いとか、先生の教え方がいいとか、それと俺がそこそこ魔法に向いてたとか、いろいろ運が良かったんじゃないですか?」


「どんな強運なんですか……」


 ぽかんとアーシアはしていた。


「じゃあ、空中浮遊――レヴィテーションを今から教えますね。これ、途中で墜落すると危ないからそれなりにマスターできるまで実際の使用は避けてほしいんですけど、それでも時介さんなら十五分もあれば絶対にマスターできますよ」


 空を飛び上がるところをイメージしながら、俺はアーシアから教えてもらった詠唱を行う。


「大地に逆らう鳥の自由よ、今少しだけ我に貸し与えよ――レヴィテーション!」


 ふわりと体が浮き上がった。

 すぐにまた地上に戻ってしまったが。


「やっぱり……。時介さん、イメージを作るのが異様に上手いんですよ。一発目から効果が出るっていうのがおかしいんですから」


「それって、ぼっちだと魔法が得意ってことか……?」


 休み時間とかあまりしゃべらないと、その分、頭の中でごちゃごちゃ考えたりするからな……。


 会話というのはしゃべる相手がいないとできない。かといって、しゃべらない間も思考は続いている。だから、内省的な時間の使い方にならざるをえないのだ。


 すると、ぎゅっと、アーシアが俺を抱きしめてくれた。


「ぼっちじゃないでしょう? 時介さんには先生がついていますよ」


「うわ、それ、先生、反則です……」


 ほんとに惚れちまうよ!


次回は夜に更新します!

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