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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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85 軍人最初の任務

「よし、みんなには成長するためのことをちゃんと教えてきた。それを信じて進んでくれ。必ず、もっともっと上に行ける!」

 それぞれに個別の課題を出して、かなり成績を上げた自信はある。きっと、いろんな分野でみんな活躍してくれるはずだ。


 誰かが声を合わせようといったのか、「「先生ありがとうございました!」」という声が響いた。


 教官やっててよかったな、と俺は素直に思った。


 俺は酒は全然飲まずに会場を出た。

 後ろから、さっと彼女がついてきた。魔法使いは尾行スキルのようなものも一応学ぶから見事なものだ。


「いよいよ明日から軍人ね」

 サヨルが楽しそうに俺の横に並ぶ。


「あんまり危険のない部署だといいな。ちなみにサヨルも軍人の籍は置いてるんだよな?」

 ずっと教官としての姿しか見てないけど。

「まあね。学校が閉鎖されるから、どこかに飛ばされるかも。研究は王都のほうがいいんだけど、王都にいたらいたで時介と離ればなれになるかもしれないし、微妙なとこだな」


 軍人になれば、彼女が王都にいるんで残りますだなんてわがままは言うまでもなく認められない。つまり、俺たちは別れないといけないかもしれないってことだ。


 わかってたことだけど、感傷的な気分で城内の庭を散歩した。まだ、日は出ているけれど、日が沈むのが早い時期だからそこまで明るいという感じじゃない。


 自然と、サヨルは俺に腕をからめた。

 サヨルの体温を感じるのにもいくぶん慣れた。慣れた頃に離れないといけないとしたら、ひどい話だ。


「私が言えることは一つだけ。時介は慎重になればいい。慎重になれば、あなたが死ぬことなんてありえないから」

「うん、注意する」


「本当だよ?」

 ぎゅっと、サヨルが体を密着させてきた。

「時介は少し勢いで走るところがあるから……。私を置いて死ぬとか絶対にダメだからね?」

 サヨルの顔は真剣だ。そして、俺の性格もばっちり見抜いている。


 これまでに何度も不安にさせたよなと、ものすごく申し訳ない気持ちになった。

 俺もサヨルの頭に手を当てて、ぎゅっと引き寄せた。

「ちゃんと誓うから」

「うん、ありがと……」


 吹きつける風はちょっと冷たい。けれど、サヨルといると暑いぐらいだ。


「ねえ、私の部屋、来る? 多少ちらかってるかもしれないけど」

「じゃあ、お言葉に甘えようかな」


 その日は、サヨルの部屋でごはんを食べて、ゆっくり夜を過ごした。



 翌日、俺は一人で軍人になった生徒の配属先発表を見に行った。


 その前に一度、自室に戻って、アーシアを呼び出して話をしたけど。

「いよいよですね、時介さん」


 アーシアの表情も少し涙ぐんでいるように見えた。

「先生とは別れるわけでもなんでもないんだから、もっと楽しそうにしててくださいよ」

「ですが、時介さんは神剣ゼミのカリキュラムをほぼ修了しましたからね。そういう意味でも旅立ちなんですよ」


「修了ってことは、生徒じゃないんですよね。先生と恋愛してもいいんですか?」

「私が精霊だからダメです。というか、彼女いるのにそんなこと言っちゃダメですよ。女の子を泣かせるようなことをしちゃいけません」


 アーシアに怒られてしまった。

 ある面、アーシアが真面目なおかげで助かった。アーシアに誘惑されたら絶対に浮気してたところだ……。


 さてと、フラットな気持ちで配属を見に行こうか。


<島津時介、特務魔法使いに任命する。※なお、特務魔法使いの命令権者は王である。>


 こんなことが俺のところに書いてあった。

 明らかに元生徒じゃない軍人たちも様子を見に来ていたが、俺の欄を見て、ざわついていた。


「やっぱり別格扱いだな……」「前回の野外訓練の反乱も一人で解決したって話だぞ」「天才すぎて、誰の下にもつけられないのかもな」「王が手元に置いておきたいんじゃないのか」


 様々な意見が出てるようだけど、俺個人としてはずいぶん宙ぶらりんだなというのが最初の感想だった。つまり、今日はどうしたらいいんだろう……?


「おっ、いたいた。我が弟子、ちょっと来てくれ」

 イマージュの声が後ろからかかった。近衛騎士の身分はかなり高い。軍人たちが自然と道を開ける。


「姫様がお呼びだ、特務魔法使い」

「俺の立場がだいたいわかりました」

 姫の下について、独自行動をとれということだろう。



 俺は姫の執務室に通された。そばにはイマージュと瓜二つのタクラジュが控えていた。


「特務魔法使い島津さん、今日からよろしくお願いいたします」

 カコ姫がわざわざ席から立ち上がって礼をするので俺もすぐに頭を下げた。


「いよいよ本職の魔法剣士として働く機会が来ましたね。開業したばっかりなんで、あまりハードじゃない役目をお願いしたいですけど」

「一つ目の仕事はハードになるかどうか、現段階ではわかりませんね」


 少し意味深なことを言ってから、姫はさらに話しはじめた。


「わたくしはこれから、帝国との国境の町キルアネに向かいます。一言で言うと、そこに集まっている兵士たちの士気高揚のためです」

「つまり、戦争がそこではじまるということですね」


 姫は小さくうなずいた。


「そのキルアネに向かうまでのボディガードをイマージュ・タクラジュとともにつとめていただきます」


「なるほど。たしかに特務魔法使いらしい仕事ですね」

 やる気の炎が胸に灯った。

「必ず、ご無事に送り届けます」

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