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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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7 魔法の練習

 その日、小テスト一位だったことをアーシアに話したら、


「時介さん、おめでとうございます! 本当におめでたいです!」


 いつも以上にアーシアに抱きしめられた。

 しかも、その勢いに負けて、俺がベッドに倒れてしまったので、いよいよまずい。これ、押し倒されてますよ! 教え子が先生に押し倒されるって、完璧に事案ですよ!


 しかも、アーシアは確信犯なのか、これが素なのか、ベッドでもそのまま抱きついたままなのだ。これ、ラブコメとかだと「そ、そんな気持ちじゃないんだから!」ってヒロインがすぐに跳ねのくタイミングなんだけど……。


「さてと、初の小テスト一位ですし、何かご褒美をあげましょうかね」


 どきりとした。だって、いまだにベッドの上だぞ。健全な男子高校生として、不健全で桃色なご褒美を期待しちゃうのはやむをえまい。


 しかも、アーシアが精霊だからなのか、体温みたいなものが明らかに人間より高くて、余計にむらむらしてくるというか……。


 まあ、ご褒美はまっとうなものだった。


「じゃじゃ~ん、これです!」


 俺に抱きつくのをやめて、立ち上がったアーシアは俺に指輪を渡してきた。


 青い石がそこに入っている。


「宝石? いや、ただの宝石ってことはないですよね」


「それは魔法使いがつけるアイテムで、マインド・リングと言いますね。その人がやる気だと、魔法の威力に少しプラスになるんですよ。魔法使いは心理面も大事ですから。まあ、お守りみたいなものですよ」


「ちなみにお高いものですか?」


「市販価格は一万五千ゴールドぐらいですかね。ずっと使ってると割れますから、そしたら交換してください」


 ここのお金の単位はだいたい円と同じぐらいの感覚だから、一万五千円か。目が飛び出るほどの値段ではないな。


 なお、ある程度のお金は王国から俺達生徒に支給されていて、それで買い物をすることも可能だ。


 また、中間テストのような区切りにあるテストの結果がよければ、もらえるお金も褒奨として増額されるらしい。王国としては生徒の労働はイコール勉学という扱いなのだ。


 生徒は申請すればお金を借りることもできる。ただし、無利子だし、国の軍人や役人になれば返還義務もなくなる。早速、お金を借りて休養日に羽目を外した奴もいたという。


 その日もプリントをして、そのあとにアーシアに指導してもらうという形での授業をやった。座学としての内容も高度になってきたと思う。


 それでもアーシアの教え方が上手いし、それだけでなくて、覚えやすい暗記法などもどんどん伝授してくれるから、とにかく効率がいい。


 実戦で使えそうな知識や戦法が増えてきている気がするし、一方で魔法使いの歴史なんてものも範囲に入っている。


「この魔法使いの歴史に関する部分は教科書にはまだ出てきません。ですが、プロの魔法使いが魔法使いの歴史を全く知らないということはありえませんから、将来のことを考えて、教養として知っておくべきですね」


「わかった。どんどん学ぶことにするよ」


「時介さんの理解度は本当にかなりものですよ。コツをつかめてきたみたいですね。普通に、才能あると思いますよ」


「ありがとう。先生にそう言ってもらえると、さらにやる気になる」


 もはや、得意科目は魔法の座学ですと言ってもいいぐらいだ。日本の高校にいた時にこんなに楽しく勉強ができたことがあるだろうか。


「そろそろ、魔法を使うことも、本格的にやってみてもいいかもしれませんね」


「そう、それ!」


 今日、教官のヤムサックに言われたことを思い出した。


「いずれ、授業の中で、魔法を使う実習もしっかりやるらしいんです。そっちの指導もしてもらえるんですか?」


「もちろんです!」


 アーシアが胸を叩く。勢いよくその手が跳ね返った。もはやクッションだ。


「優秀な魔法使いになれるようにとことん教え込みますよ! じゃあ、今からやりますか?」


「是非お願いします!」


 ペーパーテストだけできて、本番では何もできませんなんて一番恥ずかしいやつだからな。それだけは避けたい。


 じゃあ、どうするかといえば、練習あるのみだ。

 寮の外には演習場があるから、そこを使うか。室内でやって、炎でも出て、火事になったら大変だからな。


「あっ……でも、夜に寮から出るには許可が面倒くさいな……。夜間に出るの、認めてもらえるかな……」


「じゃあ、私が連れていきますよ」


 アーシアは俺の体をひょいとお姫様抱っこの姿勢で持ち上げると、そのまま窓を開けて、飛び出した。


「えっ! ここ、三階なんだけど!」


 そんなヒゲのおじさんのアクションゲームみたいに俺は丈夫じゃないぞ!


「大丈夫ですよ。私、飛べますから」


 たしかに、ぷかぷかアーシアは空中を浮いていた。


「ほ、ほんとだ……。そりゃ、精霊だから飛ぶぐらいわけないのか……」


「空中浮遊、つまりレヴィテーションは、そんなに難しい魔法ではないですし、基礎が身についたら覚えてみますか?」


「じゃあ、お願いしようかな……」


 実のところ、俺は上の空だった。飛行機ならともかく、こんなふうに空を飛んだことなんて当然ながらなかったからだ。


 灯かりのついている窓を外から眺めるというのは不思議な光景だな。


「今の先生みたいに俺も誰かを乗せて空を飛ぶこともできますか?」


「もしかして、空中飛行を楽しみたい好きな人でもクラスにいるんですか?」


「いや、そういうんじゃなくて、俺、今、すごく感激してるから……こういう気持ちをほかの人にも体験させられたらいいんじゃないかなって……」


 少し照れくさいことを言ってしまったからか、口数が多くなったかな。

 でも、どうせなら魔法も人のために使えたほうがいいよな。


「私、時介さんを教えられていることを光栄に思います」


 しみじみとアーシアは言った。


「えっ? どういうこと?」


「私のほかにも赤ペン精霊はいるんですよ。でも、みんな成果主義に凝り固まっているというか、成績を上げればなんでもいいって発想の精霊が多くて……。私も空しさを感じていたんです。成績以外にも大切なものはあるだろうって……。それを時介さんに逆に教えられた気がします」


「俺も……先生を教えられたとしたら、光栄……かな」


 やっぱり照れくさいな。しかも、お姫様抱っこされてるぐらいだしな。

 これ、俺が抱っこしてるほうだったら、ロマンティックというか、本当に恋に落ちちゃってたかも……。告白してたかも……。


「さて、演習場に着きましたね」


 ゆっくりとアーシアは地上に降り立った。


「今から、魔法を出してみたいと思います。まずは炎です」


 アーシアが右手の人差し指を立てる。

 すると、そこから炎が上がった。


明日は二回更新の予定です!

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