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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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6 小テストクラス一位

 休養日の間も、アーシアは俺を教えに来てくれた。

 というか、俺が頼んだのだ。


「たまには休む日もあってもいいですけどね。しっかり遊ぶのも学生の仕事とも言えますし。めりはりさえついてれば遊んでもいいんですよ」


「今の俺は学校で上位に行くのが楽しみなんです。もっともっと、勉強したい!」


「わかりました。では、私もお付き合いしましょう!」


 アーシアのおかげで、俺は授業のかなり先まで理解を深めることができた。


 そして休養日の次の授業。


 今日は教官ヤムサックが授業でしゃべることもすごくよくわかった。事前にアーシアに習っているからだ。


 クラスの様子を見ると、困惑している奴が少なからずいる。

 授業だけで理解しろと言うには難しい部分も多いからな。とくに暗記が必要なことを授業で聞いた直後に覚えるのはかなりきついだろう。


 でも、俺は問題ない。


「では、今日の小テストを配る。はじめてよしと言うまでは後ろを向けておくこと」


 プリントが行き渡ると、「はじめてよし!」の声。


 プリントをめくる。


 これ、神剣ゼミでやったやつだ!


 俺は次々に空欄を埋めていく。

 まず、知識を問う問題を終わらせる。こんなもの、とっくに頭に叩きこんでいる。


 考えて解く問題も、あっさり答えが出せた。


 よくよく考えたら、授業を始めてまだ一か月ぐらいだ。問題が解けるかどうかは、ほぼすべて知識があるかどうかで決まるんだよな。応用できる次元のことなんてほとんどないだろう。


 なので、その知識を万全にできている俺にはほとんど隙がない。


 すごく手ごたえがいい。


 もしかして、これ、ほぼ満点じゃないか?


 一問だけ、どう解釈してもいいような問題がある。


●問17 氷の魔法を使う敵に対しては、より強力な氷の魔法で攻撃するべきか、それとも炎の魔法で攻撃するべきか。その理由を書け。


 これ、単純に授業でやってないことをテストに入れてるんだと思う。アーシアにいろいろ教えてもらった俺でも、答えられる知識がある気がしない。いわゆる悪問だ。

 ひとまず、こう書いた。


 より強い氷で攻撃するべき。氷に炎が必ずしも効くとは限らないから。


 多分、間違いになりそうだけど、まあ、いいや。


 無事に小テストは終わった。


 いつものように休憩時間の終わりのほうには、もうヤムサックがテスト結果を教室の後ろに貼った。


 さて、何位かな。

 本当に一位になれるんじゃ……。


一位 島津時介 19点


 ほかに19点の奴はいないから、俺がトップだ。


 思わず「よしっ!」と叫びそうになった。過剰に喜んだら、さすがに嫌な目立ち方をしてしまう。そこは日本人らしく、謙虚にしていないと。


「えっ、島津?」

「島津、急成長してない……」

「島津君って、そんなに成績よかったっけ……?」


 クラスメイトから上がる戸惑いの声。


 正直、うれしい。ドヤ顔したいぐらいだ。


 だが、やっぱり俺が一位になったことは一つの事件だったらしい。

 ちょとしたトラブルが起こった。


「おい、お前、カンニングしたんじゃないのか?」


 そんなことを言ってきたのは亀山だった。髪を軽く染めてちょっとチャラいタイプの奴だ。ただし、成績はそんなに悪くない。


 上月先生に教えてもらうのを阻止してきたこともあるし、ちょくちょく俺に絡んでくるな。


「お前、前も中の下あたりだっただろ。なんでこんなに躍進するんだよ」


 後ろには亀山の仲間もいる。俺が偉くなったのが気にいらないんだろう。

 相手をするのは面倒だけど、ここでうかつに引き下がると本当にカンニングされたって認めたような結果になるからな。


 それだけは避けたかった。


 だって、これは赤ペン精霊アーシアと二人で勝ち取ったものだからだ。


 俺が疑われるのなら、まだいい。けど、アーシアの功績を否定されるのは許せなかった。アーシアは本当に純粋な善意で俺をこの成績まで引き上げてくれたんだから。


「違う。これは俺がちゃんと勉強した成果だ。先週も少しずつ成績が上がってただろ。最下位から一位になったわけじゃない。少し前からはじめた自主的な勉強が、ついに復習から予習の側にまで進んだんだよ」


「だからって、こんなに変わるものか? 明らかに不自然じゃね?」

 援軍でも出すみたいに、亀山の仲間たちも声を出してきた。

「だよな。スイッチでも切り替わったみたいだぜ」

「そこまでして上に行きたいのかよ」


 こうなったら、俺も戦うしかないな。


「俺の席、教官からもよく見える席だし、カンニングなんてできないっての。イチャモンつけるなよ。お前は実力で今回は俺に負けたんだ」


 最後にわざと売り言葉をかけたら、亀山たちの顔が赤くなった。激昂したか。


 やっぱりな。俺を陰でバカにしてたのに、それに抜かれたのがちょっとした屈辱だったんだろ。

 リア充系の奴からしたら、友達いなそうでしかも勉強もできないとなると、侮蔑の対象になるからな。バカにしても「でも、あいつのほうが勉強できるじゃん」ってブーメランが跳ね返ってこない。


「なんだよ! 知識だけで魔法の一つも使えねえくせによ!」

 亀山がこっちにやってきた。

 けど、その恐怖よりあいつの言葉のほうがちょっとこたえた。


 たしかに、俺、まだまともに魔法は使えないんだよな。

 それもしっかり学習していかなきゃ。知識は実践できてはじめて意味を持つんだ。


 最悪、一発ぐらい殴られてもいいかなと思った。

 うかつに問題を起こせば、処罰されるのは亀山たちのほうだからだ。殴ったほうが偉いだなんてことには絶対にならない。


「待て、待て!」


 けれど、そこに教官のヤムサックが割って入ってきた。


「亀山、不審に思うのは勝手だが、せめて島津の答案を見てからそう言え。彼の答案にはこれ以降の単元の知識が垣間見えるものもあった。予習しているのは本当だ。詠唱内容のカンニング程度ならできても、習ってない知識まで前借りすることはできんからな」


 見事な正論だ。

 亀山たちは予期しない敵の攻撃に完全に言葉に詰まっている。


「それに、カンニングかどうかは、七週目から始まる本格的な魔法の実習で確かめればいい。本当に覚えていないと何もできないからな。学内成績がいいのに実習での成績があまりにもひどい場合は、カンニングだったと思われても仕方ない」


「じゃあ、島津……そこで勝負しようぜ……」


 亀山がそんなことを提案してきた。

 顔はまだ悔しそうだ。おさまりがつかないからそんなこと言ってるな、こいつ。


「わかった。俺もカンニング扱いされないように、これからもいい成績をとってやるさ」


 いよいよ、魔法の実習に気合を入れないといけなくなった。


「今回の島津からは努力のあとが感じられた。今後もその意気でやってくれ」


 教官に褒められた。素直にうれしい。


「ありがとうございます。得意科目がほしくて努力しました。ちなみにどこを間違えてましたか?」


「問17の氷魔法についての設問だ。あれはできなくてもしょうがない」


 やっぱり、悪問だったんだな。


「ああ、あと、君たち、六週目には魔法の中間テストもあるので、それも忘れないように」


 そうか、そんなのもあるのか。

「げーっ!」なんて悲鳴が聞こえてくる。テストが好きな高校生なんて、そんなにいないからな。


 でも、俺としてはむしろ気合が入った。

 小テストは所詮小テストだ。前日にちょっと予習すれば切り抜けられる。


 中間テストでも一位とってやる。

本日もう一回夜中あたりに更新します。

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