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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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61 トーナメント無双

 二回戦は一回戦と比べると、だいぶマシな試合が多かった。

 初戦は見込みがある奴同士の組み合わせがほぼなかったからだ。二戦目が実質的な一回戦と言ってもいい。


 やっぱり遅いけどな。

 素振り自体は正しいが、攻撃に転じるような練習を充分にしてこれてないせいだ。次の動きへ進むのに時間がかかっている。

 イマージュが「型」を重視していた理由もよくわかる。


「島津ふぇんふぇい、剣も使えるんですね……」

 理奈がまた俺の横にやってきた。今日は昼食は揚げパンが支給されるらしく、それをもらってきて食べている。中には肉と野菜を炒めたものが入っているので、それなりに栄養価は高い。


「食べながらしゃべるのは行儀悪いから、やめよう」

「でも、戦争のための実技でしょ。行儀も何もないよ」

「そうだな。まったくもって正論だ」

 理奈とは正式に教師になる前から教えていたのでタメ口のほうが合っている。

「魔法使いは接近戦が弱点だ。だから、それを解消するために特訓してた。その成果が出せるかどうか今日で試してる」

「これでも先生に追いつこうとしてるんだけど、どんどん離されてくなあ……」

 理奈が「はぁ……」とため息をついた。もう、揚げパン食べ終えたのか。早いな。


「追いつこうとするのは悪くないけど、自分が何のために強くなるための目的はちゃんと持ったほうがいいぞ。モチベーションになる」

 ベランダの姫の顔を見た。

 もし、また姫が命を狙われた時に、守れるような力がほしい。

 多分、本気の殺し合いを一度経験してしまったからだろうな。


「やっぱり、島津君はものすごく大人になってるよ。そりゃ、先生にもなれるよね」

「あんまり、それは実感ないんだけどな。まだまだ発展途上だし」

「決めた。やっぱり先生のことを目指す。それで先生が見えてる景色を自分も見る!」

 なんだか理奈をやる気にさせたらしい。生徒をやる気にさせたんだから、教師としては悪いことじゃないな。


 二回戦は八試合しかない。そう時間をおかずに自分の番になった。

 相手は見たことのない顔だ。今回のトーナメントのために連れてこられた卒業生だろう。

「あなたはもう教師身分を持ってるらしいですが、こっちも負けませんからね!」

「よろしくお願いします」

 相手の気迫はどうでもいい。どんな気持ちで挑まれようと勝てないと意味がないから。

 一戦目のせいで、ギャラリーの視線が濃くなってる気がする。さっきのがマグレだったのか、実力だったのか見たいんだろう。


 審判のスイングはが「はじめ!」と叫ぶ。


 最初はゆっくりと距離を詰めていって――

 一気に前へ跳ぶ!


 これぞ、大股走りの成果だ!


 バアァァァァァン!

 敵の肩を思いきり叩いた。

 そのまま敵は吹き飛んで、尻餅をつく。剣も手から離れている。

 呆然と対戦相手が俺のほうを見上げていた。そこに怯えの色が混じっている。


「ま、負けました……」

 ふるえた声で言われた。

「ありがとうございました」

 俺は丁寧に一礼する。


 うん。突発力は低くない。これならザコなら時間をかけずに倒していける。


 後ろを振り向いたら、やたらと歓声が待っていた。

「マジすごい!」「どこで修行したんですか!」「剣もチートかよ……」

 最後の感想には訂正をさしはさみたいな。

 チートじゃない。ちゃんと、特訓をやったおかげだ。教えてくれる相手はすごく優秀だったかもしれないが。


 みんなに合わせた授業を続けていても成長は遅くなる。

 俺はもっと早く強くなりたい。 


 次の試合で二回戦も終わり、残りは八人に絞られた。ここで休憩時間がはさまれるので、俺も揚げパンを食べる。みんな、適当なところに座りこんで食べている。俺も日陰に入ってパンをかじっていた。


「あの……島津先生……その剣はどこで学ばれたんですか……?」

 教官のスイングに尋ねられた。

「イマージュ師匠と後は独学です」

「イマージュ……ああ、姫の護衛か……。その……このままだと生徒の心をくじいてしまいますので、少し手を抜いていただけませんか……?」

「申し訳ないですが、俺もまともに戦った数はほとんどないんです。全力でやらせてください」


「……わかりました。その代わり、トーナメントのあとに私とやってもらえませんか?」

 生徒のためにも俺を負かしておきたいんだろうな。スイングからしたら、自分より島津のほうが強いと生徒にでも思われたら教えづらくてしょうがないだろうし。

 こっちとしても願ったりかなったりだ。実力者とやれる。

「喜んで。ボコボコにしてください。そのほうがこっちも収穫があります」


 目的ができたので、トーナメントを通過点にできた。

 三戦目は木剣で敵の剣を叩き落して、そのまま肩を叩いた。これで勝負あり。

 このあたりで、「もう優勝は先生だな」という声が漏れていた。俺としても師匠のイマージュに恥をかかせずにすみそうだ。

 準決勝も踏み込んで、相手のやしろを突き倒した。

 その頃にはスイングも驚くことなく、こっちの勝利を宣言してくれていた。


 十五分ほど休憩をはさんで決勝戦になった。

 決勝ともなると、観客の数もこれまでより増えている。

 アーシアは何もしゃべらなかったが、視線を俺のほうに送っているのが見えた。周囲の貴族たちは「どこの家の娘さんだろう」と話をしていて、アーシアのほうが試合より気になるらしい。それもしょうがない。観客席でアーシアほど美しい女性はいなかったから。


 その人に剣を叩き落としたり、剣を奪う練習をしてもらってますと言っても、冗談としか思われないだろう。


 決勝の相手は初戦で理奈を倒した中山だった。

 じゃあ、とむらい合戦といこうか。いや、中山だって自分の生徒だから、えこひいきはダメだ。そういう発想はやめておこう。


 ここまで残ったってことは中山も筋はいいんだろう。あとは早くいい師匠につくかだな。


 最終試合、中山は自分から突っこんできた。

 先手をとられたら、負けだと考えたんだろう。その考えは間違ってない。ただ、まだまだ雑すぎる。

「型」をしっかり見せつけてやるか。

このたび、『チートな飼い猫のおかげで楽々レベルアップ。さらに獣人にして、いちゃらぶします。 』の書籍化が決定いたしました(詳細は活動報告に書きました)。ありがとうございました!

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