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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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50 教師初授業

50話到達しました! ありがとうございます!

 そして、授業再開の日になった。

 俺はヤムサックが入ってくる前の時間はごく普通に生徒として席に座っていた。といっても、だらだらしてるわけではなくて、高砂理奈がいくつも質問に来てたが。


 上月先生ほどじゃないけど、理奈もかなり熱心に魔法を勉強している側の一人だ。深くは聞いていないけど、魔法が使えないとこの異世界では生きていけないと感覚的に気づいているんだと思う。


 この地でニートとして生きるという道はほぼない。それで、靴作りだとか鍛冶だとか特殊な技術がないなら、魔法を覚えこんでいくほうがいい。地頭というんだろうか、そういう部分で賢い生徒は生き抜くための技術を学ぼうとする。


「あっ! そうか! ほんとに島津先生の教え方ってわかりやすい!」

 その理奈の言葉にどきりとした。今は半分冗談みたいなもので言ってるんだろうけど、これがもうすぐ事実になる。自分もその事実に慣れないといけない。


 ヤムサックが入ってきて、談笑していた生徒も前を向く。


「みんな、久しぶりだな。ちゃんと復習をやっていたか? それをやってたかどうかで、差が出るぞ」

 おそらく、大半の奴は遊んでただろうな。自分が戦場に出るだなんて意識はまだ薄いと思う。俺みたいにクーデターに直接巻きこまれたような人間にしかこれはわからないだろう。


「それと、今日から授業の方針を変更したいと思う。島津、前に来い」

 俺はゆっくりと立ち上がって、できるだけ姿勢を保って教壇のほうに出た。自然と視線が俺に集中する。

「今後、魔法の座学と実習については島津に担当してもらう。教官助手から正式な教官になったということだ」


 教室がかなりざわつく。

「え、マジ?」「ついに教官なんだ」「才能ありすぎだろ」そんな声がいくつも響いていくなかで、「お姫様、助けたらしいよ。今は貴族なんだって」とかなり詳しい話までしている生徒がいる。


 おかしいな……。そんなこと言ってまわった記憶なんてないのに……。どんだけ噂って広まるのが早いんだ……。


「みんな、静かに。ちなみに、島津がカコ姫様の側として戦ったのは本当だ。姫からその活躍を賞讃されている。みんなもそのような貢献ができるように努力してくれ」

 ヤムサックは隠したりせずにすべて伝えるスタンスらしい。伝説みたいに尾びれがついていくよりは最初に何があったか言ってもらったほうがいいかな。悪いことをしたわけじゃないんだし。


「それと、貴族というのも間違ってはいない。郊外の村二つを治める子爵という扱いになっている。なので、本来は敬語で話したほうがいいのかもしれないが――島津は嫌だろう?」

「当たり前です。こっちの生活は何も変わってないんだから、どうでもいいですよ……」


 ヤムサックも子爵ぐらいの地位は持ってるのかと思ったけど、教官と爵位は直接は関係ないらしい。


「では、島津、お前からもあいさつしろ」

「ええと……教官になった島津です。といっても、剣技の授業は生徒として参加しますし、先生扱いはしてもらわなくてけっこうです。むしろ、恥ずかしいんで、そのままクラスメイト扱いでお願いします……。よろしく……」

 教壇のほうからクラスメイトの顔を見るのって落ち着かないな。いずれ慣れてくるのかもしれないけど、まだダメだ。


 そのまま、俺は授業に入ることになった。何をやるかは事前にヤムサックから話を受けている。ちゃんと復習してない奴も多いだろうし、ざっと総復習に入る。


「俺の授業方針ですけど、ちょっとだけ難しいぐらいのを目指してやります。その分、そこについていけば報われるようなものになるかなと思ってます。わからないところはどんどん質問してきてください」


 塾っぽい進み方をやりつつ、こまめに振り返る形で。

 ひとまず、これでやってみよう。問題があるならまたそこで試行錯誤すればいい。


「この補助系魔法の詠唱は覚えてますか? はい、長田君」

「ええと……それは……わかりません……すいません」

 だろうな。自信なさそうな顔してたもんな。

「それだと、こっちは?」

 開いた教科書の魔法名を指差して、それをすぐに閉じた。

「すいません、それもわかりません……」


「はっきり言うけど、このあたりの防御に関するものを覚えておかないと、本当にいざという時身を守れずに死にますよ」

 長田の顔が青ざめた。

 こう言えば効き目はあるらしい。


「俺は戦場に出る破目になったから、そこで何が必要かもある程度わかる。生き残るために必要なものを教えていくから、真剣についてきてほしい。もちろんやるかどうか決めるのはそっちですけどね」


 少し長田の目が変わった。やる気になってくれたらしい。


 そのあともとにかく生徒に問題を出して、休む暇がないようにすることにした。授業でやったことをクリアできれば、身を守れるぐらいにはしておきたい。


 授業では好成績だけど、戦場だとすぐに死んだ――というのが一番バカらしくてみじめだ。授業についてこれば、それで一人前に近い状態になるようにしたい。


 俺は教師用に作ったノートに各生徒の課題を書く。

 クラス全体の底上げをやれる範囲でやってみる。アーシアがやっていたようなマンツーマン教育は無理だけど、それぞれの到達具合を確認するぐらいはやれる。それがわかれば、次に何をやらせれば成長できるかも判断ができる。


「じゃあ、神埼さんはこの部分の詠唱は全部覚えてきてください。次、授業でやらせますから」

「え~、それ、しんどくない?」

 神埼千夏はあまり勉強熱心なタイプじゃない。見た目はけっこう遊んでいるように見える。異世界でどう遊ぶのか謎だけど。

 宿題出されたら普通はは嫌だから、そう思うこと自体はしょうがない。これがもし、ただの授業ならその発想でいい。


「あえて、やらないっていうなら止めないけど、戦場で死んでも責任は持てないですよ」

「それって、おおげさじゃない?」

「判断は神崎さんに任せます。俺は課題出す。だけど、強制はしない」


 もっと、幼児なら罰を与えて教育することもできるだろうけど、自分たちはそういう歳じゃないし、強引に教えていって、恨まれるのは嫌だ。なので、伸ばすための課題は出すが無理矢理やらせはしないという落としどころにする。


 初日の授業はだいたい終わった。

 各生徒の進み具合は把握できたと思う。あとは個別にやるべき課題を出していくだけだ。


 アーシアも俺を強制的にやらせたりはまったくしなかった。そこまでやる権利はアーシアにはなかったし、多分俺にもない。


 どうか、みんな自主的にやる気になってくれよ。

50話に到達したので、少しペースを遅くしますが、しっかり書いていきます!

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