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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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41 決着

「姫、ご無事ですか!?」

姫は何が起こったのかわからず少しぼうっとしていたようだったが、すぐに人心地を取り戻して、

「は、はい! 島津さん、ありがとうございます!」

 俺にお礼を言うと同時に水の魔法を詠唱しはじめた。この部屋の火を消すためだ。


 そうだ。すぐに外に戦勝報告をしないと。仮にまだ戦闘が続いていても、それで敵は戦いを諦めてくれる可能性が高い。


 窓を開けて、「謀反人の皇太子を討ち取った!」と叫んだ。

 おおかた、戦闘は終わっていたらしく、敵の生き残りがそれで剣を捨てたりして、投降を認めた。王位継承の内乱はこれで完璧に終わった。


「島津さん、危険にさらして本当に申し訳ありませんでした」

「いえ、あれも姫が味方の身を案じたからですよね。わかります。何人もで踏み込めば皇太子の攻撃魔法で死者が出ていたでしょうから」


 姫は被害を最小限に抑えるために少人数で皇太子を説得しようとした。結果的には戦闘になってしまったが。

 かといって、あそこで腕に覚えがない者だけを送り込んでも、死人が出るうえに最悪、皇太子が帝国に亡命するとか面倒なシナリオになるおそれがあった。


「とにかく、すべて丸く収まってよかったです……つっ!」

 戦闘が終わったせいで、皇太子に斬られた肩の傷を思い出した。

「島津さん! すぐに回復魔法をおかけしますね!」

「ひとまず、外に出て味方と合流しましょう」


 タクラジュ、イマージュや教官達は犠牲者も出さずに敵をすべて打ち倒していた。やっぱり実力のある人たちだ。皇太子も詠唱ができないように口をきつく縛ったうえで、牢に送り込むことになった。


 現在、姫の関係者達が、王城に皇太子の謀反があり、それが鎮圧されたことを告げてまわっている。皇太子がいないまま、皇太子派が攻めてくることはまずありえないだろうから、こちらの完全勝利と言っていいだろう。


「島津、よく姫を守ったな」

「剣技はともかく魔法使いとしてお前は一流の存在だ」

 タクラジュとイマージュも手放しで褒めてくれた。

「ありがとう……どっちがどっちかわからないけど……」

「戦闘中にリボンがとれてしまってな」

「こちらも同様だ」

 もう名札でもつけておいてほしい。


 俺はというと、傷が思ったよりも深いということで、回復に特化した聖職者が来るまで芝生の上に寝かされていた。姫の回復魔法だけでは全快できないほどだったらしい。


 命懸けの戦いをしていたのだし、しばらくぼうっとしていてもいいかなと目を閉じていたら、傷口に温かい光が当たるのを感じた。そっか、聖職者が回復に来てくれたのか。


「傷、私の魔法でも少しはふさがってきましたね。よかった……」

 その声は聞き覚えがあって、俺は体を起こした。


「こ、上月先生!」

 回復魔法を習っているとは言っていたけど、もう使えるようにまでなっていたのか。でも、そんなことを言いだすより先に意識が別のところに行った。上月先生は涙目だった。


「島津君、こんな危ないことをしちゃダメなんだから!」

 先生は俺に抱き着いてきた。先生の涙が俺の傷がないほうの肩を濡らした。

「たしかに島津君の力は戦争のためのものかもしれない。でも、それで生き急がないで! 島津君の命を大切にして!」

「ありがとうございます、先生。それに、俺……誰かを傷つけるためじゃなくて、守るために力を使えましたよ」

「えっ?」


 俺は顔を離して、先生に微笑みかける。

「先生の教育のおかげで、俺は人の役に立てる存在になれましたよ」

 上月先生は少しの間、毒気を抜かれたようになっていたが、それから顔を赤くして、

「もしかしたら、島津君は先生の最高傑作かもしれないね」

 なんてことを言った。


「ちょっと、島津君との距離感がおかしくなってるね……。このままだと元生徒だってことを忘れて、島津君のことをもっと知りたくなっちゃいそう……」

「先生、それって……」


 後ろで、「こほん」という声がした。

 サヨルさんが立っていた。

「あっ、何でしょうか、サヨルさん……」

 俺と先生は無意識のうちに離れる。

「率直に聞くけど、あなたたち、二人は付き合ってるの?」


「いえ、私たちは……元の世界で教師と教え子の関係だっただけです……。生徒に恋愛感情を抱くようなことがあると、公平な教育ができないのでそんなことはないようにつとめて……」

 上月先生の声がやけに硬かった。


「ふうん。それならそれでいいんだけど」

 ぽんぽん、とサヨルさんは俺の頭に手を置いた。

「よく頑張ったね。偉かったよ、島津君」

 こんな時、サヨルさんはやさしい姉みたいな表情で微笑んでくれる。


「はい。役目は果たせたかなと」

「ねえ、島津君、王国が落ち着いたら王都に買い物にでも一緒に行こうか」

「ええ。それぐらいならいつでも」

「ふふふ、約束したからねっ」


 そして、サヨルさんは元気よく俺のところから去っていった。

 あれ、もしかして、今のって一種のデートの約束なのか……?


「島津君、さっきの人って教官助手のサヨル先生よね?」

 今度は上月先生が聞いてきた。

「はい、魔法実習の時とかによくいる人です」

「じゃあ、教師よね。教師が生徒に手を出すのは倫理的によくないと思うんだけど……」

 どうも、先生的にはサヨルさんに思うところがあるらしい……。


 俺の周辺は戦闘が終わって、どちらかというとほっとした空気だが、少し離れたところでは馬が慌ただしく走ったりしていた。

 そりゃ、そうだよな。王様が崩御して、同日に皇太子の反乱が鎮圧されたわけだし……。


 けど、早馬が俺たちのほうにもやってきた。


「速報だ! 実は王がお亡くなりになったというのはデマであるらしい! なんでも、今から離宮から王城にお戻りになるとか!」


 えっ! それはどういうことだ!?

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