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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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18 特進コース

 アーシアにいろんな女性に出会う時期みたいなことを言われたけど、その意味をこんなにすぐに実感するとは思わなかった。


 これ、サヨルさんに完全に好意持たれてるよな……。同僚的な意味のものだとしても、もう一押しで多分付き合ってもらえたりすると思う。


 ダメだ、ダメだ。そんなあわよくばみたいな発想はよくない。それに恋愛に時間をとっている余裕なんてまだまだに俺にはない。もっと成長していかないと。


「あなたは私のライバルだから。負けないからね」

 ライバルという言葉に少しほっとした。それなら恋愛的な部分はない。

「はい、俺ももっともっと強くなりますからね」


 それから俺が部屋に戻ると、アーシアがすぐに出てきた。

「あの、時介さん……いくらなんでもフラグ立てるの早すぎませんか? 私、時介さんがものすごい女たらしになるんじゃないかって不安なんですが……」


「フラグとか言わないでくださいよ。そういうのじゃないですから……」

「う~ん、教育者として教え子が女性を喰いまくるのは困るんですけど……」

「だから、表現に問題がありますって!」


 サヨルさんとの関係は信頼できる同僚、あくまでもそんな感じのものだ。多分……。


「あ~、これで時介さんが恋愛にうつつを抜かして勉強しなくなったらどうしましょうか……」

 冗談半分だと思うけど、アーシアはそんなことを言った。


 結論から言うと、そんなことには全然ならなかった。


 俺はさらに自主的な勉強を加速させていったからだ。


 理由は簡単だ。俺は教官助手だし、同僚にも期待されている。とてもじゃないけど、手を抜くことなんてできない。


 アーシアの俺の頑張りを見て、「これはもっとペースを上げないといけませんね」と問題の量が少し多いプリントに変更したぐらいだ。


 授業のほうもいよいよ俺の無双状態になってきた。

 ヤムサックが「子供のうちに大人が一人混じっているような状態だな」と言ったことがあったが、それに割と近いかもしれない。小学生の中に高校生が混じったぐらいのレベルの差は実際にあると思う。


 授業中に、関係ない魔道書を読む許可までヤムサックから与えられたぐらいだ。

「島津、君に合わせた授業をクラスでやることは不可能だし、復習になるようなものすらまともに教えられん。好きな魔道書を読んで、自分を高めてくれ」

「わかりました。たしかに授業だけだと効率が悪いので、同時に魔道書も読むことにします」


 授業の言葉にも耳を傾けつつ、魔道書にも目を通す。

 まだまだ学ぶところは多い。しっかり学習していかないと。


 そして、その日から、アーシアは授業内容を変更しないかと提案してきた。


「特進コースのほうが時介さんは合っていると思います!」

「特進コース?」


 大学受験でも控えてるみたいな名前だな。


「そうです。特進コースはあまりに優秀すぎて、普通の授業内容では合わない人向けのコースです。伝説と呼ばれるような魔法剣士を養成するためのコースなので、早い段階から上級の魔法使いが使うような技術を学んでいきます」


 俺は息をのんだ。

 正直、やってやろうじゃないかという気持ちでいた。


「それでより強くなれるなら望むところですよ」


 たとえば魔法の数で俺はまだサヨルさんに全然及ばない。

 もっと成長できるところもあるはずだ。俺はさらに上を目指していきたい。


「ですね。もちろん、合わないようなら元のコースに戻しますし、元のコースでも立派な魔法剣士になれるようなカリキュラムになっていますからね」


「はい、なんていうのかな。楽しみながらやろうと思います」


 失うものなんてないんだし、とことんやってやる。


 そして、その日のプリントには冒頭からこんな文言が書いてあった。


<魔法 特進コース その1 無詠唱による魔法発動

無詠唱で魔法を使うことは乱戦や激戦では必須の技能です。技術的な方法が王国ではまだ確立されていないのですが、神剣ゼミではそのメカニズムを徹底分析! 確実に無詠唱が実現できるように教え込みます! もちろん、高難易度な要素も大きいですが赤ペン精霊と一緒に頑張りましょう!>


 そっか、ついに無詠唱にとりかかるんだな。


 書いてある内容もこれまでのものとはかなり違っていた。


<無詠唱に重要なのはイメージですが( )的なイメージよりも、( )的なイメージのほうがいいです。大半の魔法使いは( )的なイメージを作ってしまうんですよね。それだと無詠唱では意識の集中が足りないことになるんです。>


 これ、座学というより、実習を前提にしたことだ。

 おそらく、これ最初の二つの空欄は前が(抽象)で、後者が(具体)だろうな。


 たしかに魔法というと、実体のあるものから離れていると思われがちだ。

 魔法で起こす火や風は存在しているのは明らかだけど、それにしたって形が箱や動物みたいにしっかりあるものではない。


 プリント自体はそんなに難問はなかった。

 これ、すべて実習の心構えが書いてあるだけだ。一つずつ、覚えこむようにその内容を頭に入れていく。


<手や足を特定の動きにさせるといったことも無詠唱には効果的です。また、( )が文字として頭に刻み込まれている、そんなイメージを持っていましょう。>


 これは何だろう……。

 あとでアーシアに教えてもらうか。


 ただ、本質的な部分はわかってきた。


 つまりは詠唱の代わりになる意識の集中方法をいろんなことで補っていくんだ。

 詠唱をすると、自然と意識が一つにまとまっていく。だから、詠唱という方法が魔法使いの間でよく採用されるようになったわけだが、それがいきすぎて魔法を使うこととは詠唱を行うことだと思われてしまっているのだ。


 詠唱とは、つまり、音にすること。

 その最大の弱点は発音するからどうしても物理的な時間がかかってしまうことだ。言葉の数が多ければ多いほど、発音に絶対に時間を食う。

 その要素をしゃべること以外で補えれば大幅な時間短縮になる。


 よし、この基本を忘れないようにしよう。


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