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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第一部 神剣ゼミで魔法使いに編

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17 同僚と接近

「あれ……フレイムの力がファイアより弱いぐらいになった……」


 サユルさんがぽかんといている。

 ということは効き目はちゃんとあったということだ。実戦でも用いることができるだろう。


 数回、サユルさんがフレイムを唱えると、四回目から元の威力に戻った。


「効きはしたけど、あなたのウィークネスは三十秒ほどしか効いてなかった。もうちょっと長く使えるようにしないと足止めにはならないかな」

「そうですね。そこは使い始めたばっかりなんで、練習します」


「というか、もう補助系を使いだしてる時点でおかしいんだけど……。だいたい、半年ぐらい実習やってから取り組むようなことなのに……。ああ、才能がまぶしくてつらい……」

「そんなに沈まないでくださいよ」

「これも、あなたのせいなんだからね……。じゃあ、今度は私の番ね」


 サヨルさんがプロテクション・フロム・マジックを使う。


「我は形のない障壁を作り出す。故に形のないものからの責めに応じることであろう――プロテクション・フロム・マジック!」


 俺の体が光の膜みたいなものに包まれる。


「じゃあ、次は攻撃魔法をぶつけるわね。大丈夫。フレイムを軽く当てるぐらいだから」

「そうですね、言い出しっぺは俺だから甘んじて受けますよ」


 恐怖心はあるが、これはしょうがない。耐えられる範囲のはずだし、盛大に燃えたら水の魔法で消火しよう。


 炎がぶつかってきたが、体が燃えるような熱は感じない。ダメージの次元では呼べないぐらいまで防ぐことができた。


「サヨルさん! これ、相当、いけてますよ!」

「はぁ、よかった……」

 サヨルさんが、ほっとため息をついた。


「実は私、補助系のほうが得意なのよ。なぜか自分に向いてるの」

「たしかにこれは教官助手のクオリティですね。こんなにしっかり防御できるって、かなり魔法の精度が高いはずなんで」


「それって、遠回しにバカにしてない?」

 ジト目でサヨルさんが見つめてきた。

「してませんって!」

 ちょっと、サヨルさんは被害妄想が強いんだよな……。


 そのあとも二人で魔法の練習をして気付くことがあった。


 サヨルさんは補助系魔法にかなり詳しい。俺が聞いたこともないようなものも、いくつも知っていた。それに効き目も相当な高水準ばかりだ。


 俺が言うと手前味噌だけど、やっぱり教官助手になっているだけあるんだ。これは人に教えられるレベルのものだ。


 俺は補助系は入門直後というところだから、ものすごく参考になった。


 二人の魔法使い同士でやるからこそ意味のある練習というのもあるんだな。この時間は確実に俺にもプラスになってる。


 なんだかんだで一時間近くいろんな魔法を試したあと、サヨルさんはごろんと地面の上に寝転がった。


「ふぅ……よくやったわ。こんなに魔法使ってたらくたくたよ」


 いい笑顔でサヨルさんは笑っていた。

 長時間のランニングを終えたあとという感じだ。

 実際、魔法も何度も使っていればかなり体力を消費する。

 俺もかなり疲れがたまっているのを感じていた。


「時介君、あなたも転がったら? よく星が見えるよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて……」


 サヨルさんの横に仰向けになると、本当によく星が視界に入った。

 疲れもなんとなく、大地に吸収されて楽になっていく気がする。


「サヨルさん、本当にたくさん魔法を知ってますね。よくそこまで覚えたなと思いますよ」


 とても実戦で使わないようなものまでわざわざサヨルさんは習得していた。


「私はできるだけ多くの魔法を使いたいの。必然性はそんなにないんだけど、私の趣味なのよ。魔法ってせっかく自由度の高いものなのに、そこで特定のものしか使わないのってなんかもったいないでしょ」

「コレクター精神ってことですかね」

「そんなところかな」


 練習を一緒にしたおかげか、すごく自然にサヨルさんとしゃべれていた。


「あなたも本当に筋がいいわ。これは才能なんでしょうね」

「そうなんですかね……。俺にはわからないんですけど……」

 もし、褒めてもらえる場所があるとするなら、アーシアのほうなんだけど、そこは黙っていよう。


「でも、才能以上にあなた、やる気がある。それが成長してる秘訣ね」

「えっ……」


 俺はちょっと意表をつかれた。

 というのも、アーシア以外にやる気を評価されたことなんてほとんどなかったからだ。


 クラスメイトもみんな俺に才能があるとか恵まれてるとか言ってたけど、意欲のほうはあまり目を向けてはこなかった。


 けど、この人ははっきりとそっちを見抜いている。


「才能だけで突き進むタイプとあなたは違う。もっと堅実だし、慎重だから。そういうことは私も教官助手だからわかるよ。だから、こう言うね――よく頑張ったね、島津君」


「俺,今、無茶苦茶うれしいです……」


 こんなくすぐったくなるような言葉があるだろうか。サヨルさんは俺のタイプを的確に見抜いたうえで、しかもその部分を讃えてくれたのだ。


「あなたの強さの秘密が努力だとしたら、まだまだ伸び続けるね。だって、あなたは努力を怠るような人じゃないんだから」

 そんなこと、言われたら意地でも努力しなくちゃならなくなるな。

 参ったな、この人もすごい教育者だ……。


 それから、ふっと手をつかまれた。

 横に寝転がっているサヨルさんに手を握られている。


「ふふふ、ドキっとした?」

 横を見ると、いたずらっぽい笑みをサヨルさんがいた。


 そして、あらためて気づく。この銀髪の人はものすごい美少女だ。おそらく年齢もほぼ同じぐらいだろう。


「イタズラはやめてくださいよ」

「あなたが立派だからこういうことをしたくなるの。これからも、一緒に頑張りましょう、同僚さん」


 これはまずい。

 アーシアに気持ちを告げようとしたばっかりなのに、今度はサヨルさんに惚れそうになっている……。


 でも、しょうがない部分もある。

 このタイミングで手をつないでくるとか、アリか? 思春期の男子の気持ちをもてあそびすぎだろ。


「はい、一緒に頑張りましょうね、同僚として……」


 サヨルさんの顔を見ていると、照れているのがばれるので星のほうを見上げた。

 実にきれいな星空だった。


 今、リア充が爆発する魔法を唱えたら俺が爆死するな……。

土曜日の更新が宿の設備的にできるか自信ないので、今のうちに更新しておきます! 次回は更新できれば日曜に、もし無理だったら月曜に更新します!

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