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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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116 戦争終結

 俺の一撃がザインを斜めに斬り裂いていた。


 ザインは驚愕の表情のまま、床に倒れた。


 一撃で絶命したらしい。

 俺はその心臓のあたりに剣を突き刺す。実は生きていたなんてことがあったら困るからだ。俺たちは絶対に勝たないといけない。


「ま、まさか……主人が……」

 トリンドもまだ事態を信じられないという顔をしている。


「俺は魔法剣士なんだ。あんたのご主人様は魔法使いとの戦いばかりやってただろ。だから、距離感が甘かった」


 けど、まだ終わりかはわからない。精霊のほうが残っている。


「あんたはやるか?」

 トリンドは首を左右に振った。


「いえ、主人がいなくなった以上、自分がこの世界に干渉する考えはありません。精霊の世界に帰りましょう」


 そう言うと、トリンドは足のほうからゆっくりと消失していった。


 それを見届けてから、俺は剣を杖代わりにして、ぜえぜえ息を吐いた。


「ぎりぎりだったな……。ぎりぎりでも勝ててよかったけど……」

 すぐにそこにアーシアが抱き着いてきた。


「時介さん! やりましたね! きっと時介さんの名前は伝説になりますよ!」

「うん、先生、ありがとうございます」


 けど、少し気になる視線があった。

 サヨルがこっちをじぃっと見ている。


「あの、喜びの抱擁だから大目に見てもいいんだけど、彼女がここにいるんだよね」

「だよな」


 俺はアーシアから離れると、ゆっくりとサヨルのほうに向かった。

 恋人らしく、ぎゅっと強く抱きしめ合った。


「本当に怖かったよ、時介が死んじゃうかと思った……」

「俺もこうして立っていられて、サヨルと抱き合えててうれしい」


 あらためて思った。やっぱり俺の恋人はサヨルなんだ。

 先生と恋人になっちゃダメだな。


 さて、もう一仕事だけしないといけない。


「皇帝を探さないとな」

「そうね。皇帝がいなくなれば、戦争も終わるわ」


 俺たちは城のさらに奥へと進んだ。

 アーシアは役目を果たしたからとまたマナペンに戻った。俺とサヨルの二人の行軍だ。


 まともな抵抗はもうなかった。

 あっさりと、皇帝も見つかった。


「セルティア帝国皇帝、お命ちょうだいいたします」


 命乞いをしていたけど、俺は気にせずに斬った。


「悪いけど、奇襲なもので捕虜にする余裕もないんですよ」

 これで主戦派は一掃されただろうし、きっと和平交渉が進むだろう。



 そのあと、俺たちは皇帝を討ったことを告げてまわった。

 それで抵抗を示していた敵も逃げていったのか、隠者の森教会の別動隊と、姫とイマージュ、タクラジュの組とも合流できた。


「終わったのですね」

「はい、姫、やりました」

「ありがとうございます」


 ぎゅっと、姫に手を握られた。


「これで平和になりますかね?」

「必ず、平和にしてみます。そこから先は姫の仕事です」



 帝国は皇帝が殺されたことで完全に混乱に陥った。

 少なくとも戦争を遂行できる状態ではなく、臨時で皇帝となった皇族が戦争の中止を宣言した。その男は厭戦派の人物だし、このまま和平交渉に入るだろう。


 俺たちは第一巫女たちとも合流した後、小さな別れの宴を開いて、王国への帰途についた。


 途中、帝国の兵士たちが引き上げていくのを目にした。戦争終了の通達が届いたのだろう。


「久しぶりに王国に帰れますね」

「わたくしもほっとしています。でも、退屈な日々になってしまうかもしれません」


 姫が冗談を言って、くすくすと笑った。


 俺たちが王都に戻った二週間後、正式に両国の間で戦争の終結が確認された。

 王国は領土の一部と賠償金を手にすることになった。王国の完全勝利だ。


 王都に戻ってしばらくは、連日連夜、元生徒と教官の同僚から祝福された。


 とくに理奈と上月先生は泣きながら喜んでくれた。

 二人で、俺の部屋に来た時はちょっとびっくりしたけど。


「おめでとう!」「おかえりなさい、島津君!」


 なし崩し的に二人に抱きつかれたけど、これは浮気ということにはならずにノーカンですましてもらえるだろう。

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