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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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107 罠を張れ

 俺は剣を持って、構える。


「島津時介か、ああ、異世界から来た人間か。この世界の人間の名前じゃないですね」

「ご明察だ。まあ、今は骨の髄まで王国の人間だけどな!」


 さて、どうやって戦うか。接近したら、イマージュみたいに動けなくさせられる。

 魔法の効力はわからないが、半径三メートルぐらいは危ないと思っているほうがいい。


 だとしたら、剣はとどめの一撃ぐらいにしか使えない。基本は魔法でやり合う。でも、まさか単純な攻撃魔法で倒せる相手じゃないよな。


 正直なところ、これだけの次元の魔法剣士と戦った経験がほぼないから、どうやるのがいいのかはわからない。わからない以上は待つしかないか……。


 だいたい、この世に実在しない魔法でできた武器なんてものの動きを想像して戦うことなんてできない。やっぱり、まずは防御だな……。


「君の考えていることはよくわかりますよ。ここは守りに徹するしかない――そういうところでしょう。この鎌がどんなふうに使われるか判断ができないから」

「ああ、そうだよ! さすがに命知らずに突っ込むほどバカじゃないんでね」


「それじゃあ、こっちから動かせてもらいましょうか!」

 ふわっと浮き上がるようにジャンプした。いや、本当に浮き上がっている。レヴィテーションぐらい無詠唱で使えるはずだ。


 俺もレヴィテーションをかけておく。そこは敵と同じ条件にしておくほうがいい。


「さあ、受けてみなさい!」


 鎌が大きく振り上げられて、そのまま振り下ろされる。

 やっぱりリーチが桁外れだな。ここは剣で止めるしかな――


「か、かわせ! し、島津!」


 イマージュが叫ぶ。魔法のせいでしゃべりづらくなっていたのがよくわかる苦しそうなしゃべり方だったけど。


 直感的にそれを信じないといけないとわかった。

 体を強引にひねって、かわした。


 すぐにまた敵の攻撃が来ると思ったので、ファイアボールを撃ちまくる。

 これで、敵も一度退く。


 また仕切り直しだ。


「このまま殺せると思ったのに、惜しかったですね」

 試し斬りのようにエルトミはそのあたりの木に向かって鎌を振る。


 最初はすり抜けて、二度目でその木が切断されて倒れていった。


「この鎌は実体に干渉する状態と干渉しない状態をオン・オフできるんですよ」


 血の気が引いた。

 もし剣で受けようとしてたら、その剣はすりぬけたうえで俺を斬るように実体化させられていた。


 けど、そんなことをこいつが言うってことは、この男は自分の勝利をすでに確信してるってことだろう。


 舐められてるな、俺。

 でも、悲しくはない。むしろありがたい。そこに隙が宿る。


 どこかに隙があるはずだ。それを狙え。


 案は一つ浮かんだ。

 けど、リスクが高すぎる。できれば使いたくないけど、使わずに勝てる方法も現状、思いつかないな。まあ、最終手段ってことにしとくか……。


「アンガーチェーンは特定の場所にしか固定できないので、一度解除しておきましょうか。今みたいに邪魔をされるのも嫌ですし、もっと確実に」

 イマージュの体に自由が戻ったらしい。イマージュ自身が驚いていたのでわかった。


 それとほぼ同時に、かくっとイマージュの意識が飛んで倒れる。


「睡眠の無詠唱魔法か」

「そういうことです。このほうが一対一という感じになるでしょう? さあ、このまま行きますよ!」


 敵の攻撃を回避するしかないとわかった時点で、俺の動きも決まってくる。

 動きを高速化する魔法で早めつつ、とにかく回避する。


 その間に、いかに敵に気づかれないように無詠唱ができるかを考える。

 こいつは今日はじめてここに来たわけだ。細かい地形はわからないはず。


「魔法剣士のくせに逃げ続けるんですか!?」


 エルトミはそう挑発しながら、無詠唱で攻撃魔法も連打してくる。ほんとに悪夢みたいな奴だ。でも、これが魔法剣士の一種の理想的な戦い方なんだろう。


 戦況は圧倒的に俺が不利。わかってたことだけど、剣士としての腕前も向こうのほうが上だ。上というか、鎌に重さがないとか言ってたからその時点で反則だ。そんな敵に打ち勝つ方法なんて俺は知らない。


「どうしました? まったく防戦一方のようですが? やはり王国の魔法剣士はこんなものですか?」

 たしかに向こうが快哉を叫びたくなるぐらいに俺のほうが押されていた。


 それでもパニックにならなかったのは、アーシアのもとでいろんなことを学んできたからだと思う。


 必ず、どんな問題にでも答えを導き出す糸口はある。少なくとも俺はそう信じている。これまで学んだ知識を使えば答えには絶対たどりつける。アーシアのプリントはそうだった。


 実戦でもそれは変わらない。


 布石は打った。これは無詠唱が本当に役に立った。

 あとは、上手く相手をおびきよせるかだな。


 必死に攻撃をかわして、俺は距離をおいたところで、少しふらつく。

 後ろに倒れそうになるところを剣を持ってないほうの手で支える。

 だとしても重心は完全に背後にいっている。


 疲労困憊なのは事実だ。どのみちこんなことになっただろう。


「これで終わりですね!」

 エルトミが自分も真上から一気に落下しながら、鎌を振り下ろす。

 間違いなく物を斬れるように実体化させて。

 

「さあ、死になさい!」


 しかし、その鎌が「見えない何か」にはじかれる。


 その直後、「見えない何か」にエルトミが直撃した。


「ぶほっ!」

 濁った声をあげて、エルトミの体が跳ねた。


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