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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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106 帝国の魔法剣士

 俺はイマージュと視線を合わせる。しゃべって、作戦会議をやる時間はないから、それで間に合わせる。


 まず自分が前に出る、とイマージュの目は語っていた。

 詠唱の時間を相手に与えない。それが基本中の基本だ。問題はそんな基本でどうにかできる敵とはとても思えないってこと。


 これまでも危険な戦いは何度もあったけど、敵がこれだけ忌々しいのは初めてだ。

 亀山とかなら、単純な悪意で満ちている。少なくとも何を考えているかがわかる。


 このエルトミって奴は考え自体が読めない。


「『罪には罪、罰には罰……』」

 エルトミはすぐに詠唱をはじめる。聞いたことのない詠唱で何が起きるかよくわからない。


「させるか!」

 イマージュが突っ込んでいくが、その前に体が止まった。

「なんだ……急に体が重……」

 その体には魔法でできたとおぼしき綱みたいなものがからみついている。


「これはアンガーチェーンと言いまして、憤怒の心を持つ者の体を拘束するものです。普通は守る側が使う補助系の魔法なんですが、こんな使い方もあるんですよ。範囲は僕のごく近辺だけなんですが」


 この場で怒りの感情を持ってない人間なんてまずいない。武器を使っての攻撃はこれでほとんど無効化される。


「くそ……。こんな子供だまし、打ち消……」

「これの拘束のいいところは、口も上手く動かなくなることなんです。つまり、まともに詠唱もできない。極端に詠唱が遅くなれば、詠唱は詠唱と認識されずに力を持たないというわけです」


 したり顔でエルトミが言う。

 とことん魔法になれているという様子はその態度からすぐにわかる。


「さあ、すぐに死んでいただきましょうか。『妄念は今、熱を帯びて……』」

 また、エルネスが詠唱を行う。おそらく高熱で敵を焼き殺すような魔法だ!


「イマージュ、待ってろよ!」


 俺は無詠唱でハイドロブラストをイマージュめがけてぶつける。

 その水が蒸発していってイマージュに届く前に消えた。

 やはり、熱波でも起こしたらしい。


「ほう、君は無詠唱を行うのか。いやあ、なつかしい」

 エルトミの体から火球が飛んできた。詠唱のタイミングはなかったはずだぞ。


 ハイドロブラストで防ぐ。

 威力はたいしたことないから、それで十分に防げた。


「僕も無詠唱はできるんですよ。しかし、構造が特殊な魔法はやはり詠唱をやらないと精度が無茶苦茶になってしまう。これでも真面目に魔法を学んできたんですよ」


 帝国のナンバー2という言葉が本当かわからないけど、それぐらいスムーズに魔法を使う奴だとは思う。苦労して戦っているというよりは楽しくやっているって感じだ。


「あんたたちの目的は第一巫女なんじゃないのか?」

 その場にいるのは、ほぼエルトミだけだ。ほかの教会の人間は違う魔法使いたちに止められている。


「そうですが、ここで有力者の数を減らせば、それだけ戦争が有利になりますからね。この戦争、決して多くの兵士を投入しての総力戦にはなりませんよ。魔法使いで、さらに言うと魔法使いの質で決まります。魔法使いの数ですらない」


 自分で言って、エルトミは自分でうなずいた。


「だから、僕がここに出てきたというわけです。ザコで攪乱作戦を何度やっても意味はありませんから。一気に叩き潰させてもらいますよ! あなたたちも王国の有力者でしょう?」


 それはわからなくもない。小学校の時やってたシミュレーションゲームがあったのだけど、強力な武将を前に出して、そいつらで無双していくと、勝てちゃうんだよな。

 あまりにも人間間の能力差がありすぎる場合は個人プレーという戦争になさそうな展開でどうにかできる。


 魔王って概念があるところだとそうなるんだろう。


「さて、あなたのほうから相手をさせていただきましょうか」

 そして、また詠唱をさっと唱えていく。

 こちらも無詠唱でパイロキネシスを撃つがすべてかわされた。

 詠唱をしながらとはいえ、動きはものすごく軽やかだ。どうやら戦闘自体に慣れ切っている。


 エルトミの手に半透明な巨大な鎌が握られる。


 巨大も何も刃の部分だけで三メートルはある。あんなもの、振り回される人間はいないはずだ……。


「大きいからびっくりしてますよね。ですが、魔法で作った武器は重さというものがないから、問題ないんですよ」

 たしかに、重さがないなら理論上はどんな大きさの武器でも扱えるだろう。そんなものを作ることに魔力を使うことになるだろうけど……。


「実は僕は魔法剣士なんです。あなたも剣を持っているし、そうなんじゃないですか?」

 ばれているわけか。


「そうだよ。島津時介、王国の魔法剣士だ!」

 俺も剣を抜いた。


 アーシア、力を貸してくれ。ここは絶対に勝たないといけない。


 爆発音のようなものが遠くでも聞こえる。集落中で争いが起きている。

 ここでこいつらに勝たないと、結局、王国に攻め込まれる。


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