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赤ペン精霊の神剣ゼミでクラス最強の魔法剣士になれました  作者: 森田季節
第二部 神剣ゼミで剣士に編

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105 帝国側の襲撃

 俺たちは魔法の結界を築く作業を行った。

 これで敵の動きをある程度でも止める。


 ラクランテさんの話によると、かなりの数の魔法使いがこのあたりに配置されているという。場合によっては、そのまま帝国から王国側への前線に送り出されるらしい。つまり、前線基地的な意味合いも持っていたようなのだ。


「それだけ大変な戦いになるということですね」

 姫の表情も固くなる。

 けれど、すぐにその顔がやわらかくなった。


「その分、ここで勝てば、戦局全体が王国側に傾く可能性もあります。ここは負けられません」


 俺もうなずく。


「ですね。やってやりましょう」


 集落への入口は限られている。そこを完全にシャットダウンすることは不可能じゃない。第一巫女もすぐに補助系魔法の使用に力を使いはじめた。


 このおばさんは、徹底して補助系が中心の魔法使いらしい。いわゆる、普通の攻撃魔法はまったく使えないという。


 呼子みたいに敵の魔法使いが近づいてきただけですぐに反応がある罠も道沿いにしかけた。これでやれることはやるだけだった。


「どうせならとっとと来てほしいですね」

 姫はそう言った。その意味もわかる。いつ来るかわからないのに待ち続けるのは心臓に悪いし、落ち着かない。


「けど、どうせならずっと来てくれないんだったら、それが一番いいですよ」

 俺の発言に姫は笑った。攻め込むのを諦めてくれれば、隠者の森教会は平和ですむ。かといって、ずっとここに住めるのかというと、微妙なラインだけど。俺だったら、とっととどこかに引越すだろうが、ここにずっと住んでる人からしたら無理なのかな。


 俺たちの予想では一日か二日以内に敵が来るはずだったのだが、なんと五日経っても誰も来なかった。


「マジかよ。こんなに誰も来ないだなんてありうるか……」

 その日は俺とイマージュ、ほかの教会の人間が見張りをやる当番だ。教会の集落に入る出入口が見えるところを見張る。


「諦めたのか? それならそれでいいんだがな」

「師匠、それは甘すぎると思いますよ。ここに関係者がいることは向こうも知ってるでしょうし」

「しかし、それならどうして敵は攻めてこない? うんともすんとも言わないままだぞ」


 ふっと、嫌な予感がして、空を見上げた。


「うん? 上空に何かがあるのか?」

「いえ、空から攻められたら困るなって」


「空も一応の結界は張っているはずだぞ。レヴィテーションを使う奴もいるからな」

「ああ、そうか。空を飛ぶ奴はごく普通なんですね……。じゃあ、抜け道にすらならないのか」


 しかし、その時、土砂崩れのような大きな音がした。

 いったい、何かと振り返ったところには巨大な地割れができていた。


 その地割れから何かが出てくる。


 悪夢かと思った。

 それは魔法使いたちだった。


「ずいぶんと手間がかかりましたが、地下から行くことにしましたよ」


 ヒゲを生やした三十歳ほどの魔法使いが前にいた。おそらく、それが数人の魔法使いの中での代表者だろう。

 いや、数人なんて次元じゃない。さらに魔法使いたちがどんどん地割れからやってくる。


「モグラみたいに地下からやってきたのかよ……」


「別にモグラになったわけじゃないですよ。地面透過の魔法を使いました。かなり特殊な魔法なので時間はかかりましたが」


 甲高い音がする。

 セイクリッド・ベル――敵に反応すると警報を起こす姫の魔法だ。


 地上に出てきたせいでやっと反応があったってことか……。


「さて、とっとと皆殺しにさせてもらいますよ」

 そして、男は素早く詠唱を行いはじめる。くそっ、すぐに動かないと!


 けれど、俺が無詠唱で唱える前に、イマージュが飛び出していた。


 敵はかろうじて剣戟をかわしていたが、血の気が引いた顔をしていた。

「ちっ、はずしたか」


「なんて、無茶苦茶な人ですか……。危ないですねえ……」


 男は距離をとって、仕切りなおした。


「僕の名はエルトミ。帝国の魔法使い序列では第二位のつもりです。ただし第一巫女のように味方につかない者は除きますが」


 とんでもないのが来てしまったな……。


「島津、ここは私と二人でやるぞ。ほかは使い物にならない」

 実際、教会の人間は腰がひけてしまっていた。戦うという意欲自体がないんじゃ、どうしようもないな。


 部下なのか同僚なのか知らないけど、魔法使いたちは地割れから出ていくと、教会に散っていく。第一巫女のほうは個別に守ってもらうしかないな。

 まずは俺たちはこのエルトミって奴を倒すしかない。


 こいつらは絶対に俺たちをそっちにはやらないだろうから。


 冷たい瞳で男はこっちを見て笑っている。これは人を殺すことに慣れている目だ。


「どうやら骨があるのはお二人だけのようですね。久しぶりに全力でやらせてもらいますよ」


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