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天才王女と国王は資金難に苦しみます

「———失礼します」



 執務室のドアを開けた先、昨日まで私が座っていた場所ではお父様が難しい顔をしながら書類を眺めておいででした。

 書類から顔を上げると、挨拶と共に入ってきた私の表情を見てさらに顔を曇らせます。



「エレナか……その様子だと、小国連合との会談も芳しくなかったようだな」


「ええ、完全にしてやられました……すみません、私の計算違いが招いた事態です……」


「いや、エレナのせいではないだろう。私とて、まさか小国連合が混乱に乗じて共和国を乗っ取るなど考えもしなかったのだから。とりあえず、椅子にでも座りなさい」



 お父様に勧められるまま、私は椅子に腰を下ろすとそのまま机に突っ伏します。普段なら行儀が悪いとお父様に窘められてしまうでしょうが、今日ばかりは大目に見てくださるでしょう。


 今しがた小国連合からの使者が王宮へやってきて、体調がすぐれないお父様に代わって私が応接したのです。第一目標は、今回の戦争によってこちらが被った被害に対する清算でした。あれだけ快勝したのだから、本来ならこちらの提示する賠償額や領土の割譲要求はすんなり通るはずなのですが———



「『こちらには貴国に対する賠償責任はなく、これ以上の要求はこちらに対する敵対行動とみなすがよろしいか』と言われてしまいました……会談の冒頭にそう言われてしまっては、打つ手無しですよ……」


「もしかすると、そこまで見越してムッソの古だぬきは共和国を明け渡したのかもしれんな」



 お父様の言葉に、私は驚いて顔を上げます。ムッソ首相のことはよく知りませんが、お父様の苦虫を噛みつぶしたような表情から察するに相当な曲者なのでしょう。



「あのタヌキが簡単にやられるとも思えん。まして相手は小国連合だろう? 奴なら首都に兵力が残っていなかったとしても、互角かそれ以上の結果を出したはずだ。

 そうしなかったということは、ウチからの賠償金逃れのためとしか思えん。おおよそ、首都の割譲などを条件に小国連合を呼んだのだろうな」


「確かに……だから小国連合はこちらと不可侵条約を結ぶことに躍起になっていたのですか。小国連合としては、先の大戦で失った人的資源と領土を得るチャンス、共和国としては領土を売って賠償金の代わりにしたということですね。最悪な気分です……」


「丸損なのはウチだけだからな……まあ、そういうこともある。だが問題は資金繰りだな……

 さっきまで今回の戦争で消費した資金を計算していたが、賠償金を取れないとなると厳しいな。エレナの商会が上手くいっていなければ、いよいよ増税するしかなかったかもしれん」



 そうです。お父様の言う通り、国庫がいよいよ空っぽなのです! どれぐらい空っぽなのかというと、学校を作るちょっと前以上に空っぽなのです。つまり、ほとんど残っていないということです。


 今回の戦争は侵略戦争ではなく、防衛戦争でしたからね。こちらに残ったものと言えば輝かしい戦績と莫大な負債しかありません。



「国王陛下、お嬢様、失礼いたします」



 私とお父様が頭を抱えて打開案を必死に探す中、執務室にミリダとケーネがやってきます。確か二人には、渓谷の復興調査団からの報告書をまとめるように伝えていたはずです。



「二人がここに来たっていうことは、報告書が完成したっていう事よね。まあ、この状況を打開できるようなことは何も書いていないでしょうけど……」


「ところがどっこい、首の皮一枚つながったかもしれんぞ? エレナ、付箋を挟んである頁を見てみろ」



 ケーネの笑みにわずかな期待を抱きつつ、手早く資料をめくっていた私の手が止まります。



「渓谷の両岸で大規模な金鉱を発見……? え、これ確定情報なの?」


「エレナが爆破を指示した坑道があったろ? あそこ、結構昔は金の算出で有名だったらしい。てっきり堀つくしたと思われて廃棄されていたんだが、今回の爆破で鉱脈が表にでてきたらしくてな。俺も不思議に思って鉱物を王都の宝石商に見てもらったが、金が結構含まれてるってさ」


「た、助かった……お父様、すぐにかの地での採掘計画を勧めたいのですけど、よろしいでしょうか?」


「そうだな、頼む」



 両岸で金脈が見つかったということは、それなりに大きな鉱脈なのでしょう。本格的な採掘が始まれば、今回の負債を償還してなおお釣りがくるはずです。


 私は椅子の背もたれにもたれかかり、大きく息を吐くと採掘計画を練り始めるのでした。





 


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