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お嬢様は運動不足を痛感します

「それにしても子供というものは、なぜかくも元気なのでしょうか……」



 絵本の読み聞かせの後に鬼ごっこをして、散々走り回ったところで解放された私は椅子に倒れこむようにして座りました。確かに私も、小さい頃は一日中動き回っていました。

 ですが最近は引きこもりがちなのでそうもいきません。すでに息は上がり、使ってこなかった筋肉が微かに痛みます。



「エレナはもう少し身体を鍛えた方がいいかもな。それっ!」


「そうですね、奥様と運動なさるのが良いと思います」


「エレナちゃんと運動? いいわね!」



 いつも鍛えているお母様とケーネ、ミリダが子供たちの相手をしながらトレーニングを勧めてきます。そりゃ、動けばいいのは分かっていますが運動は苦手なのです……


 唯一、鍛えてなさそうなアルカルトへ助けを求めようとして———



「それで、共和国の国境沿いでは槍を持った兵に追いかけられてな? 死ぬ気で山道を駆け上がったものさ。間一髪で洞窟に逃げ込んだからよかったが、しくじっていたら今頃土に還っていたな!」



 男の子たちに旅の武勇伝を聞かせているところでした。たとえ鍛えていなかったとしても、大陸を旅してきたアルカルトは私よりも体力がありそうですね……残念です。



「はあ……私も少し鍛えようかしら……」


「エレナ様にはエレナ様なりの良いところがあるように思いますけど……あ、お茶のおかわりをお持ちしました」


「ありがとう、シスターさん。でもさすがに体力のなさを痛感したから、やっぱりちょっとぐらいは運動をしようと思うわ。私が武器を持って最前線へ出なきゃいけない事態はなるべく避けるつもりだけど、このままだと日常生活で支障をきたすレベルで体力が落ちそうだからね。お母様、お付き合いいただけますか?」


「もちろん! エレナちゃん向けのメニューを考えておくわね!」



 そう言いながら両脇に女の子を抱え、走り回るお母様。



「レーナ様って私よりも華奢な御方なのに、なぜあんなに動けるのでしょうか……?

 まあ、エレナ様が全然動かない御方なのにその体型を維持なさっていることも不思議で仕方ないのですが…」


「シスターさん、それは娘の私でもわからないわ……それに、私も最近太りつつあるのよ……

 いよいよ本格的に運動しないと、だらしない身体になっちゃうわ」


「シスター様、お嬢様はあのように申しておられますが間違いです。お嬢様の体型は相変わらず黄金比で保たれておりますので」


「ふふ、ミリダさん、分かっておりますよ。同性の私から見ても、エレナ様のプロポーションには羨望を覚えますもの」


 

 思わぬミリダの言葉と、素直なシスターの賞賛に気恥ずかしさを覚えて顔を伏せます。



「学校の授業内容に、選択制で体育の授業を設けようかしら? 学を付けることは良いことだけど、私のようにもやしっ子になるのは良くないことだわ。

 そうだ、その授業を私が担当すればいいのよ! そうすれば私の体力不足も解消できて一石二鳥じゃない?」


「アホなこと言ってんな、エレナは仕事があんだろ。体育の授業に関しては調整してみるが、エレナが担当を持つのはナシだな。おっと、やるじゃねえか!」



 鬼ごっこの鬼役がケーネに触れようとした瞬間、ひらりと身を躱してターンします。そのまま逃げつつ、私の方を向きながら話しかけてきました。



「ケーネのお兄ちゃん強すぎー! 全然捕まらないよ!」


「ケーネ貴方……ちょっと大人げなさすぎない? もうちょっと手加減してあげるとか……」


「こうやって! 話しながら! 追いかけっこをしている時点で手加減じゃないのか⁉」



 そう言われてもね……ケーネやミリダの様子を見ていると、まだまだ余力があるように思えてくるのよね。いや、常人離れした動きをしているのは間違いないのだけど。それを感じさせないのもまた、彼らの技量のなせる業なのでしょう。


 私たちはそれからみっちり三時間、日が暮れるまで子供たちと遊んだのでした。

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