天才王女は、移民問題を解決します②
「皆さん、唐突な呼び掛けに応じてくれてありがたく存じます。今日集まっていただいたのは他でもない、移民問題についてです」
執務室には私、お父様、ケーネにミリダ、そして住民課の課長さんが集まっていました。
集まった面々に書類が行き渡るのを確認しつつ、私は口を開きます。
「昨今、王国は目覚ましい成長を遂げております。それもこれも、国王であらせられるお父様や官吏の皆様の努力あってのことですが、同時に逃れられない問題にも直面してしまいました。
課長さん、ここからは貴女にお任せしていい?」
私が話を振ると、課長さんは一つ頷いて説明を始めました。
「では、まず移住希望者の現状からお伝えいたします。本日現在、住民課に届いている移住希望の総数は497万件。そのうち、およそ半数が帝国からの移住を希望する者たちです。
これに伴い、住民課は移住希望者の特設受け入れ窓口を開設し対応に当たっております。ですが人員不足によって業務は滞っております」
497万人と言えば、大陸の総人口のおよそ2000分の1ですね。それだけ多くの人がウチに殺到しているのだから、住民課の処理能力を超えてしまうのは仕方のないことでしょう。
王国の人口が1億2000万人と少しですから、全員受け入れれば総人口の5%ほどが移民になるという計算ですか。恐ろしいことですね。
「人員不足の方は補填すれば何とかなるでしょう。課長さん、あとで要望書を回してくれると有難いわ。
問題は、それだけの移住希望者をどうするか、ということですね。ケーネ、何かいい案はあるかしら?」
「全部を受け入れるってのは相当厳しい話だよな……ある程度、基準を設けて弾いていくとか?」
ケーネの意見は妥当なところでしょうね。全員の受け入れは無理だとしても、ある程度はこちらとしても労働力として欲しいところです。
そこで一定の基準を設け、こちらの希望数だけに抑えてしまおうという作戦ですね。
「そうね、その案が一般的でしょうね。さっき文献を当たってみたけど、多くの国でその案が行われていたわ。
お父様、どう思われますか?」
「そうだな……ケーネ君の案は一時の解決にはなるだろうが、移民の二世や三世をどうするのか、という問題には対応しづらいという側面もあるように思うな。
だから私は『移民居住地』にて移民を受け入れるという案を挙げたいと思う」
「移民居住地、ですか……具体的には、どのようなものなのでしょうか?」
私の質問に、お父様は部屋から持ってこられた紙を広げながら説明を始めます。
「王国はその地形上、北西部の平野を持て余していることは知っての通りだろう。そこを移民受け入れ地に指定し、彼らに彼らなりのコミュニティーを作らせようと思っているのだ。
そうすれば王国の民にとっても新しい雇用が増えるだろうし、移民たちにとっても住む場所を手に入れることが出来るのではないか?」
「なるほど……では問題は、移民居住地への社会保障と税制をどうするか、というところでしょうか。そもそも彼らに王国の住民権を与えるのか、というところから考えなければいけないかもしれませんが」
「そうだな、私もそのあたりが問題になると思っていたよ。
どうだろう、課長君は何かないかね?」
お父様、それは私以上の無茶振りですね……
でもさすがは課長さん、全く動じることなく顎を撫でながら答えます。
「そうですね……住民権は必要ないでしょう。戸籍は保障しても、住民権まで保障すれば王国の住民から不満が出そうです。
先ほどケーネさんが仰った、基準をそこに適用するのはいかがでしょう?」
「もう少し説明をお願い」
「移民居住地に住む人は、王国法で裁かれることを基準に入れるのです。でなければ、移民居住地域が無法地帯と化しますから。
あと、ある程度は居住地域外への移動を制限するべきでしょうね。はっきり線引きしておかなければ、間違いなく混乱が起こるでしょうから」
課長さんの言葉に、お父様は深く頷きます。私も課長さんの意見には賛成ですし、ケーネやミリダにも異論はないようです。
それでは、細かい部分を詰めていきましょうか。




